2日、第93回東京箱根間往復大学駅伝競走は、東京・大手町から神奈川・芦ノ湖までの往路5区間(107.5km)で行われ、青山学院大学が往路3連覇を果たした。青学大は3区でトップに立つと、5区まで先頭のまま5時間33分45秒でゴールテープを切った。2位は33秒差で早稲田大学、3位には2分24秒差で順天堂大学、4位には2分40秒差で東洋大学が入った。

 

 青学はエースが本調子でなくても、底力を発揮した。優勝候補の大本命が、トップで芦ノ湖に到着。往路3連覇を成し遂げた。

 

 1区は1km3分を超えるスローペースで進んだ。序盤から集団を引っ張るのは東洋大の服部弾馬(4年)だ。4.7km過ぎのカーブ付近で一度仕掛けたが、7kmで再び集団に吸収された。15km地点の蒲田まで18人の集団を形成。徐々に距離を重ねるうちに人数は絞られる。

 

 あと1kmの看板を通過すると服部がスパート。「ラストスパート合戦は自分の得意な展開」との言葉通り、東海大の鬼塚翔太(1年)との叩き合いを制して区間賞を獲得した。鶴見中継所をトップで通過したのは3年前の優勝校・東洋大。1秒差で東海大、4秒差で早大、青学大、5秒差で神奈川大学、8秒差で駒澤大学と続いた。

 

 エースが集う“花の2区”は10区間で最長距離の23.1km。学生No.1の呼び声もある青学大の一色恭志(4年)をはじめ、リオデジャネイロ五輪に出場した順大の塩尻和也(2年)、予選会日本人トップで通過した神大の鈴木健吾(3年)らがエントリーされた。留学生ランナーも山梨学院大学のドミニク・ニャイロ(2年)、拓殖大学のワークナー・デレセ(2年)、日本大学のパトリック・ワンブイ(2年)らが加わり、実力者同士がぶつかり合う。

 

 先頭集団は東洋大、東海大、早大、青学大、神大、駒大で形成。昨年も2区を走った一色と鈴木がリードする。鈴木にとっては「何も絡めず終わってしまった」という前回の雪辱を果たしたいところだろう。9.2km過ぎでスパートをかけて、集団を突き放す。身長163cmと小柄だが、大きな走りを披露する。11.4kmで一度は吸収されたが、15km過ぎに給水を摂ると再加速。一色を引き離すと、18km手前で駒大の工藤有生(3年)をも振り切った。

 

 ラスト3kmの上りも顔をゆがませながらも、ペースを落とさなかった。「すごく苦しかったけど、ここの攻略法は根性と思っていた。死ぬ気で走りました」。鈴木は歴代8位となる1時間7分17秒の好記録を叩き出した。留学生ランナーを押し退け、区間賞を手にしてトップで襷を繋いだ。一色も粘りを見せ、2位で襷を渡す。

 

 エースが敗れた青学大は、38秒差の2位で戸塚中継所をスタートした。3区は一色と同学年の秋山雄飛(4年)が挽回する。襷を2位で受け取るとは予想していなかったようだが、「慌てても仕方がない。自分の走りをするだけ」と冷静だった。前回の3区区間賞・秋山は落ち着いた走りで、湘南の海岸線へと向かう。

 

 前を走る神大の越川堅太(1年)をじりじりと追い上げ、13.1kmでかわした。14kmを過ぎると、秋山は越川を完全に突き放した。運営管理車に乗る原晋監督からも鼓舞されて、力を振り絞る。1時間3分3秒で2年連続の区間賞。2位との差を1分22秒作った。昨年と比べて2.4km延びた往路の準エース区間となった4区の森田歩希(2年)に襷を渡した。2位に神大をかわした早大が、3位には神大と続いた。

 

 トップに立った森田は箱根デビュー戦となるが、全日本大学駅伝対校選手権大会MVPだ。森田は区間2位の走りで、早大との7秒差を広げた。2.4km短縮となった5区は、“山の神”と呼ばれた神野大地(現コニカミノルタ)が抜け、不安視されていた区間だ。貞永隆佑(3年)は早大の安井雄一(3年)に差を詰められたものの、トップで往路をフィニッシュした。

 

 青学大の原監督は「実は秋山だけが心配だった。逆にそこでトップに立てて離すことができて良かった」と明かす。不安視していた秋山がMVP級の走りを見せる“うれしい誤算”だった。エースの一色は「(自分の走りを)秋山が帳消しにするどころか、もっといい走りをしてくれた」と感謝した。復路へ向けて、原監督は「復路にも強いランナーを揃えています。ドンと構えて3連覇、3冠にチャレンジしていきたい」と意気込む。

 

 史上6校目の3連覇、史上4校目の3冠。W達成は初の快挙だ。青学大が6区でリードを広げれば、その可能性はグッと近付くだろう。芦ノ湖から箱根の山を下る6区は、2年連続で小野田勇次(3年)をエントリー。補欠には田村和希(3年)、下田裕太(3年)、安藤悠哉(4年)と実力者も控えている。2位・早大との差は33秒とセーフティーリードとは言えないが、大本命であることは揺るぎない。

 

 往路の順位は以下の通り。

(1)青山学院大(2)早稲田大(3)順天堂大(4)東洋大(5)駒澤大(6)神奈川大(7)中央学院大(8)上武大(9)創価大(10)日大(11)帝京大(12)法政大(13)日本体育大(14)拓殖大(15)東海大(16)山梨学院大(17)明治大(18)大東文化大(19)国学院大(※)関東学生連合(20)国士舘大

※OP参加のため順位なし

 

(文/杉浦泰介)