15日、リオデジャネイロパラリンピックの車いす陸上男子1500メートル(T51/52)決勝が行われ、佐藤友祈(WORLD-AC)が3分41秒70で2位に入った。佐藤は今大会2個目の銀メダルを獲得した。優勝はレイモンド・マーティン(アメリカ)。3分40秒63の大会新記録で今大会2冠を達成した。その他の日本勢は、上与那原寛和(SMBC日興証券)が4位入賞、野田昭和(鳥取パラ陸上競技協会)が失格に終わった。

 

 佐藤は銀メダル2個と堂々のパラリンピックデビューだ。

 

 昨年の世界選手権トップ3が出場した1500メートルの決勝レース。世界王者マーティンに対し、日本勢は銀メダルの上与那原、銅メダルの佐藤に加え、野田が出場した。

 

 スタートから勢いよく飛び出したのは世界記録保持者のマーティンだった。ロンドンパラリンピック4冠の王者は後続を引き離し、1人抜け出す。大会記録を上回るペースで漕いだ。

 

 それに食らいついていったのが佐藤だ。慎重なスタートを切ったかと思われたが、200メートル付近の最初に迎えるコーナーで加速し、マーティンを追いかける。佐藤は700メートルを通過し、ラスト2周となったところでマーティンに並んだ。

 

 ここで体力を温存するためにマーティンの後ろにつく手もあったが、佐藤は攻めた。そのままの勢いでマーティンをかわし、先頭に躍り出た。佐藤にとってマーティンは、競技をはじめるきっかけとなった憧れの存在。その背中を一気に追い抜くことを選択した。

 

 一方、トップを奪われたマーティンは佐藤の背後につく。こちらは佐藤を風よけに使い、レースを進める。ラスト1周を切ってから勝負――。王者の冷静なレースプランが見て取れた。

 

 ラスト1周の合図となる鐘が鳴らされた。佐藤はすぐには先頭を譲らない。最初のコーナー、バックストレートを過ぎてもトップを守った。だが、最終コーナーを回ったところでマーティンが本領発揮した。外からグングンとスピードを上げて、直線に入るころには佐藤をかわした。

 

 マーティンはそのまま1位でフィニッシュ。パラリンピックレコードの3分40秒63で、この種目連覇を達成した。佐藤はマーティンに遅れること1秒07。2位で400メートルに続き、銀メダルを手にした。世界選手権銀の上与那原はタイの選手に競り負けて4位だった。

 

 だが佐藤はレース後には規則違反により、一度は銀メダルを取り消された。上与那原が3位に繰り上がったが、違反と判定された車いすが野田のものだった。結果、佐藤は2位、上与那原は4位に差し戻された。

 

 無事、表彰台に上がった佐藤は「金を獲ることはできなかったのですが、ベストを尽くしてパーソナルベストでのゴールです。1秒ちょっと遅れてのゴールですが、去年から取り組んでいるスタートだったり、中盤からの加速の強化はかなりできているなと感じるパラリンピック初舞台となりました」と充実感をにじませた。

 

 憧れの背中には届かなかったが、肩を並べる瞬間もあった。王者マーティンへ勇敢に立ち向かった26歳。今後につながる銀メダルとなっただろう。

 

(文/杉浦泰介)