(写真:18年度の強化方針を説明する麻場強化委員長)

 6日、日本陸上競技連盟は都内で2018年度の強化方針を発表した。麻場一徳強化委員長は目標のひとつであるアジア競技大会(8月、インドネシア・ジャカルタ)を「最も重要視すべき大会。2年後に向けてステップアップしたい」と語った。

 

 今年はオリンピック、世界選手権の開催しない“谷間のシーズン”だが、日本陸連は2年後の東京オリンピックへ向けて重要な1年だととらえている。

 

 18年度の目標を3つ挙げた。

(1)アジア大会での成功

(2)アジアジュニア、U20世界選手権での戦略的な派遣と強化

(3)2019年世界選手権、2020年東京オリンピックにつながる戦略的活動

 

(写真:土江コーチの担当する400mリレーは「実践的なトレーニング」として競技会に種目を組み込むという)

 アジア大会は真夏の東南アジア開催。長距離・マラソンの河野匡ディレクターは「東京を見据えたシミュレーション。暑熱対策を活用するレースになる」と述べた。2年後に向けて、試金石となる大会と言っていい。各種目の強化コーチの多くが「メダル獲得」を目標に掲げた。

 

“お家芸”復活を目指すマラソンは男子の設楽悠太(Honda)が2月の東京マラソンで日本記録を更新。女子は松田瑞生(ダイハツ)、関根花観(日本郵政グループ)が初マラソンで好結果を残した。東京オリンピックの存在、そしてマラソン・グランド・チャンピオンシップ(MGC)の設置が良い影響をもらたしたと言えるだろう。河野ディレクターは「日本のマラソンをワンランク上げることはできたのかな」と手応えを口にする。

 

 現時点でのMGC資格者は19人(男子13人、女子6人)。有資格者を中心に強化を進めていくという。河野ディレクターは「地力をつける、記録をアップするメンバーのサポートを行いたい」と話した。

 

 強化策における新たなキーポイントとなりそうなのが、国際陸上競技連盟(IAAF)が導入するポイントランキング制度だ。記録だけで測るのではなく出場した大会のレベルに応じたポイントを与え、オリンピックや世界選手権など主要大会への出場権を決める。

 

 これまでは参加標準記録を突破した選手の中から、各国・地域の連盟が代表を選んでいた。国内で記録を出すことに専念するよりも国外でのレースに挑む者が増えると予想される。現場も好意的にとらえている。

 

(写真:山崎ディレクターは「(世界大会に)たくさんの人数を出していくため、戦略を間違えないようにしたい」と意気込む)

 トラック&フィールドの山崎一彦ディレクターは現役時代、積極的に海外を転戦していた。「記録は出しているけど世界で勝てていない。陸上は記録を出すだけの競技じゃないんです。トップ選手なら視野を広げた方がいい」

 

 競歩の今村文男オリンピック強化コーチも「記録と大会のグレードはマッチングしていかないといけない。真のチャンピオンを決めることができると思います」と賛成派だ。

 

 17年度は5つの日本記録が生まれた。男子100m、男子ハーフマラソン、男子マラソン、男子円盤投げ、女子十種競技である。中でも男子100mは悲願の9秒台達成。男子マラソンは約16年、男子100mは約19年、男子円盤投げは約38年ぶりの記録更新だ。追い風は吹いている。この勢いに乗って、ジャカルタ、ドーハ、東京へと駆け抜けたい。

 

(文・写真/杉浦泰介)