ウルグアイを倒すのは簡単なことではないが、至難というほどではない。だが、ウルグアイから4点を奪うのは、世界のどんな強豪にとってもなし遂げがたい超難事である。W杯ロシア大会の南米予選でウルグアイは5敗を喫しているが、彼らから4ゴールを奪ったのはブラジルのみだった。

 

 なぜウルグアイの守備は堅いのか。栄えあるW杯の初回王者でもある彼らにとって、そして経済的に光の見えない状況が続く彼らにとって、サッカーは唯一にして最大の希望であり続けている。だが、彼らよりはるかに大きな国土を持ち、はるかに多くの人口を誇り、かつ彼らと変わらないサッカーへの情熱を持つ国が、国境の向こう側にはある。

 

 ブラジルやアルゼンチンと伍していくためにはどうするべきか。オープンな打ち合いになれば勝ち目は薄い。守備を固め、できる限りロースコアの展開で勝負する。それが、ウルグアイが伝統的に身につけてきた戦い方だった。“セレステ(空色)”たちの誇りの源だった。

 

 徹底した守備へのこだわりは、時に“アンチ・フットボール”との誹りを受けることもあった。86年W杯メキシコ大会。エルケーアやラウドルップを擁するデンマークの破壊力に粉砕された彼らは試合の途中から暴徒と化した。高いプライドは、傷つけられた際の反応もまた激烈だった。

 

 日本が4点を奪ったのは、そんな相手だったのである。

 

 3失点? そんなことを気にしていてどうする? 日本人が日本人である限り、セットプレーからの守備は永遠に課題であり続ける。もちろん、対策は必要だし、それによって向上する部分も多々あるだろうが、日本人の平均身長が劇的に伸びたりしない限り、高さでの劣勢はこの先もついて回る。考えるべきは、セットプレーからの失点を根絶することより、奪われる以上の得点を奪う能力を身につけること、だと私は思う。

 

 結果、内容ともに日本サッカー史上最高ともいっていい形で新しい日本代表はスタートを切った。それは間違いない。ウルグアイと互角以上に渡り合っての勝利は、今後にとって大きな自信となるだろう。

 

 だが、このままでは限界も来る。

 

 ウルグアイが先の南米予選で5敗を喫しているということはすでに書いた。そのうちの4敗はアウェーでのもの。第1回W杯決勝戦の会場でもあるエスタディオ・センテナリオでのウルグアイは、ブラジルとアルゼンチン以外には勝ち点を与えなかった。

 

 日本でのウルグアイは本気だったし強かった。だが、彼らにはまだ、日本人の知らない一面がある。そこを体験し、そこで勝利をつかまない限り、W杯での上位進出などおぼつかない。

 

 可愛い子には旅をさせろという。日本代表が可愛くない日本のサッカー関係者はいまい。わたしたちの可愛い子供は、史上最高の高みを予感させるサッカーでホーム3連勝を飾った。

 

 旅を重ね、千尋の谷を這い上がる経験を積めば、とてつもない予感を、いまの日本代表は与えてくれる。もっと修羅場を。それがわたしの願いである。

 

<この原稿は18年10月18日付『スポーツニッポン』に掲載されています>