(写真:オールラウンドな能力を有する日本代表のエース比江島)

 2年目のB.LEAGUE。レギュラーシーズンを終え、チャンピオンシップ(CS)出場クラブが出揃った。全8クラブの中で地区優勝一番乗りを決めたのが中地区のシーホース三河である。今シーズンはリーグの連勝記録を2度塗り替えるなど、48勝12敗。勝率はリーグトップの8割だ。CSで優勝候補に挙げられる三河の強さに迫る――。

 

 的を絞らせない攻撃陣

 

 三河の武器は攻撃力である。1試合平均84.6点はリーグ最多。同39.5リバウンド、同スリーポイント(3P)成功率36.6%もリーグNo.1の数字だ。PG/SG比江島慎、SG/SF金丸晃輔、PF桜木ジェイアールを軸とする攻撃陣はインサイド、アウトサイド両方で勝負できる多彩さを誇る。

 

 これまで三河は桜木を軸にセットオフェンスを得意としていた。5人が敵陣に入って陣形を整えてから攻撃を組み立てるやり方だ。今季からはテンポの速いアーリーオフェンスも採り入れ、攻撃の幅を広げた。

 

(写真:インサイド、アウトサイドとどこからでも攻撃ができるのが強みだ)

 金丸はチームとしての引き出しが増えたことに手応えを感じている。

「どこからでも点が取れます。ウチはハードなディフェンスから、まずは速くボールを運んでいく。それがダメならハーフコートでパスを回します。いろいろオフェンスのパターンがあり、日によって攻め方が違うので、その日その日の強みがあります」

 

 日本代表のエース比江島も続ける。

「ウチの強みは(対戦相手にとって)ひとつに絞れず、一番ディフェンスをしにくいチームということです。誰かが調子良ければ崩れません」

 

 得点源の比江島、金丸、桜木の他にもゴールを奪える選手が揃っている。

 

 タレント集団

 

(写真:ベンチには松井<16>のような能力の高いシューターがおり、層は厚い)

 多彩なオフェンスを可能にしているのが個々の能力の高さである。比江島はゴールへと切り込むドライブ良し、アウトサイドからも得点できる。パスセンスも優れており、司令塔役も担える。1試合平均12.9得点、同4.1アシストでチームを牽引している。

 

 シューターの金丸は昨季フリースロー(FT)成功率、3P成功率でリーグトップ。今季もその安定感は健在だ。FT成功率は93.2%でリーグ1位、3P成功率は39.5%で同3位である。1試合平均15.7得点はリーグ9位でチームトップだ。

 

 身長208cm、体重133kgのビッグマンCアイザック・バッツはリバウンドなどインサイドで貢献。アルバルク東京から移籍してきたSG松井啓十郎は規定には足りていないものの、3P成功率は金丸を上回るハイアベレージを誇る。

 

(写真:攻撃の軸として活躍する桜木<32>。今季のMVP候補の1人だ)

 そして今季MVP級の活躍を見せているのが、チーム最年長41歳の桜木である。チームトップの1試合平均5.3アシストはリーグ4位。同15.5得点(リーグ10位)、同8.4リバウンド(リーグ9位)はチーム2番目の成績だ。

 

 インサイドで縦横無尽に暴れ回り、相手のマークを引きつけてシューターにパスを送る。全60試合中59試合に出場した大ベテランのチームへの貢献度は計り知れない。

 

 真価が試されるCS

 

 今シーズン、三河は9月開幕戦(栃木ブレックス)黒星スタート。2戦目から11月の戦まで16連勝を挙げ、リーグ新記録をつくった。その記録を2月から4月まで17連勝で塗り替えた。連敗は1度だけ。同一チームへの連敗はない。

 

(写真:コートサイドで指示を送る鈴木HCはチームの指揮を執って23年目になる)

 勝ちっぱなしの印象が強いが、鈴木貴美一ヘッドコーチ(HC)は「このチームは負けて強くなる」と口にする。

「正直言って僕らのチームは負けて反省してしっかり練習して強くなる。前半は勢いがあったが12月に入ると個人技ばかりが目立ってチグハグしてきた。後半戦の早々に負けたことで選手たちが個人の能力を上げなければいけないと気付いた。個人がスキルアップに取り組んでいる。勝ち星が増えてきたのは接戦に強くなってきたからだと思います」

 

 選手も負けたことで気付けたことがあったという。桜木は12月2日にリーグ記録(当時)の16連勝を止められたA東京戦を振り返る。

「リセットすることは必要。パーフェクトなシーズンはない。しっかり自分たちのミスから学んで進んでいくだけ。連勝をしていると、リラックスしてきてルーズになることがあった。(A東京に)負けたことで皆がシャキッとした」

 

(写真:巨漢バッツ<5>は恵まれた体躯を生かし、インサイドで無類の強さを誇る)

 金丸は18連勝を阻まれた千葉ジェッツふなばし戦を例に挙げた。千葉得意のアップテンポなバスケットを許し、19点差で敗れた。「負けるということは原因がある。そこをどう修正するか。1人1人が追求している。できなかったことを次にクリアできるのはうれしい」と金丸。翌日は三河が102点を挙げ、東地区1位のチームに快勝した。

 

 昨季のセミファイナルは初代王者に輝いた栃木と対戦した。敵地ブレックスアリーナに乗り込んだ。第1戦を先取されたが、第2戦を取り返した。1勝1敗で並び、第2戦終了から20分後の第3試合(5分ハーフ)がスタート。ここで三河は残り30秒までリードしていた。しかし、黄色く染まったアリーナに後押しされた栃木の逆襲に遭い、試合を引っくり返された。

 

 それだけにB.LEAGUE制覇への想いは強い。地区優勝を決めた直後のインタビューでも鈴木HCとキャプテンのPG狩俣昌也は「通過点」を強調した。CS初戦の相手は栃木に決まった。今度は三河のホーム開催だ。レギュラーシーズンのホーム戦績は25勝5敗。チームカラーの青に染まった“青援”を受け、8割を超える勝率を誇る。昨年CSで悔しい敗戦を味わった三河。その負けから強くなった真価が試される。

 

 現在、BS11では「マイナビ Be a booster! B.LEAGUEウィークリーハイライト」(毎週木曜22時~22時30分)を放送中。5月10日(木)の放送ではレギュラーシーズン最終節のハイライトと個人タイトル獲得選手をお伝えします。是非ご視聴ください。


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