伊藤: 54年ぶりとなる東京オリンピック・パラリンピックですが、おそらくオリンピックは大成功を収めることでしょう。日本という国、そして東京という都市は、それだけの力があります。問題はパラリンピックです。どんなパラリンピックの姿を世界に見せることができるか。これこそが、まさに日本、東京の力が試されるのではないでしょうか。

二宮: 私もそう思いますね。パラリンピックの成功が、東京という都市の成熟度、日本という国の豊かさを計るものさしになると思います。そしてもうひとつは、20年がゴールではないということ。その先の方がむしろ重要です。そういう意味でも、障害者や高齢者に優しい街の土台づくりが、この7年間で行なわれていってほしいですね。

 

伊藤: 障害者や高齢者に優しい街づくりが、ひいてはパラリンピックの成功につながっていくんでしょうね。

鈴木: これから54年ぶりに、東京がつくりかえられていくことでしょう。当然、ユニバーサルデザインをコンセプトとした街づくりが行なわれていくことになります。また、この7年間で、障害者も高齢者もすべてのひとたちがひとつになるスポーツコミュニティをつくっていくことも重要だと考えています。50年経ったとき、スポーツコミュニティにかかわっているのが当たり前になっている。そんなムーブメントを起こしていきたいんです。

二宮: それが2回目の東京オリンピック・パラリンピックのレガシーになるわけですね。

 

 国民主導の大会へ


伊藤: 東京オリンピック・パラリンピック決定後、スポーツ庁創設の話が頻繁に出てくるようになりました。いよいよ加速化するのでしょうか?

鈴木: パラリンピックはオリンピックと同じ文部科学省の所管になるということまでは、既に決定しています。次にスポーツ庁の創設をどうするかということが出てくるわけですが、11年に施行された「スポーツ基本法」にも盛り込まれていますから、これから具体的な動きが出てくるでしょうね。

 

二宮: 私はスポーツ庁創設にも賛成ですし、予算も一元化してスポーツ行政を推進していくべきだろう思っています。ただ、ひとつだけ懸念していることがあります。せっかくいい意味で進んでいる地方分権の流れが、スポーツにおいては再び中央集権化しないかということなんです。

鈴木: 確かにそういう懸念はあります。しかし、私は国なのか、地方なのか、ということよりも、市民セクターがもっと前面に出る仕組みこそが必要なのではないかと思っているんです。東京オリンピック・パラリンピックは、国の主導ではなく、国民や都民が主導になってつくる。そういうふうにしていきたいなと考えています。

 

二宮: ロンドンオリンピック・パラリンピックでは、ボランティアを「ゲームズメーカー」と呼んでいました。つまり、自分たちも大会の一翼を担っているんだと。これからは国ではなく、市民がオリンピック・パラリンピックをつくり上げていく時代。東京大会でも、そのことを期待したいですね。

伊藤: 省庁の編成という国としての大きな動きだけでなく、私たちひとり一人が、今日、明日にでもできることを見つけて実行していくことが重要ですね。そうすれば、自分たちがつくっていくんだという意識が広がっていくはずです。

 

(第4回につづく)

 

鈴木寛(すずき・かん)プロフィール>
1964年生まれ。灘高、東大法学部卒業。通産官僚を経て慶應大学助教授。2001年参議院議初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会 幹事などを歴任。超党派スポーツ振興議連幹事長、東京オリンピック・パラリンピック招致議連事務局長。超党派文化芸術振興議員連盟幹事長。日本ユネスコ委員。大阪大学招聘教授、中央大学客員教授、電通大学客員教授。主な著書に『熟議のススメ』(講談社)ほか多数。


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