8日、徳島ヴォルティス(リーグ4位)がJ1昇格プレーオフの決勝(東京・国立競技場)で京都サンガF.C.(同3位)を2―0で下し、初のJ1昇格を決めた。徳島は序盤から京都に押し込まれたものの、集中した守りで劣勢の時間帯をしのいだ。すると前半39分、セットプレーからDF千代反田充のゴールで先制に成功。43分にはFW津田知宏の追加点でリードを広げた。後半は前がかりにきた京都にチャンスをつくられたが、GK松井謙弥を中心にゴールを死守した。勝った徳島は四国勢初のJ1クラブとなる。

  主将・津田、J1導く追加点!(国立)
京都サンガF.C. 0−2 徳島ヴォルティス
【得点】
[徳島] 千代反田充(39分)、津田知宏(43分)
 理想的な試合運びだった。大会レギュレーションにより、リーグ戦4位の徳島は勝利しなければ昇格することはできない。その中で粘り強い守りで京都の攻撃に耐え、訪れたチャンスを確実にモノにした。

 序盤から徳島は押し込まれる展開だった。京都にボールを支配され、シュートにまで持ち込まれるかたちをつくられる。7分、MF工藤浩平にPA手前からミドルシュートを打たれたが、これはGKの正面だった。27分には、セットプレーからゴール前で混戦になり、最後はMF秋本倫孝にシュートを打たれた。しかし、これはわずかにゴール右へと外れ、徳島サポーターから安堵のため息が漏れた。

 押され気味の徳島が攻撃のかたちをつくったのは33分だ。津田が左サイドを仕掛け、後方にパス。受けたMF大崎淳矢がPA内左から右足を振り抜いた。これはGKの正面を突いたものの、この試合初めてといっていい攻撃からシュートにまで持ち込んだ。

 そして迎えた39分、徳島に待望の先制点を生まれた。決めたのは千代反田。右サイドのCKにゴール前でピタリと頭で合わせ、ゴール右上に突き刺した。それまで守備の要として、京都の攻撃を防いできた男のゴールで、徳島が貴重なリードを奪った。

 43分には、主将が魅せた。DF藤原広太朗が前線にロングパスを入れ、FW高崎寛之が頭でそらしたボールがGKとDFの間に落ちた。これに津田が快足を飛ばして追いつき、右足アウトサイドでゴール左に蹴り込んだ。リーグ戦から3カ月近くゴールから遠ざかっていた津田。「責任を感じていた」という男は、大一番で昇格をグッと手繰り寄せるゴールを奪った。

 後半は後のない京都の前に、前半以上に守勢を強いられた。だが、ここで徳島の粘り強い守備が真価を発揮する。
 17分、18分と立て続けに打たれたシュートはいずれもGK松井がパンチングでセーブ。 34分には、右サイドからのクロスに松井が飛び出すもクリアできず、GKのいないゴールをFW三平和司に狙われたが、これはカバーしていたDF藤原広太郎がのヘディングでクリアした。

 その後も徳島は京都の猛攻に遭ったが、守りの集中を切らすことなく完封。徳島サポーターの歓喜の声が国立に轟いた。

 2年前は4位となり、昇格にあと一歩届かなかった。津田は「その思いだけでやってきたと言っても過言ではない」と試合後に語り、「(昇格という)目標に向かって一生懸命やってきたので、それが今日、みんなで達成することができて、本当に嬉しい」と喜んだ。

 DFリーダーとしてチームを支えた千代反田は昇格を祝いながらも、しっかりと来季を見据えた。
「J2の4位なわけだから、(J1では)断トツの18位でもおかしくない。ガンバなら戦えるかもしれないけど、過去を見ても2位、3位、4位で上がったチームは苦労している。それを分かったうえで何がやれるかを考えたうえでみんなでやるしかない」

 千代反田の言葉どおり、昨季、リーグ戦6位でプレーオフを制した大分トリニータは、J1でわずか2勝しか挙げられず、再びJ2に降格した。徳島も更なる選手のレベルアップ、補強などでチーム力を向上させなければ、J1のチームと渡り合うことは難しいだろう。昇格はゴールではない、徳島にとってはここからが本当の勝負の始まりである。