1日、第63回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝2019)が行われた。群馬県内を巡る7区間100キロのコースを制したのは旭化成。最終7区までもつれた優勝争いは、第6中継所手前でトップに立った旭化成と富士通がデッドヒートを展開。旭化成の大六野秀畝がアンカー勝負を制した。旭化成は3連覇で通算24回目の優勝。

 

 新春の上州路を舞台に行われるニューイヤー駅伝、下馬評では3連覇を狙う旭化成、3年ぶりの優勝を目指すトヨタ自動車、勝てば10年ぶりVとなる富士通が3強と見られていた。初優勝を目指したホンダはエース設楽悠太が直前の発熱によって欠場となり、スタート前にV戦線から後退した。


 午前9時15分、号砲とともにスタートしたレースは、愛三工業、SUBARUが先頭に立ち、集団を引っ張った。1キロ通過が3分7秒と例年にないスローペースでレースが進み、10キロ過ぎ、優勝候補・旭化成の村山紘太が集団から飛び出したものの、再び集団に飲み込まれる。トップは小森コーポレーション、大塚製薬、NTT西日本、九電工、ヤクルトと目まぐるしく変わり、最後は九電工・中村信一郎がヤクルト・高久龍との競り合いを制し、トップでたすきをつないだ。

 

 外国人選手のエントリーが認められるインターナショナル区間の2区。九電工のベナード・コエチがトップを走り、5キロ過ぎに愛三工業ロジャースチュモ・ケモイが逆転。先頭に出たケモイは徐々に2位以下を引き離して、一時は15秒近いリードを構築した。この2区で快走を見せたのがトヨタ紡織のエバンス・ケイタニーだ。6.6キロまでに20人を抜いたケイタニーは4位に浮上。さらにペースは衰えず、22人を抜いて2位で2区を走り終えた。

 

 3区序盤はトップの愛三工業をトヨタ紡織、富士通などの2位集団が追いかける展開。4キロ過ぎにトヨタ紡織・大池達也がトップをとらえて、さらにSUBARU、富士通、九電工もこれに追いつきトップ集団を形成した。6キロ手前で愛三工業が後退すると、代わって旭化成の鎧坂哲哉がトップ集団に加わった。8キロ過ぎにSUBARU牧良輔がペースを上げて集団から抜け出すと、鎧坂もこれについていき13キロを過ぎたところで、鎧坂がトップに立った。だが、第3中継所手前、残り270メートルで牧がスパートを見せてトップを奪い返した。結局、SUBARU、旭化成の順で4区へ入った。

 

 エース区間の4区、まずレースを引っ張ったのが旭化成・市田孝。富士通・中村匠吾とのトップ争いを凌ぎ、8キロ過ぎまでトップをキープした。トップの市田孝に追いついたのがMHPSの井上大仁。10.8キロで2位に上がった井上は、そのままの勢いでトップの市田孝に迫った。11キロ、井上がトップに立つと、その後、市田孝はペースが落ち3位に後退。井上は徐々に富士通、旭化成の2位以下を引き離し、結局、35秒のリードをつけて4区を走り終えた。

 

 MHPSの5区担当・宗方俊樹は、井上の築いた大量リードを守り、2位以下の接近を許さなかった。2位集団は旭化成・村山謙太、富士通・星創汰、SUBARU・口町亮らが形成した。区間終盤にはここにトヨタ自動車の服部勇馬が加わり、最後は村山謙と2位争いを展開。もつれる2位争いを後目にして、MHPSは34秒のリードで6区へと入った。

 

 トップのMHPSはキャプテンの木滑良。約30秒の差で2位集団、旭化成・市田宏、トヨタ自動車・窪田忍、富士通・横手健らが続いた。3キロ過ぎ、窪田が集団を抜け出してトップとの差を20秒にまで詰めた。さらに窪田はペースを上げて、トップと15秒差に迫った。ここで後方から市田宏、横手も追いつき再び2位は集団となった。

 

 8.8キロ地点、市田宏がスパートして2位集団を抜け出すと、徐々にトップの木滑との差を詰めた。残り1キロ、2人の差は5秒になり、木滑もペースアップ。これに市田宏もついていき、残り700メートルでトップを奪った。だが、再度、木滑がペースを上げて先頭に立つと、両者はほぼ並んだままで中継所手前まで。ここで市田宏が再び仕掛けてトップに立ち、アンカーの大六野秀畝にたすきを渡した。2秒差のMHPSは岩田勇治が最後の7区へと走り出した。

 

 勝てば旭化成は3連覇、MHPSは創部37年目で初優勝となる。どちらも負けられない15.5キロのアンカー対決は、大六野が9キロ過ぎまでトップをキープ。その後、大六野は向かい風を嫌ってペースを落とし、岩田を一旦前に出した。岩田、大六野の順でレースは進み、13.9キロ、大六野が仕掛けてトップに立ったものの、岩田も粘り、両者は並走状態となった。そのままゴール手前までお互いに仕掛けどころを探り合う戦いとなり、残り100メートル、大六野がスパートで岩田を引き離し、トップでゴールテープを切った。

 

 優勝した旭化成・西政幸監督は「最後は胃が痛くなるような展開でしたが、秀畝(大六野)を信じていました」と語った。接戦を制した大六野は「前半は逃げ切ることを考えていたけど、なかなかそうならずにもつれる展開になった。後半の勝負に備えて力をため、余力を持って最後までいけたので、勝ててホッとしてます」とレースを振り返った。

 

(文/SC編集部・西崎)