(写真:大会での最高成績は3年前の準優勝。上位を目指すマドンナ松山)

 高校、大学、社会人の女子硬式野球チームが集う「全日本女子硬式野球選手権大会」が8月4日から9日までの6日間行われる。愛媛県松山市のマドンナスタジアム、坊っちゃんスタジアムを舞台に全国から参加した32チームが日本一を争う。四国初の女子野球チーム・マドンナ松山(愛媛)は1回戦で日本大学国際関係学部(静岡)と対戦する。

 

 

「女子野球の夏は松山」

 今年で14回目を迎える全日本女子硬式野球選手権は第2回から松山で開催されており、地元企業の伊予銀行が大会をスポンサードしてきた。マドンナ松山は第2回大会から毎年出場し、2010年と13年で3位、15年には準優勝を果たした実績を持つ。

 

 上田禎人監督(元西武)が就任して6年目を迎えた。悲願の日本一を目指し、日々汗を流している。だが、今年も厳しい山に入った。初戦の日大国際関係学部は日本代表(マドンナジャパン)の候補になった選手を擁し、2回戦で対戦する可能性があるハナマウイ(埼玉)は前回のベスト4で、その対戦相手の福知山成美高校(京都)も強豪だ。準決勝まで進めれば昨年優勝のアサヒトラスト(東京)、同ベスト4の平成国際大学(埼玉)などと当たる。

 

「基本的にはウチが格下。ただどこが勝つかわからない状況です。どこにも良い選手がいる。力を付けている子がどんどん増えてきています。昨年上位のチームが2、3回戦で負ける可能性もあると思います」

 上田監督によれば、女子野球は群雄割拠の様相を呈しているという。ここ5年の優勝チームを見ても、13年の履正社RECTOVENUS(大阪)、14年の尚美学園大学(埼玉)と平成国際大(※両チーム優勝)、15年の京都外大西高校(京都)、16年の環太平洋大学(岡山)、17年のアサヒトラストと明らかだ。

 

 混戦模様の大会にマドンナ松山は新しいチームで挑む。前年、主にトップバッターを務めた竹内亜里香ら3人が就職活動や進学のために抜けた。今シーズンからは今井莉子、梶本葵、小林夢華、田中望が新たに加わった。中でも指揮官は今井と梶本には主力として期待を寄せている。

 

 今井は新居浜南高2年。昨年の夏頃よりマドンナ松山の練習に参加しており、今シーズンからクリーンアップを任されるなど有望株の1人だ。左投げ左打ちでピッチャーもできるが、上田監督は外野手での起用を考えている。その打撃センスを高く買っているからだ。「みるみるバッティングが良くなってきている。野球センスはすごくあり、バッティングで期待できる。スイングスピードはウチの中でも速い方で、パンチ力もあります」

 

「彼女の加入は大きい」

 指揮官の期待値がことさら高いのが梶本だ。大阪体育大学出身のキャッチャー。大学時代は主戦捕手ではなかったが、上田監督が「肩だけを見たら正捕手でもおかしくはない」というほどの強肩の持ち主である。「守りのフットワークと肩に関しては申し分ない」と指揮官。彼女が経験を積み、課題のインサイドワークが改善されれば、マドンナ松山の扇の要が確立する。

 

 また野手の森藤友綺が昨秋からピッチャーに転向し、エース格に成長した。上田監督の森藤評はこうだ。「コントロールで勝負するタイプ。フォアボールがあまりないので大崩れしません。真っすぐでも変化球でもストライクが取れる。そしてフィールディング、牽制、クイックが良い」。野手出身の森藤と強肩の梶本で組むバッテリーは盗塁や小技でかき回されることも少ないはずだ。

 

 マドンナ松山は全日本女子硬式野球選手権で2年連続2回戦敗退中だ。大会に向けて、今シーズンは実戦を積むことで選手たちを鍛えている。降雨のために中止となった試合もあるが、例年に比べれば3倍の練習試合を組んだという。課題である連係プレーなどに磨きをかける。バッティングでは硬球よりも重いソフトボールを打つことで、パワー強化を図っている。

 

 チームには今大会に懸ける特別な想いがある。「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」により、広島、岡山、愛媛などが甚大な被害を受けた。「今回の大会を盛り上げることが、私たちにできることだと思う。1戦必勝で、元気なプレーを見せたい」と上田監督。大会期間中も募金活動などに参加するつもりだ。大会前には募金活動に加え、全日本女子硬式野球選手権のビラ配りを実施する予定である。

 

 マドンナたちの元気はつらつとしたプレーで、被災地を勇気づける。そして地元・愛媛の野球熱を盛り上げる役割も担っている。ヒロインに課された使命は少なくない。今年も熱い夏が、松山で待っている――。

 

(写真提供:女子硬式野球 マドンナ松山)

 

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