11日(現地時間)、スノーボード男子ハーフパイプ決勝が行われ、今大会初の日本人メダリストが誕生した。予選1組トップ通過の平野歩夢(バートン)が93.50点マークし、2位に入り銀メダルを獲得。予選2組を2位でクリアした平岡卓(フッド)が92.25点を叩き出し、3位に入り銅メダルを手にした。スノーボード種目として、日本勢初のメダル。15歳の平野は、日本の冬季五輪史上最年少のメダリストとなった。優勝は94.75点のユーリ・ポドラドチコフ(スイス)。トリノ、バンクーバーを制したショーン・ホワイト(米国)は4位だった。その他の日本勢は青野令、子出藤歩夢の日体大コンビは予選で敗退した。
 待望の今大会日本勢初のメダルは、10代の2人によって、一気に2つももたらされた。男子スノーボートハーフパイプ種目としての初のメダルを平野、平岡が掴み取った。

 予選では平野が1組、平岡が2組に登場。平野は世界トップ選手であることを証明するかのように6メートルを超えるエアを見せ、最後はダブルコーク1080を決めた。一方の平岡は1本目の序盤でバランスを崩しかけ、ヒヤリとした場面もあったが、すぐに立て直し、その後は実力を発揮した。いずれも92.25の高得点をマークし、平野は1組1位、平岡は2組2位で、各組上位3人に許された決勝ストレートインを決めた。

 決勝1回目は、平野が予選同様に高いエアと安定した演技で全体トップの90.75点をマークした。メダルへの期待が高まりはじめて迎えた2回目だったが、ユーリ・ポドラドチコフ(スイス)がキャブダブルコーク1440の大技を決め、94.75点を叩き出し、平野を抜いてトップに躍り出た。

 キャブのダブルコーク1080の着地で尻もちをつき、1回目終了時点で9位の平岡は、一発逆転をかけた2回目で圧巻のパフォーマンスを見せる。バックサイド540にはじまり、フロントサイド900と次々に技を決めていく。そして終盤にはキャブのダブルコーク1080を披露し、着地を決めると、ダブルコーク1080で締めた。大技を連発しつつ、着地もすべてまとめるノーミス。ポドラドチコフの得点には2.50点届かなかったが、92.25点で暫定2位につけた。

 平岡のすぐ後の、平野も攻めの演技で観客を沸かせる。予選、決勝1回目のルーティンにダブルコーク1080を1つ増やした。高いエアの技を披露し、最後のダブルコーク1080も決め、平岡同様にほぼノーミスのパフォーマンス。1回目を上回る93.50点をマークし、平岡を抜いての暫定2位となった。この時点で、ホワイトの演技を残すのみとなり、平野のメダルは確定した。

 あとは平野のメダルの色が銀か、銅か。そして日本人W表彰台へ――。大トリを務めるホワイトは、この種目の第一人者で絶対王者。今大会で五輪3連覇を狙っていた。予選では、すべての技をきれいに決め、95.75という高得点を叩き出し、全体のトップで順当に決勝へとコマを進めたホワイトだったが、決勝1回目では2度着地に失敗するなど、35.00点とふるわなかった。

 逆転での3連覇をかけたホワイトだったが、2回目では大きな失敗はなかったが不安定な着地を見せた。90.25――得点が発表された瞬間、王者の連覇は途絶えた。優勝したポドラドチコフは雪面に倒れこんで喜びを露わにした。銀メダル、銅メダル獲得が決まり、日本人初の快挙となった15歳の平野と18歳の平岡は、ともに微笑む程度のリアクションだった。目指していた表彰台の頂上ではなかったかもしれないが、武器である高いエアでソチの空を美しく舞った2人。日本の冬季五輪の歴史に新たな1ページを刻んだ。スノーボード界のみならず、日本選手団にとっても、勢いをつけるのではないだろうか。

 高梨4位、伊藤7位入賞 伏兵フォクトが初代女王 〜ノルディックスキー女子ジャンプ〜

 ノルディックスキーの女子ジャンプノーマルヒルが行われ、カリーナ・フォクト(ドイツ)が247.4点(103メートル、97.5メートル)で優勝した。金メダル最有力と見られていた高梨沙羅(クラレ)は1回目100メートル、2回目98.5メートルと風に恵まれず、243.0点で4位だった。伊藤有希(土屋ホーム)は7位、山田優梨菜(長野・白馬高)は30位。この種目の第一人者サラ・ヘンドリクソン(米国)は21位に終わった。

 まさかの結末だった――。新種目の女子ジャンプで誰がこの結果を予想しただろうか、金メダル大本命とされていた高梨は4位。表彰台の頂上で微笑んだのは、もうひとりのサラ(・ヘンドリクソン)でもなければ、地元ロシアのイリーナ・アバクモワでもなく、W杯での優勝経験すらない伏兵・フォクトだった。

 昨シーズンのW杯総合女王で今シーズンも13戦10勝と絶好調だった高梨に、ソチのシャンツェの女神は冷たかった。「1本目、2本目と納得のできるジャンプができなかった」という高梨のジャンプ時には、いずれも追い風を受けての悪条件だった。

 それでも1回目では、いつも通りの低い姿勢の助走アプローチから、K点を超える100メートルを飛び、124.1点で3位とメダル圏内の位置につけた。一方、1回目でトップに立ったフォクトには、揚力を生む向かい風が吹いた。記録は高梨を上回る103メートルで126.8点。2位にはコリン・マテル(フランス)が99.5メートルながら、高い飛型点をマークし、125.7点で入った。

 2回目は27番目スタートのダニエラ・イラシュコ・シュトルツ(オーストリア)が104.5メートルを記録し、一気に暫定トップに立った。イラシュコ・シュトルツが出したこの日の最長不倒のジャンプは、向かい風だった。

 しかし、高梨には逆転を後押しするような風は吹いてくれなかった。2回目も低い姿勢から高く飛び出したが、飛距離は伸びなかった。98.5メートル。自然の気まぐれに左右されるジャンプ種目とはいえ、この日のソチのシャンツェは17歳の女王にとことん冷たかった。今シーズン、克服したと思われていた課題のテレマークも良くなかった。2本ともジャッジが下した飛型点は平均17点前後だった。この時点で暫定2位。逆転の金メダルは叶わなかった。さらに残りのマテル、フォクトが試技を終えると、総合ポイントで高梨を上回る。表彰台からも外れる4位となった。

「やることは一緒。変わらず臨んだつもりだったけど、やはりどこか違うなと思いました」と、試合を振り返った高梨。オリンピックには魔物が棲んでいる。数々のアスリートが飲み込まれた大舞台での重圧。高梨はそれを乗り越える覚悟で挑んだが、彼女の“翼”はいつものようには大きく羽ばたかなった。「楽しもうとこの場所に来た。自分の力不足」と唇を噛みしめた。

「オリンピックに戻って来れるように、もっともっとレベルアップしていきたい」。インタビューに気丈に答えつつも、その瞳は赤かった。魔物退治は4年後へ。リベンジの舞台は平昌だ。

 スマイルジャパン、地元ロシアに惜敗 〜女子アイスホッケー〜

 目標に掲げていたメダル獲得のためには、決勝トーナメント進出が至上命題だった。しかし、世界の壁は厚かった。2日前のスウェーデンに続き、ロシアにも惜敗し、その可能性は完全に絶たれた。

 初戦の硬さと、相手の圧力に屈したスウェーデン戦とは打って変わって、日本らしいプレーを序盤から見せた。高い位置からのプレッシングが奏功し、初戦よりもパックをキープする時間もあった。しかし、先制点を奪ったのはロシア。11分39秒、右サイドでパックをもったFWブリナ・タツヤナがロングシュート。チェックにいったDFの股下を抜くショットは、そのままGK藤本那菜(ボルテックス札幌)の股下も通過し、ゴールネットを揺らした。

 負けられない日本も、16分30秒、FW大澤ちほ(三星ダイトーペリグリン)が自陣からスピードを生かし、抜け出すチャンスを作った。シュートはGKに防がれたものの、反撃の狼煙を上げた。すると18分4秒に敵陣深い位置でパックを持ったFW浮田留衣(Daishin)のシュートがGKに当たる。こぼれたパックがゴールラインを越えたあたりで、GKが覆い被さった。レフェリーはホイッスルを吹いてキャッチング扱いとし、試合を切った。ラインを割っていただけに、日本としては不運な判定となった。

 第2ピリオドに入ると、ロシアの猛攻を受ける。このピリオドだけで21本の枠内シュートを浴びるなど、ディフェンディングゾーンでプレーすることを強いられた。一方的な試合展開となったが、ここは守護神藤本がゴールにフタをする。幾度も訪れたピンチで安定したセービングを見せた。

 耐え凌いだ日本に、第3ピリオドに待望のゴールが生まれた。開始早々、右サイドでFW平野由佳(三星ダイトーペリグリン)のパスを受けたDF床亜矢可(SEIBUプリンセスラビッツ)がスティックを一閃。ハーフライナーとなったシュートに相手GKがうまく合わせることができず、ゴールに吸い込まれた。5人のフィールドプレーヤーが集まり、お辞儀するパフォーマンスをソチのリンクで初披露した。

 笑顔の花を咲かせた日本は、ここで一気に勢いに乗る。ロシアもたまらず反則を犯し、日本が1人多いパワープレー(PP)の時間が続く。攻勢を仕掛け、チャンスを作るものの、勝ち越し点は生まれない。すると、1人少ないロシアにカウンターからの反撃を浴びる。9分過ぎのピンチは藤本が1対1となりならがも、ゴールを割らせない。しかし、11分36秒の窮地は凌げなかった。FWアレクサンドル・ヴァルフィナの個人技にやられ、再びロシアにリードを奪われた。

 日本は終了間際にGKを下げる6人攻撃を試るなど粘ったが、五輪初勝利はおあずけとなった。同点に追いついた後、チャンスを作るものの、勝ち越せなかったのが痛かった。13日は、日本と同じく連敗し、決勝トーナメント進出を逃したドイツ。まずは白星を掴んで、順位決定戦に臨みたい。

 初日を1勝1敗スタート 〜カーリング女子〜

 いよいよカーリング女子日本代表の戦いが幕を開けた。スキップ小笠原歩、サード船山弓枝にとって3度目となる五輪。ソルトレイクシティ、トリノでは初戦を落としており、今回は白星スタートで勢いをつけたいところだ。その初戦の相手は、アジアのライバル、世界ランキング10位の韓国。昨年のアジアパシフィック選手権では2敗を喫しているが、同9位の日本は絶対に負けられない。

 第1エンド、後攻の日本は小笠原の巧みなショットで2点を奪ったが、第2エンドは韓国がすかさず2点を奪い、同点とした。第3エンドは相手にスチールを許さなかったものの、日本は1点にとどまる。一方の韓国は第4エンド、着実に2点を奪い、リードした。

 3−4で迎えた第5エンド、サード船山が韓国のNo.1ストーンを弾き、日本のストーンがNo.1となる。さらにスキップ小笠原が、日本のNo.1ストーンと韓国のNo.3のわずかな隙間を通るように、韓国のNo.2ストーンを弾く巧みなショットを決める。これで日本のストーンがNo.1、No.2となり、2点を加えて逆転に成功した。

 だが、ハーフタイムをはさんでの第6エンド、日本はスキップ小笠原のミスショットで韓国が3点を奪うビッグエンドとなり、5−7と再びビハインドを負った。それでも第7エンドで日本が確実に2点を奪い、試合を振り出しに戻した。第8エンド、2点を奪った韓国が第9エンドでは、両チームともにこの試合初めてのスチールで1点を追加。最後の第10エンドのみを残して韓国のリードは3点と広がった。

 迎えた第10エンド、スキップ小笠原の1投を残し、ハウス内には韓国のNo.1とNo.2のストーンが、ストーン1個分ほどの間隔をあけて置かれた状態となる。ハウス内には日本のストーンがさらに2つ残っていた。日本の残された道はただひとつ。韓国の2つのストーンを一度にハウスの外へと弾くダブル・テイク・アウトを成功させ、なおかつ自らのストーンをNo.1とし、残っている2つのストーンと合わせて3点を取るビッグエンドとすることだ。

 小笠原が投じたストーンは、狙い通り韓国のNo.2ストーンへ。そのNo.2ストーンがNo.1ストーンを弾いた。一瞬、ダブル・テイク・アウトが成功したかに思われたが、角度と勢いが足りなかった。韓国のNo.1とNo.2ストーンはハウス内に残り、韓国に2点が入った。結局、日本は7−12で韓国に敗れ、痛い黒星スタートなった。

 約7時間後にはじまったデンマーク(世界ランキング6位)戦では、序盤からゲームを優位に運んだ。第1エンドで1点を先制すると、第2〜4エンドと3連続スチール(有利な後攻のチームが得点すること)し、5点をリードした。

 1点を返された後の第6エンドでは、デンマークが7投目を終えた時点で、デンマークのストーンはハウス内5個残った。大量スチールされかねない大ピンチでスキップの小笠原が、巧みなショットを見せる。絶妙なドローショットでデンマークのストーン内に潜り込み、No.2ストーンとした。デンマークは8投目をガードに置き、コースを狭めて小笠原にプレッシャーをかける。続く8投目の小笠原は、正確なドローショットで着実に1点を手にした。

 第7エンドは2点を奪われ、3点差まで迫られる。それでも第8エンドで2点を奪い、突き放す。このエンド終了時点で、トータルスコアは8−3。ここでデンマークチームがギブアップし、日本の勝利が確定。今大会初白星をあげ、通算成績を1勝1敗のタイとした。日本は12日(現地時間)に地元ロシア(世界ランキング8位)と対戦する。

 小平、メダル獲得ならず 〜スピードスケート女子〜

 スピードスケート女子500メートルは、バンクーバー五輪に続いて2度目の出場となった小平奈緒(相澤病院)は1回目、100メートルを10秒44とまずまずの好タイムで通過し、37秒88で7位に入る。2回目に37秒7を切れば、表彰台が見える位置にいた。その2回目、小平は集中力を高め、最高のスタートを切る。100メートルを10秒37と1回目を上回るタイムで通過した。しかし、タイムは37秒73。2本合わせた合計タイムは75秒61で5位で、表彰台には届かなかった。ともに初出場の辻麻希(開西病院)と住吉都(ローソン)は、それぞれ9位、14位となった。バンクーバーに続いて優勝したイ・サンファ(韓国)は、74秒40の五輪新をマークした。

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