2日、第95回東京箱根間往復大学駅伝競走は、東京・大手町から神奈川・芦ノ湖までの往路5区間(107.5km)で行われ、東洋大学が2年連続7度目の往路優勝を果たした。1区から3区までは目まぐるしくトップが入れ替わったが、4区で抜け出した東洋大が5区も1位を守り、5時間26分31秒でゴールテープを切った。2位は1分13秒差で初優勝を目指す東海大学、3位には2分44秒差で昨年14位の國學院大学が入った。4連覇中の青山学院大学は5分29秒差の6位と出遅れた。

 

 新春の風物詩、箱根駅伝は東洋大が往路連覇を果たした。戦前の下馬評は大会5連覇のかかる青学大が大本命だった。今シーズンは出雲全日本大学駅伝競走、全日本大学駅伝対校選手権大会を制しており、V5は盤石だと見られていた。

 

 大手町をスタートした23本の襷。今年は1区から実力者が揃った。ディフェンディングチャンピオンの青学大は出雲駅伝1区区間賞の橋詰大慧(4年)、ライバルの東洋大は前回の1区区間賞・西山和弥(2年)、東海大は“黄金世代”の鬼塚翔太(3年)を起用した。駒澤大学の片西景(4年)、帝京大学の竹下凱(4年)、神奈川大学の山藤篤司(4年)という各校の主将、早稲田大学のスーパールーキー中谷雄飛の走りにも注目が集まった。

 

 スタート直後に大東文化大学の新井康平(4年)が転倒するアクシデントがあった。先頭集団の入りの5kmは15分18秒と比較的スローなペース。東京国際大学の留学生モグス・タイタス(3年)が引っ張った。後続を引き離し切れないタイタスは度々集団に吸収される。残り3kmを切る六郷橋で集団は縦の隊列に変わる。

 

 ここで引き離しにかかったのが西山だ。六郷橋は前回もトップに躍り出たポイントである。「昨年はたまたま前に出ましたが、今年は六郷橋を上り切ったところでいくと監督とも打ち合わせていました。その通りのレースができました」。中央大学の中山顕(4年)に競り勝ち、2年連続トップで襷を繋いだ。

 

 エースが集う“花の2区”は、全区間最長タイの23.1kmを走る。先頭争いは東洋大の山本修二(4年)と堀尾謙介(4年)のマッチレースとなった。権太坂を通過するまではほぼ並走が続き、19km手前で山本が仕掛ける。山本を堀尾が追いかけるかたちとなった。このままの順位で戸塚中継所に到着するかと思われたが、伏兵が飛び込んできた。

 

 9位で襷を受け、3位に浮上していた国士舘大学。留学生ルーキーのライモイ・ヴィンセントが残り1kmを切ったところで堀尾、山本を追い抜いた。どこよりも早く戸塚中継所で待つ多喜端夕貴(4年)に襷を渡した。ヴィンセントは区間3位の快走で8人抜き。6秒差で東洋大、14秒差で中大と続いた。

 

 ごぼう抜きが目立つ2区は日本大学の留学生パトリック・ワンブィ(4年)が13人抜きで区間賞、リオデジャネイロオリンピック3000m障害日本代表の塩尻和也(4年)が10人抜きで区間2位と快走を見せた。ワンブイは1時間6分18秒で歴代2位、塩尻は1時間6分45秒で歴代日本人トップ(歴代3位)の好記録をマークして期待通りの活躍だ。

 

 3区東洋大・吉川洋次(2年)は2年連続の箱根駅伝である。前回は4区を走り、区間2位の好走。今シーズンは出雲駅伝で6区区間賞を獲得している。すぐに国士舘大を抜き、先頭に躍り出た。往路2連覇へ突き進む。

 

 トップと1分5秒差で8位と出遅れた優勝候補の大本命青学大は、当日のエントリー変更で起用された主将・森田歩希(4年)が巻き返す。「前との差は想定通り」と冷静だった。前回は2区区間賞。直前合宿で故障し、補欠登録にも。1kmで東洋大・吉川を抜いた。森田は区間新記録の1時間1分26秒を叩き出した。7人抜きでV5をグッと手繰り寄せる。青学大と東洋大との差は8秒だ。

 

 青学大がV5ロードへひた走るのか。だが、ここまで全ての中継所でトップが入れ替わっていた。大学駅伝デビューとなる岩見秀哉(2年)にライバル校のエースが襲いかかる。東洋大の相澤晃(3年)に3km手前で、東海大の館澤享次(3年)には18km過ぎでかわされた。

 

 相澤はエースの走りでトップを奪い返した。岩見をかわすと独走状態に入る。1時間0分54秒の区間新記録。「しっかり自分のところで差をつけたいと思っていた。100%の走りができました」と胸を張る。館澤は1時間2分37秒で区間2位。2位に浮上した東海大は東洋大と2分48秒差で、3位に落ちた青学大は3分30秒差の3位で襷を渡した。

 

 これまで数々のドラマを繰り広げてきた“山上りの5区”はスペシャリスト区間だ。トップの東洋大・田中龍誠(2年)、3位の青学大・竹石尚人(3年)らが前回の経験者である。しかし田中は2位の東海大に1分半以上差をつめられ、竹石は6位に順位を落とした。田中は先頭を守ったが区間8位、竹石は区間13位と苦しんだ。

 

 初の山上りを経験した2人が活躍した。東海大の西田壮志(2年)は1時間11分18秒の区間2位の走りで、首位・東洋大との差をつめて初優勝の望みを繋いだ。3位には6位から押し上げた國學大の浦野雄平(3年)が、西田を上回る1時間10分54秒の区間新記録をマーク。順位を6位から3位に押し上げた。

 

 芦ノ湖までの到着時間は東洋大が5時間26分31秒、東海大は5時間27分45秒、國學大は5時間29分15秒だった。青学大は5時間32分31秒。4、5区の遅れが響き、まさかの6位で前半戦を終えた。

 

「5人ともベストの走りをしてくれた」

 東洋大の酒井俊幸監督は往路メンバーを称えた。配置は違うものの、前回と同じ5人で臨んだ。指揮官は「この1年間、内面も走力も磨いてきた。成長を証明できてうれしく思います」と喜んだ。前回を上回る往路新記録で5人が作った貯金は1分13秒だ。「まだ気の抜ける差ではない。6、7区で復路の主導権を握りたい」と酒井監督。5年ぶりの王座奪還に向けて6、7区には前回の箱根を経験した今西駿介(3年)、小笹椋(4年)をエントリーした。鉄紺の襷が大手町に先トップで駆けつけるか。注目の復路は3日朝8時、“山下りの6区”から幕を開ける。

 

 往路の順位は以下の通り。

(1)東洋大(2)東海大(3)國學院大(4)駒澤大(5)法政大(6)青山学院大(7)順天堂大(8)拓殖大(9)帝京大(10)中央学院大(11)明治大(12)中央大(13)日本大(14)国士舘大(15)早稲田大(16)日本体育大(17)東京国際大(18)神奈川大(19)城西大(20)上武大(21)大東文化大(22)山梨学院大(※)関東学生連合

※OP参加のため順位なし

 

(文/杉浦泰介)