(写真:トラウトのプレーをプレーオフで見れないのは残念としか言いようがない Photo By Gemini Keez)

 2018年のMLBシーズンも前半戦を終了。7月17日にはワシントンDCでオールスターゲームが開催され、まもなく後半戦が始まる。多くのサプライズチーム、ニュースターが現れた上半期の中で、最も輝いたメジャーリーガーは誰だったのか。今回は前半戦の両リーグMVP、サイ・ヤング賞、新人王を独自に制定し、同時に後半戦の行方も占っていきたい。

 

 トラウト、完璧に近いオールラウンダー

 

(数字はすべてオールスター前まで)

 

ア・リーグMVP マイク・トラウト(エンゼルス/打率.310、25本塁打、15盗塁)

ナ・リーグMVP フレディ・フリーマン(ブレーブス/打率.315、16本塁打、61打点)

 

 トラウトは今季も“現役ベストプレーヤー”らしいプレーを続けている。打率、本塁打数が上質なだけでなく、出塁率もリーグ1位、OPSは同2位。大谷翔平のエンゼルス入りで日本での露出も増え、その完璧に近いオールラウンダーぶりがお馴染みになっているはずだ。

 

 オールスターにも今年で7年連続出場だが、トラウト本人は「オールスターよりもプレーオフに出たい」と口にする。すでにワイルドカード争いも引き離され、エンゼルスは今年も上位進出が難しいのが残念なところだ。

 

 ムーキー・ベッツ(レッドソックス/打率.359、23本塁打、51打点)も成績は申し分ないが、ケガのおかげでトラウトより19試合も出場ゲームが少ないのがマイナス材料。ホゼ・ラミレス(インディアンス/打率.302、29本塁打、20盗塁)、JD・マルチネス(レッドソックス/打率.328、29本塁打、80打点)らまで含めて、ハイレベルな争いが続きそうだ。

 

(写真:若手タレントの多いチームを引っ張るフリーマンは不可欠の存在 Photo By Gemini Keez)

 ナ・リーグは本命不在の大混戦だが、ここではリーグ最大級のサプライズチームになったブレーブスを引っ張ってきたフリーマンを買いたい。打撃好調に加え、絶対的チームリーダーとしての価値も高い。オールスターでも4番を任されるなど、真の意味で全国区になりつつある。

 

 その他、攻守ともに能力的には文句のないノーラン・アレナド(ロッキーズ/打率.312、23本塁打、68打点)、こちらもサプライズチームのブリュワーズを守備面でも支えてきたロレンゾ・ケイン(打率.293、8本塁打、18盗塁)らの働きも素晴らしい。

 

 セール、初の大賞なるか

 

ALサイ・ヤング賞 クリス・セール(レッドソックス/10勝4敗、防御率2.23)

NLサイ・ヤング賞 ジェイコブ・デグロム(メッツ/5勝4敗、防御率1.68)

 

 サイ・ヤング賞投票で過去6年連続6位以内に入ってきたセールだが、意外にも受賞経験はまだ一度もない。昨季は2位で涙を飲んだ左腕は、29歳になった今年も支配的な投球を続けてきた。メジャー1位の188奪三振に加え、特に前半戦最後の7戦では防御率0.94と完璧。オールスターでも3年連続でア・リーグの先発を任された。

 

 ジャスティン・バーランダー(アストロズ/9勝5敗、防御率2.29)、ルイス・セベリーノ(ヤンキース/14勝2敗、防御率2.31)、コリー・クルーバー(インディアンス/12勝5敗、防御率2.76)らも優れているが、今季は絶好調レッドソックスのエースとして君臨するセールに初受賞の絶好機が到来しそうだ。

 

(写真:デグロムはトレード期限に多くのコンテンダーから狙われるはずだ Photo By Gemini Keez)

 メッツの打線、ブルペンが弱いがために5勝止まりだが、デグロムの防御率はマックス・シャーザー(ナショナルズ/12勝5敗、防御率2.41)、アーロン・ノラ(フィリーズ/12勝3敗、防御率2.30)といった他の候補たちを大きく上回る。特に4月21日以降の15先発機会で合計自責点14というアンヒッタブルぶりは驚異としか言いようがない。このままいけば、“10勝以下でサイ・ヤング賞獲得”という史上初の珍事となるかもしれない。

 

“二刀流”vs.“帝国”の有望株

 

AL新人王 グレイバー・トーレス(ヤンキース/打率.294、15本塁打、42打点)

NL新人王 ブライアン・アンダーソン(マーリンズ/打率.288、8本塁打、49打点)

 

 華やかな形でメジャーキャリアをスタートさせた“二刀流”の大谷翔平(エンゼルス)がア・リーグ新人王の大本命になるかと思われた。しかし、今季最大のセンセーションになっていた大谷は6月上旬に右肘を痛めて早くも戦線離脱。以降に打者として復帰したものの、インパクトが薄れた感は否めない。

 

(写真:トーレスは下位打線からクラッチヒットを連発している Photo By Gemini Keez)

 代わりに台頭したトーレス、ミゲル・アンドゥハル(ヤンキース/打率.279、12本塁打、39打点)のヤンキース勢が本命に急浮上。特に攻守両面で完成度が高いトーレスの評価は高く、現時点でトップに据えるのが妥当だろう。

 

 大谷は故障がなくとも“二刀流”ゆえに休む日が多かっただけに、新人王争いはいずれにしてもトーレスが逆転していたのではないかという声も少なからずある。もっとも、大谷も注目度は依然として高いだけに、今後に投手としても復帰できた場合、トーレスとのバトルは面白くなる。

 

 ナ・リーグはやや小粒な感は否めない。ここまで最も安定したプレーを続けてきたアンダーソンが押し出されるような形で本命か。ただ、デビュー以降の51試合で才能を誇示してきたファン・ソト(ナショナルズ/打率.301、9本塁打、28打点)が後半戦で逆転する可能性も十分にありそうだ。

 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。
>>公式twitter


◎バックナンバーはこちらから