第3回WBCは12日、2次ラウンド最終戦で日本代表がオランダ代表に10−6で勝利し、1位通過を決めた。日本は初回に1点を先行されたが、2回、阿部慎之助の1イニング2本塁打などで一挙8点をあげて逆転に成功する。その後は小刻みな投手リレーでオランダの反撃をかわした。日本は試合後、渡米し、準決勝では日本時間18日に2次ラウンド2組(ドミニカ共和国、プエルトリコ、米国、イタリア)の2位チームと対戦する。

◇1組
 不調の長野も2安打5打点(東京ドーム)
オランダ代表       6 = 100000230
日本代表         10 = 08000002×
(オ)●ベルクマン−イセニア−パベレク−ヘイエスタク−バレンティナ
(日)○大隣−沢村−田中−今村−森福−山口−涌井−牧田
本塁打 (オ)シモンズ2号ソロ
      (日)阿部1号ソロ、2号3ラン
 待ちに待った主砲の一発だ。しかも1イニング2発のおまけつき。貧打に苦しんだ侍ジャパンが調子を上げて決戦の地、米国へ乗り込む。

 2回。先頭の阿部はオランダ先発のダビト・ベルグマンに対して追い込まれながらもファウルで粘る。そして9球目のストレートを振りぬくと、打球は大きな弧を描き、ライトスタンドへ。ようやく出たホームランに阿部も気持ちよさそうにダイヤモンドを1周した。

「状態の悪い選手、出番のない選手をメンバーに入れた」と試合前に山本浩二監督が語ったように、この日の二本は阿部をDHに起用し、スタメンマスクは炭谷銀仁朗がかぶった。当たりの出ていなかった長野久義は1番でスタメン復帰。2番には松井稼頭央が入り、7番には角中勝也が入った。

 主砲のソロアーチで1−1のタイスコアに戻した日本は、不調の長野にもタイムリーが飛び出す。阿部のホームランの後、連続四死球と角中のバント処理を相手がもたつき(記録はヒット)、無死満塁。1死後、まず9番・松田宣浩がセンターへの鮮やかなタイムリーを放って勝ち越す。

 なおもすべての塁が埋まった状態で打席に入ったのが長野だ。ここまでの打率は.154。第1打席もファーストフライに倒れ、本来の打撃ができていなかった。だが、この打席では1−1から内に入ってきた変化球を引っぱたく。打球はレフト線を破る走者一掃の二塁打。
「全然貢献できていなかったので、とりあえず打てたことは良かった」
 長いトンネルを抜ける一撃に塁上でホッとした表情をみせた。

 これで5−1。だが、侍ジャパンの猛攻はこれでは終わらない。2死から3番に入った井端弘和が四球を選び、一、三塁で阿部にこの回、2度目のバッターボックスが巡ってくる。2番手ジョナタン・イセニアの変化球にあわせると、打球は再びライトへ舞い上がった。スタンド最前列ギリギリに飛び込む3ラン。「1本目、2本目ともうまく打てた」という4番の2発で2日前のコールド勝ちを再現するかのような大差を奪う。

 その後、追加点が奪えず、終盤にリリーフ陣が四球絡みで失点を重ねた点はピリッとしなかったが、2点差に追い上げられた8回には長野が再び2点タイムリーを放つ。当初、山本監督がトップバッターとして考えていたキーマンが復調の兆しをみせたのは大きい。「調子が良くなかった長野が打ってくれてうれしい」と指揮官も安堵の様子をみせた。

「1次ラウンドのブラジル戦も厳しかった。2次ラウンドの台湾戦も大変厳しい戦いだった。それを乗り越えてチームがひとつになり、打線の活発さ、投手の安定感が出てきた」
 そう日本での戦いを総括した山本監督率いる侍ジャパンは、いよいよ米国へと向かう。アリゾナで調整し、日本時間15日にはサンフランシスコ・ジャイアンツと、同16日はシカゴ・カブスと強化試合を実施する予定だ。

 1位通過で準決勝は初日の18日となり、勝ち進んだ場合は決勝まで中1日の余裕が持てる。19日に対戦するもう1カードの状況を見ながら、決勝に備えられるのはアドバンテージだ。「日本らしい戦いで頂点まで行ければ」と意気込む指揮官の下、3連覇への態勢は整った。

(石田洋之)