アルゼンチン、クロアチア、アイスランド、ナイジェリア。どの国が予選を突破してもおかしくない。裏を返せばどの国もグループリーグで姿を消す可能性もある。

 

 本命をあげるとすればアルゼンチンだが、南米予選では大苦戦を強いられた。今大会、南米に与えられた枠は4.5。10カ国中上位4位以内に出場権が与えられ、5位はオセアニア地区の1位との大陸間プレーオフに回る。アルゼンチンは予選最終節を迎える時点では6勝7分け4敗、プレーオフ圏外の6位だった。W杯出場は難しいのでは、との声も多かった。

 

 ところが、最終節のエクアドル戦でリオネル・メッシ(バルセロナ)が大活躍。ハットトリックを決め、3対1で勝利した。チームも3位に浮上し、ロシア行きの飛行機に滑り込んだ。

 

 前線には豪華な顔ぶれが揃うがなかなかかみ合わず、結局は“良くも悪くもメッシ”のレトロなサッカーに終始してしまう。セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)、ゴンサロ・イグアイン(ユベントス)、アンヘル・ディ・マリア(パリ・サンジェルマン)らがピッチ上でハーモニーを奏でられる最適なシステムを構築できるかがアルゼンチンの喫緊の課題だ。

 

 対抗にはクロアチアをあげる。ルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)、イバン・ラキティッチ(バルセロナ)が構成する中盤は今大会屈指の組み合わせと言っても過言ではない。そこにセンターフォワードのニコラ・カリニッチ(ミラン)、左サイドのイバン・ペリシッチ(インテル)の高さもあり足元にも長ける2人がゴールを狙う。右サイドからはマリオ・マンジュキッチ(ユベントス)が先発濃厚。かつてはセンターフォワードだったが、サイドからダイアゴナルに走り込むプレーは32歳になった今でも迫力満点だ。

 

 大穴は初出場のアイスランド。堅守速攻を武器にEURO2016でベスト8に入った。これといったタレントはいないものの全員でハードワークし、しぶとい戦いを見せる。センターバックのラグナル・ジグルドソン(ロストフ)を中心に、クロアチア、ウクライナらと同組だったヨーロッパ予選で1試合平均失点を0.7に抑え、首位でW杯の切符を掴んだ。欲を出さず、さぼることなくチームの意思統一ができれば予選突破も見えてくる。

 

◎アルゼンチン

○クロアチア

▲アイスランド

 ナイジェリア

 

(文/大木雄貴)

 

 波乱予感させる激戦区 モドリッチ擁するクロアチアが本命

 

 アルゼンチン、クロアチア、アイスランド、ナイジェリア。今大会最も厳しい組み合わせとなったグループだ。戦力的に見れば、アルゼンチンが他を圧倒しているが、クロアチアを本命に挙げる。

 

 基本フォーメーションは4-2-3-1。ルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)、イバン・ラキティッチ(バルセロナ)らの中盤は他の強豪国と比べても引けをとらない。技術、戦術眼の高いモドリッチが核。得点力もある司令塔は2006年の代表デビュー以降、既に100キャップを超えている。背番号10でキャプテン。運動量豊富で長髪をなびかせ、優雅にボールを操る。彼のプレーだけでも一見の価値アリだ。

 

 両翼は左サイドにイバン・ペリシッチ(インテル)、右サイドにはマリオ・マンジュキッチ(ユベントス)の起用が濃厚。ペリシッチは縦の突破が魅力で、シュート力もある。マンジュキッチはフィジカルを生かしたパワー系だが速さもある。2人に共通するのは185cmを超える長身であることと、守備に労を惜しまぬ献身的なプレー。攻守における貢献度の高い2人がクロアチア上位進出のカギを握る。

 

 欧州予選は2位でプレーオフに回ったものの、10試合4失点と堅守が光った。これはトップで突破したアイスランドよりも少ない失点数だ。GKはダニエル・スバシッチ(モナコ)が予想されるが、今大会最長身201cmのロヴレ・カリニッチ(ヘント)も控えている。DFヴェドラン・チョルルカ(ロコモティフ・モスクワ)、デヤン・ロヴレン(リバプール)らは空中戦に強い。守備陣は世界的ビッグネームこそいないが、実力者が揃う。

 

 初出場の98年フランスW杯3位が最高成績。出場5大会で初戦に負けると、グループリーグ(GL)で敗退するジンクスがある。まずはナイジェリアとの第1節がポイントとなる。

 

 アルゼンチンはリオネル・メッシ(バルセロナ)、ゴンサロ・イグアイン(ユベントス)、セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)、パウロ・ディバラ(ユベントス)と他国が羨むようなタレント揃いのFW陣。今季セリエA得点王のマウロ・イカルディ(インテル)が代表落ちするほど豪華な陣容だ。

 

 これにアンヘル・ディ・マリア(パリ・サンジェルマン)が絡む攻撃陣はツボにハマれば、間違いなく相手にとって脅威なはず。にもかかわらず本命ではなく対抗としたのは、“メッシ依存”から脱け出せていないからである。南米予選は3位で突破したが、最終節で大陸間プレーオフ圏外の6位からジャンプアップしてのギリギリだった。原因は10カ国中7位タイの18試合中19得点と苦しんだ攻撃陣。無得点は7試合もあった。

 

 これだけのタレントを擁しながら、得点力不足に悩まされるとは不思議なものだが、7得点のメッシに続く者がいなかった。元プレミアリーグ得点王のアグエロは南米予選無得点、元セリエA得点王のイグアインは同1点だった。極端に言えば“戦術はメッシ”状態である。メッシ不在の11月の親善試合では同組のナイジェリアに2-4で敗れた。優勝候補に挙げられるが、初戦のアイスランドに一泡吹かされれば、GL敗退もあり得る。

 

 ナイジェリアは今大会台風の目になる予感を漂わせる。ヴィクター・モーゼス(チェルシー)、アレックス・イウォビ(アーセナル)などイングランド育ちのアタッカーが攻撃に厚みを持たせる。“スーパーイーグルス”はロシアの地で大きく羽ばたけるか。EURO2016でベスト8入りの大躍進を遂げたアイスランドだが、W杯でも旋風を巻き起こすには今回もディフェンスでの踏ん張りが必須だろう。

 

◎クロアチア

○アルゼンチン

▲ナイジェリア

 アイスランド

 

(文/杉浦泰介)