7日、10月の世界体操競技選手権(中国・南寧)の日本代表選考会を兼ねた「第53回NHK杯体操」が開幕し、女子の競技が行われた。5月の全日本選手権を制し、持ち点でリードしていた笹田夏実(日本体育大)が、トータル83.725点で優勝。NHK杯初制覇を達成した。2位には昨年優勝の寺本明日香(中京大)が入り、3位には4位スタートの井上和佳奈(筑波大)が滑り込んだ。笹田は2大会連続2回目、寺本は3大会連続3回目、井上は初の世界選手権代表に選出。また14歳の宮川紗江(セインツ体操クラブ)が跳馬とゆかで最高得点をマークし、全体7位。今大会は8月のユース五輪(中国・南京)の選考も兼ねており、宮川は出場資格(1999年生まれ)を持つ選手中トップとなり、南京行きを決めた。
 全日本に続きNHK杯を制し、笹田がエースに名乗りを挙げた。

 全日本最終日の2分の1の点数が、持ち点として持ち越された。笹田は、2位の寺本に0.250点差でNHK杯をスタートした。第1ローテーションの跳馬で笹田は着地をしっかり決め、13.800点をマーク。しかし寺本が14.100点を出したため、トップは入れ替わった。それでも笹田は慌てない。続く段違い平行棒では、寺本を0.250点上回り、暫定1位に再浮上。寺本に0.200点差をつけて折り返した。

 第3ローテーションは得意の平均台。G難度の入り技を決めると、台上で安定感のある演技を見せた。フィニッシュの降り技の着地で1歩下がったが、この種目で全体トップの14.600点。最終ローテーションのゆかを迎えた時点で、1点近い差をつけた。大きなミスさえなければ、守れるリードだ。先に演技を実施した寺本は「ひねり切らなかった」と、終盤の伸身3回ひねりがうまく決まらなかったこともあり、13.250点。トータル82.625点で終えた。

 大トリを務めるかたちとなった笹田。12.350点以上なら優勝が決まる。笹田にとっては、ゆかも得意種目。同い年のライバルとのマッチレースは、ほぼ大勢決したと言っていい。今大会、安定したパフォーマンスを見せていた笹田は最後のゆかでもミスなくまとめ、13.450点。2位の寺本に1.100点差をつけ、今シーズンの個人総合2冠を達成した。

 直前の公式練習での感覚は悪かったという。本人は「60%ぐらい」という出来。コーチや先輩などに声をかけてもらったことで気持ちを持ち直した。そしてスタンドの声援を受け、奮起し本番では9割まで戻した。精神面の充実が安定した演技につながったのだろう。

 NHK杯は、母・弥生が4連覇している大会。18歳の新女王は「まだお母さんの記録を越せていない。来年も、その次もしっかり頑張ります」と誓った。今大会の結果により内定した世界選手権については「引っ張っていく役割だと思う。トップで代表に入っている。一番乗りに入ったので、チームの中で一番いい練習をして、いい試合をしたい」とリーダーとしての自覚を窺わせた。

 2位の寺本、3位の井上も世界選手権の代表に決まった。ともに1998年生まれの大学1年生。初代表の井上は「初めてなので2人についていく」と話せば、一昨年のロンドン五輪、昨年の世界選手権を経験している寺本は「今まではずっと年下だった。今年は私たちの世代が引っ張っていかないといけない」と力強く語った。残り3人の世界選手権代表は7月の全日本種目別選手権後に決まる。まずは個人総合で、一足先に南寧行きの切符を手にした18歳トリオが、体操NIPPONをリードする。

【女子個人総合】
1位 笹田夏実(日体大) 83.725点
2位 寺本明日香(中京大) 82.625点
3位 井上和佳奈(筑波大) 79.900点

(文・写真/杉浦泰介)