四国アイランドリーグPlusは後期シーズンが開幕している。NPB入り、または復帰を目指してプレーする選手たちにとっては野球人生を賭けた熱い夏がやってきた。
 前期、攻守にハツラツとしたプレーをみせたのが、徳島の外野手・大谷真徳だ。打っては左肩脱臼による離脱もありながら、リーグ唯一の3割台(.311)をマーク。守っては広い守備範囲と、強肩からのレーザービームでランナーを先の塁に進めさせない。今季からリーグでは「お金を払っても見に来てよかった」と思わせるようなプレーをみせた選手に毎月、「グラゼニ」賞が贈られているが、大谷は4月、5月と2カ月連続で受賞を果たしている。四国のファンを魅了する24歳に夢実現への意気込みを訊いた。
(写真:兄の尚徳もBCリーグ信濃でプレーしており、兄弟揃っての独立リーガー)
――4月、5月と「グラゼニ」賞に輝きましたが、4月はまず守備での受賞でした。香川戦(4月13日)にライト線への長打コースの当たりを素早く捕って二塁へ送球。バッターランナーをタッチアウトにしました。肩の強さには自信があると?
大谷: 四国に来るまでは、そこまで肩が強いとは思っていなかったんです。でも、徳島に入って、島田(直也)監督や森山(一人)コーチから「オマエの武器は肩だ」と言われて自信がつきました。

――スローイングでランナーを刺すには単なる肩の強さに加えて正確性も求められます。その点で改善された部分もあるのでしょうか。
大谷: 今季がスタートする前、島田監督から「キャッチボールから正確に投げることを意識しよう」とアドバイスを受けました。そのことをしっかり頭に入れて、キャッチボールはもちろん、守備練習にも臨んでいる成果が出たプレーだったと思います。
(写真:入団トライアウトで遠投120メートルを記録した)

――5月の「グラゼニ」賞で対象プレーとなった愛媛戦でのランニングホームラン。ところがホームに滑りこんだ時に左肩を脱臼し、しばらく試合を欠場せざるを得なくなってしまったとか。
大谷: 賞金の18,000円をいただいたんですけど、代償はでかかったです(苦笑)。治療費に消えてしまいましたから……。左中間の当たりで二塁をまわった時点で、まだ外野が追いついていなかったので、ホームまで行けるかなと思い切って三塁を蹴りました。そしたら、意外と速くボールが返ってきて、無我夢中で頭からスライディングしてしまいました。

――昨季は打率.236、1本塁打とバッティングで苦しみました。今季の好調の要因は?
大谷: 昨季途中から指導いただいている長内(孝)コーチのおかげですね。昨秋のみやざきフェニックスリーグではヒットは打てたものの、NPBの大きな壁を感じました。「このままではマズイ」と思いましたね。オフシーズンでどれだけ追い込めるかが勝負になると痛感したので、徳島に残って皿洗いのバイトをしながらバットを振り込みました。誰よりもバットを振った自信がありましたから、結果につながっているのはうれしいです。

――「NPBの大きな壁」とは具体的には?
大谷: フェニックスリーグで横浜DeNAの国吉佑樹と対戦した時、彼のストレートに反応できなかったんです。四国にいるピッチャーと比べると、速さが全く違いました。ストレートに対応できなければ、変化球も打てない。「ごまかしはきかない世界だな」と改めて衝撃を受けました。

――球の速さ、キレのみならず、1軍で活躍するクラスのピッチャーは制球力もある。失投を確実に仕留めないと生き残れません。
大谷: すぐに長内コーチと話をして、バッティングの修正にとりかかりました。それまでの僕はピッチャーが投げてから始動していたのですが、これでは遅い。ピッチャーが投げだす前に、いつでも打てるように入っていくことが大切だとアドバイスをいただいたんです。フェニックスリーグの期間中は結果が出なくても、それを実践することを心がけて打席に入っていました。

――今、長内さんからは、どんなアドバイスをもらっていますか。
大谷: タイミングの取り方をよく教わっています。僕の場合、右方向に引っ張る打球が多かったので、それをショートの頭や左中間にも打てるバッターを目指して取り組んでいます。

――参考にしているバッターは?
大谷: アイランドリーグの先輩でもある角中勝也さん(千葉ロッテ)です。それからメジャーリーガーの青木宣親さん(ブルワーズ)。しっかりボールを引きつけて逆方向に弾き返せるようになれればと思いながら見ています。広角に打てて、塁に出たら足も使える。そういう選手が理想ですね。

――森山コーチは角中選手を高知時代に指導しています。角中選手にバッティングを教わる機会はありましたか。
大谷: 角中さんが昨年のフェニックスリーグに来られていた時に、森山コーチを通じて一緒に食事をさせていただきました。パ・リーグの首位打者と、アイランドリーグの一選手では、ものすごく距離がありますが、その人が四国でプレーしていたことに大きな刺激を受けました。実際にお話もさせていただいて、勉強になる面も多かったですね。
(写真:島田監督からは糸井(オリックス)のバットをもらい、素振りに使っている)

――1988年生まれですから、今のプロ野球を牽引する世代です。田中将大(東北楽天)、前田健太(広島)、坂本勇人(巨人)ら侍ジャパンの代表選手も出てきています。
大谷: 立正大時代は、沢村拓一(中大−巨人)も同じ東都リーグでやっていました。練習試合では早大の斎藤佑樹(現北海道日本ハム)とも対戦しましたね。大学の同期でも南昌輝が千葉ロッテに行きましたが、僕はあまり試合に出られなかったんです。不完全燃焼で4年間を終えてしまったので、独立リーグで気持ち良く野球を締めくくりたいと思って四国に来ました。

――ということは、最初は何が何でもNPBというわけではなかったと?
大谷: はい。同じ年齢ですごいヤツらがいっぱいいたのもあって、NPBは遠い世界だと感じていました。でも、アイランドリーグで実際にNPBの選手と対戦するなかで、「勝負できる」との思いが沸いてきたんです。もちろん同期のすごさは知っていますから、彼らに追いつき、追い越すには人一倍練習をするしかない。今は同じ88年生まれの存在がとてもいい目標になっています。

――夢を叶えるには、ここからが勝負どころです。ドラフト指名に向けて、もっと上を目指すには何が必要でしょう。
大谷: やるべきことはたくさんありますが、ひとつあげるとしたら「野球をもっと知ること」でしょうか。守備、打撃、走塁ともに野球を深く知らないとトップレベルには到達できないと思っています。それは島田監督からも言われています。

――内容はもちろん、成績もさらに打率を上げ、首位打者のタイトルを獲ってアピールしたいですね。
大谷: 打率に加えて、盗塁も少ない(前期終了時5個)ので、もっと積極的に走りたいです。まだ走塁も守りもミスがありますから、それらをなくすことも大事ですね。まずは当たり前のことを当たり前にやる。それがNPBに行くための第一条件と考えています。

(Vol.3では高知・井川博文投手のインタビューを掲載します) 

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(聞き手:石田洋之)