5日、体操男子は種目別決勝が行なわれ、床運動で内村航平(コナミ)が1992年バルセロナ大会の池谷幸雄以来の銀メダルを獲得した。これで内村は団体での銀、個人総合での金と合わせて今大会3個目のメダルとなった。
 28年ぶりの快挙となった個人総合に続いて、2冠を目指した内村だが、昨年の世界選手権の再現とはならなかった。それでも団体での全6種目に加え、個人総合にも出場した疲労の色を見せることもなく、つま先まで伸びきった美しい体操で観客を魅了した。

 いつものように落ち着いた表情で右手を挙げて演技開始の合図を送ると、内村はフッと息を吐き、ロンドン五輪最後の演技に入った。はじめの3回ひねりから前方2分の1ひねりという連続技を決めると、その後も前方の1回ひねりから前方の2回ひねりを決めるなど、一つひとつを丁寧にクリアしていく。

 D難度の抱え込みのトーマス(後方1回半ひねり宙返り転)も成功させると、最後は個人総合決勝同様、最高G難度の大技リ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)を封印し、後方ひねり3回宙返りで締めた内村。両足が床に吸い付いたかのように、全く乱れのない完璧な着地に会場が歓喜の渦に包まれた。そして、内村も今大会一番の笑顔を見せると、力強く両手でガッツポーズをした。

 だが、その内村の前に立ちはだかったのは北京金メダリストの鄒凱(中国)だった。予選をトップで通過した鄒凱はこの日もダイナミックな演技を披露し、15.933点。内村を上回る得点で連覇を達成した。

 頂点に立つことはできなかったが、内村は「最後の最後にやっと満足の演技ができた」と納得した様子で笑顔を見せると、誇らしげに銀メダルを掲げた。これで内村のロンドン五輪は幕を閉じた。4年後、さらに成長したエースの姿がリオで見られることを心待ちにしたい。