20日から男女サッカーの東アジアカップが開催される。日本男子は海外組ならびに国内組の常連メンバー以外の選手を招集。中国(21日)、オーストラリア(25日)、韓国(28日)と対戦する。3連覇を狙うなでしこジャパン(日本女子代表)は中国(20日)、北朝鮮(25日)、韓国(27日)と戦う。
 ワントップは柿谷が濃厚か

 ザックジャパンの今大会のテーマは新戦力の発掘だ。23人中15人が国際Aマッチ出場経験ゼロ。メンバー発表会見でアルベルト・ザッケローニ監督は次のように大会を位置づけた。
「究極の選択として、“勝ちにこだわって代表クラスのメンバーを見つけられない”もしくは“結果がついてこなくても数人の代表に入ってこれる素材を見つけることができる”のどちらがいいかと問われたならば、後者を選ぶ」

 フレッシュな顔ぶれの中で誰がどのポジションに起用されるかに注目された中で、ポイントはワントップとセンターバックだ。現代表のワントップはFW前田遼一(磐田)やMF本田圭佑(CSKAモスクワ)など、確実にボールを収められる選手が起用されることが多い。CBには守備能力はもちろん、前線に精度の高いパスを供給できるビルドアップ能力も求められている。

 ワントップでの起用が濃厚なのが、FW柿谷曜一朗(C大阪)だ。身長177センチ、体重68キロと恵まれた体格ではないが、卓越した技術に加え、裏へ抜け出す動き出しのうまさで屈強なDF相手にゴールを量産している。さらにドリブルで局面を打開できることも柿谷の魅力だ。力強い選手が必要な場面では抜群の身体能力を誇るFW豊田陽平(鳥栖)をワントップに入れ、柿谷をトップ下で使うケースも出てきそうだ。いずれにしてもワントップは柿谷でスタートすると見る。

 CBには、まずザックジャパンでの経験が長いDF栗原勇蔵(横浜FM)の起用が濃厚だ。そこで注目されるのが、栗原とのコンビをDF千葉和彦(広島)、DF森重真人(F東京)、DF鈴木大輔(柏)の誰が務めるのか。千葉、森重、鈴木はいずれもビルドアップ技術に優れ、縦に速いパスを供給できる。
「鈴木に関してはJリーグの試合ではSBをやっているが、五輪でのパフォーマンスなどからCBの方がいいと考えている。森重は、能力は非常に高いのでCBも含めてディフェンスラインはどこでもできる。特徴として、ビルドアップもできるし、守れるし、空中戦も強いので、ぜひ代表でも高いポテンシャルを生かして、代表争いに食い込んでほしい」

 会見でザッケローニ監督がこう語ったことを踏まえると、まずは森重の抜擢の可能性が高いのではないか。CBにはこれまでDF今野泰幸(G大阪)とDF吉田麻也(サウサンプトン)が固定して使われてきた。ただ、6月のコンフェデレーションズカップでは3試合で9失点と守備が崩壊。指揮官も今後はディフェンス面の整備をより推し進めるはずだ。森重のみならず、今大会でザッケローニ監督の高い評価を得られれば、他の選手も今野と吉田の正CBの間に割って入ることも十分に可能だろう。

 代表経験に乏しい選手が多い中の試合だけに、指揮官も「チームビルディングにかける時間は多くない。選手たちには自分たちができる得意なことをやってほしい」と選手個々の能力確認に重きを置くようだ。勝ち進めば約1カ月の長丁場になるW杯において、選手層の充実は欠かせない。1年後に向けて、現主力を脅かす新星の出現を期待したい。

 なでしこが取り組む新たなベース作り

 大会3連覇を狙うなでしこは、新たなステージへ進むためのベースづくりにも取り組む。なでしこはロンドン五輪以降、今年に入って再スタートを切った。ここまで2勝3敗2分けとFIFAランク3位らしからぬ成績だが、これはいわゆる産みの苦しみといえる。

 というのも、現在のなでしこは、W杯を制し、ロンドン五輪で銀メダルを獲得した戦い方に新たなスタイルを加えようとしているのだ。それは“縦に速い攻撃”である。これまでのなでしこは、チーム全体が連動してパスコースをつくり、細かいつなぎからゴールに向かっていた。だが、再スタート後は前線に早めにロングボールを入れるシーンが多々見受けられるようになった。佐々木則夫監督はその意図をこう説明した。

「日本はボールポゼッションをよくやるが、もっと速いショートカウンターであったり、ボールを動かしながらも時間とスペースができたら『前に』という意識と精度を高めないといけない。相手も効果的な守備をしてくるので、不用意なボールの動かし方をしていると奪われる回数が多くなる」
 
 縦に速い攻撃が機能した場面が、6月の欧州遠征でのドイツ戦であった。前半39分、FW大儀見優季(チェルシー)がボランチのMF宮間あや(岡山湯郷)からのロングボールをPA内中央で相手DFと競り合いながら胸トラップ。シュートフェイントで切り返してから中央にパスを送り、これを大野が右足で蹴り込んだ。宮間は「今までなかった攻撃、セットプレー以外からの得点も増えてきている」と手応えを口にしていた。縦に速い攻撃をモノにできた時、それは「緩急自在」のなでしこスタイルの完成を意味する。

 また、東アジア杯には佐々木監督が「チャンスを与えたいと思った」と期待する長身CBにも注目したい。初選出のDF北原佳奈(新潟)である。身長173センチはGKを除いたフィールドプレーヤーで最長身。欧米とのサイズに苦しんできたなでしこにとっては、今後も世界と戦う上で貴重な戦力だ。なでしこメンバーに求められる技術力も高水準だ。学生時代はボランチでプレー。佐々木監督は「パス、フィードの正確性が高い」と評価した。指揮官は第2戦(対北朝鮮)と第3戦(対韓国)の間が中1日しかないことを受け、ターンオーバー制の採用も示唆している。初選出の北原にも出場のチャンスは十分あり得る。

 東アジア杯はなでしこが初めてタイトルを手にした大会だ。佐々木監督は「勇気をもらった大会」と当時を振り返った。W杯連覇、そしてリオデジャネイロ五輪金メダルに向けて、進化したなでしこスタイルでまずは大会3連覇に挑む。

【日本代表対戦スケジュール】

7月21日 VS 中国(21:00〜、ソウルワールドカップスタジアム)
7月25日 VS オーストラリア(20:00〜、華城競技場)
7月28日 VS 韓国(20:00〜、蚕室総合運動場)

【なでしこジャパン対戦スケジュール】

7月20日 VS 中国女子(16:15〜、ソウルワールドカップスタジアム)
7月25日 VS 北朝鮮女子(17:15〜、華城競技場)
7月27日 VS 韓国女子(20:00〜、蚕室総合運動場)