(写真:筆者と同じチームでトライアスロンを楽しむ仲間たち)

 17年前の日本はどうだったのか、そして当時の僕は何を考えていたのだろう。

 たしか、野茂英雄さんが大リーグで活躍していた記憶がうっすらとある。その頃に知人の紹介で、このスポーツコミュニケーションズで連載をスタートさせていただいた。それから17年が経過し、今回でなんと200回目。正直なところよくここまで続いたなと思う。これもいつも横で励まし、催促し、なだめすかしてお付き合いいただいた歴代編集担当者のお陰であると思っている。よくぞ見放さずに我慢してくださいました!?

 

 そしてもう一つは、日本のスポーツへの思い。「モノ申したい」、「少しでも良くしたい」という思い、いや欲望に近いものが心の中にあり、ここまで突き動かしてきたのだと思う。

 

 国内においては、サッカーJリーグやプロ野球に代表されるように、観戦型のスポーツは盛んであるし、さらに近年はエンターテインメントとして、地域社会活動としても発展を遂げている。しかし、僕がフィールドワークの中心としてきた、参加型スポーツは15年前まで著しく遅れていたといっても過言ではない。

 

コミュニティもストイックなものが多く、一般的な愛好家が気軽に楽しめるような団体が少なかった。また大会も競技会の延長で「楽しませる」という観点がなかった。日本人のまじめな性格ゆえに、「スポーツはまじめにきっちりとやるものである」という定義から外れることができなかったし、そんな発想もなかったのかもしれない。

 

 だからこそ、僕は海外で楽しそうにランニングやトライアスロンをやる人をみて、そのギャップに驚き、それ以上に嫉妬さえ覚えたのだ。「スポーツとはいろいろな楽しみ方があっていいはず。これを伝えていかないと!」。そんな思いでスポーツ番組でのMCや執筆活動をスタートした時にこの連載も始まった。

 

 当時、マラソン大会のMCを依頼され、スタートの演出を考えて曲をチョイスし進行させた。すると、終了後に関係者から「いや~会場に音楽が流れるっていいねぇ」と感心されたことに驚いた。“えっ、ランニングのイベントってこれまで音楽なしなの!?”。どうやら競技を管轄する担当から、「競技の妨げになるので謹んでほしい」と言われていたようだ。いまでこそ、どの大会でもMCが入り音楽が鳴るが、10数年前まではそんなことさえ許されていなかったのだ。マラソンだけでなく他のスポーツ全般にもそんな空気感が流れていたのだろう。

 

 急変したスポーツを取り巻く環境

 

(写真:建設が進む新国立競技場)

 しかし、時代の要請だろうか。この15年で急激にスポーツを囲む環境が変わっていく。特に2007年から始まった東京マラソンが大きな推進力を生み、スポーツに柔らかく参加する、取り組むという事が一般的になっていった。街中ではカラフルなウェアのランナーが走っていることは普通になったし、モデルやタレントさんなどでも、健康的な魅力が大切な要素になっている。

 

 これは日本国内だけでのうねりではなく、世界的にもスポーツがもたらす健康が、いかに人を幸せにし、社会に寄与するのかが認識されていた証であろう。

 

 もちろん競技スポーツを否定するものではない。競技は競技であるべきだし、そこに人間の可能性の追求や教育的効果という側面もあるだろう。しかし、一般成人、特に30代より上の社会人の「参加」という側面で見ると、人生を豊かにするもの、生活に落とし込まれたスポーツこそが求められているのだ。

 

 いま、参加型スポーツは競技スポーツからライフスタイルスポーツへの広がりが求められている。そして大会は競技大会からライフスタイルのイベントへ。

 いろいろな人が、様々なスタイルで取り組めるスポーツ、楽しめるスポーツをこれからも追求し、提案して行きたい。

 

 2019年ワールドカップラグビー、2020年オリンピック・パラリンピックという大きなイベントを迎える日本。大会を成功させるのはもちろんだが、この経験の後に、スポーツで人生を豊かにできる社会作りこそが重要だろう。

 

 そんなタイミングで、こんな「連載」という機会を与えていただいていることを光栄に思う、

 来月からもボチボチ書いていきますので、お付き合いのほどよろしくお願いします!

 

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール

17shiratoPF スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。17年7月に東京都議会議員に初当選。著書に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)などがある。

>>白戸太朗オフィシャルサイト
>>株式会社アスロニア ホームページ


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