14日、第91回全国高等学校サッカー選手権大会決勝(国立)の京都橘高校―鵬翔高校(宮崎)戦が、降雪による悪天候のため中止となり、19日(国立、12時5分開始予定)に順延されることが発表された。第67回大会(1988年度)において、昭和天皇崩御により準決勝、決勝が2日間順延された前例があるものの、首都圏開催移行後、天候不良による順延は史上初となった。試合を実施せずに両校優勝の可能性もあったが、主催者側は「高校選手権大会は特別な大会である」と判断。両校の登録メンバーで19日に予定されているセンター試験受験者がおらず、かつ国立競技場のスケジュールも空いていたため、順延を決定した。
 両校にとって“恵みの雪”となりそうだ。ともに負傷や体調不良の選手を抱え、万全の状態ではなかった。

 京都橘の米沢一成監督は、順延のメリットに「選手の回復期間になる」ことを挙げた。ここまで5得点のFW小屋松知哉(2年)が左ふくらはぎ、4得点のFW仙頭啓矢(3年)も左ヒザ裏を痛めているからだ。満身創痍の強力2トップに休息を与えられるのは大きい。小屋松は「全国の舞台で点を取れて結果も出ている。ただ、決定力の部分やボールの失い方がまだまだなところがある」と決勝へ向けてさらなる意欲を口にした。

 19日までの期間は京都に帰らず、関東で調整する。主将のDF高林幹(3年)が「自分たちの実力を出せるようにしたい。19日は勝利を目指して頑張りたい」と語れば、指揮官も「今日もいい準備をしてきた。やれることはすべてやったので、19日も同じように臨みたい」と力強く語った。

 一方、鵬翔は一度、宮崎に帰ることを発表した。その間、選手たちは普段の学校生活を送る。選手権という特別な環境から日常に戻るが、松崎博美監督は「大変だとは思うが、(高校生として)当たり前のことをやるだけ」と心配していない。DF矢野大樹主将(3年)も「いつもどおり、気を引き締めて体調管理をしっかりして、普段どおりに生活していけば大丈夫」と不安は感じていなかった。

 鵬翔の選手で特に順延の恩恵を受けそうなのがMF中浜健太(3年)だ。得意の高速ドリブルでチームをけん引してきたが、昨年12月に受けた左ヒザ半月板手術の影響で、ここまでコンディションが完調ではなかった。ただ、日をおうごとに状態はよくなっており、松崎監督は「(順延によって)トレーニングができるのはプラスに働くと思う」と話した。今大会、途中出場のみだった攻撃の要が、試合開始からピッチに立てる可能性が出てきた。

 休息のみならず、戦術の確認や相手を研究する時間もできた。果たして、天が与えた時間を勝利につなげられるのはどちらか。聖地・国立は、静かにその答えを待っている。