8日、なでしこジャパン(女子日本代表、世界ランク3位)は大阪・金鳥スタジアムで女子ニュージーランド代表(同20位)と国際親善試合を行い、2対1で勝利した。日本は序盤からボールを支配し、NZを追い込んだ。なかなかゴールを奪えなかったが、前半40分、FW高瀬愛実が先制点を決めた。後半も日本ペースの展開となったが、16分、MFカースティー・ヤロップに同点弾を許した。1対1のまま試合は終盤に突入。引き分けかと思われたが、42分、途中出場のFW菅澤優衣香がセットプレーから決勝ゴールを挙げた。日本はこの後、15年W杯(カナダ)のアジア最終予選を兼ねたアジアカップに出場するため、ベトナムに向かう。14日に女子オーストラリア代表(同11位)との初戦を迎える。

 高瀬と菅澤、両ストライカーがアピール弾(金鳥スタ)
女子日本代表 2−1 女子ニュージーランド代表
【得点】
[日本] 高瀬愛実(40分)、菅澤優衣香(87分)
[NZ] カースティー・ヤロップ(61分)
 2人のストライカーがともに輝きを放った。日本はアジア杯が国際Aマッチデーはないため、海外でプレーする選手を全員は招集できなかった。エースのFW大儀見優季は何とか呼び寄せたものの、グループリーグ後にはチームを離脱する。大儀見が去った後のゴールゲッターは誰にが務めるのかが懸念されていた。そこで佐々木則夫監督にアピールしたのが、高瀬と菅澤だ。

 高瀬は12年のなでしこリーグ得点女王で、11年ドイツW杯、12年ロンドン五輪メンバーでもある。しかし、代表では大儀見のバックアッパーとしての起用が多かった。それだけに、まだ大儀見が合流していないNZ戦で結果を出すことは、なでしこでレギュラーを掴むための大きなチャンスだ。

 立ち上がりからボールを支配したなでしこの中で、高瀬は積極的にボールを呼び込んだ。出し手との呼吸が合わず、なかなかシュートまで持ち込めない。それでも、NZの選手にも当たり負けしない強さを随所に発揮し、前線でゴールチャンスを待った。

 すると前半40分、高瀬に待望の決定機が訪れた。MF宮間あやのロングフィードに反応し、PA内でGKと1対1の場面を迎えた。高瀬は前に出てくるGKに重圧をかけられる中、冷静にゴールに流し込んだ。チームにとっても、高瀬にとっても待望のゴール。ゴールネットが揺れた瞬間、高瀬は小さく両手でガッツポーズをつくった。高瀬のゴールで、なでしこはリードして試合を折り返した。

 後半、なでしこは13分にA代表デビューとなるDF乗松瑠華、ベテランMF澤穂希を投入。佐々木監督のアジア杯に向けて選手の調子を確かめる意図がうかがえた。
 しかし、交代直後の16分、NZに同点弾を献上した。左サイドからのクロスに対応したDF有吉佐織のクリアが小さく、ヤロップにボールを拾われる。ヤロップにPA手前から右足を振り抜かれ、ゴール右下に決められた。

 追いつかれた後は、なでしこがNZに押し込まれる時間帯が続いた。この状況を打破したいなでしこベンチは、27分、高瀬に代えてFW丸山桂里奈、そしてFW吉良知夏に代えて菅澤をピッチへ送り出した。菅澤はロンドン五輪のメンバー入りが期待されていたが、12年4月に左ひざ前十字じん帯を損傷。全治6カ月の重傷で、大舞台に立つことは叶わなかった。代表定着へ、主力不在のアジア杯は大きなチャンスとなる。

 30分、その菅澤が前線で起点となり、チャンスを演出した。パスを受けると、右サイドの川澄へ。川澄が上げたクロスをGKが弾き、こぼれ球に宮間が詰めたが、ゴール左に外れた。得点にはならなかったが、菅澤のポストプレーヤーとして、攻撃のタメをつくる特長が生きた。 

 迎えた41分、菅澤が試合を決めた。右サイドからのCKで、宮間がPA内中央に上げたボールを入れる。菅澤はNZの選手の振り上げた足が顔面近くに迫る中、頭で合わせ、ゴール左へねじ込んだ。菅澤にとって12年4月のブラジル戦以来、2年ぶりの代表ゴール。大きく両手を広げて喜ぶ背番号15の姿があった。

「(アジア杯で大儀見が離脱した後は)残りの選手でさらにパワーアップしてやってもらわないと困る」
 戦前、佐々木監督はFW陣に対してこう語っていた。その意味で、NZ戦での2人のストライカーの活躍は、指揮官の心に強く響いただろう。佐々木監督は「まだまだ」と気を引き締めたが、6日後から始まるアジア杯に向け、チームに弾みがついたことは間違いない。