四国アイランドリーグPlusは後期シーズンがスタートして約3週間が経った。NPB入り、復帰を目指してプレーする選手たちにとっては野球人生を賭けた熱い夏の到来だ。
 独立リーグNo.1ピッチャーと評され、昨季までBCリーグ・新潟のエースだった寺田哲也は今季、香川に移籍した。新潟では2012年にリーグ最多の14勝(4敗)をあげ、チームの日本一に貢献。昨季も15勝(2敗)をマークして2年連続の最多勝に輝いた。しかし、NPB入りは叶わず、今季を“ラストチャンス”と定め、四国へやってきた。作新学院高、作新学院大を経て、独立リーグ生活は5年目。27歳を迎えた右腕に、ドラフト指名への決意を訊いた。
(写真:140キロ台中盤のストレートに、フォークボール、チェンジアップ、スライダー、シュート、カーブと変化球も多彩)
――前期の成績は4勝4敗、防御率3.49。奪三振103個はリーグトップとはいえ、数字的には不満が残ったのでは?
寺田: 成績としては恥ずかしい結果になりました。ストレートしか納得のいくボールがなかった。その中で三振を多くとれたのは前向きにとらえたいです。後期は変化球もコントロールを良くして、自分の感覚を取り戻せば、もっとやれると感じています。

――BCリーグ・新潟では2年連続で最多勝をあげながら、ドラフト会議で指名がありませんでした。一時は引退も考えていたとか。
寺田: 最初は辞めるつもりで、球団にも話をしていました。ただ、最後の悪あがきで新潟でのボストン・レッドソックスのトライアウトを受けたんです。その練習をするうちに、「今年よりも来年はもっといいボールが放れるかもしれない」と感じました。昨季は球速がMAX147キロしか出なかったのですが、もっとスピードが出そうな体の使い方をつかめたし、変化球もさらに良くなる手応えがあったんです。

――NPB入りへ現役を続行し、香川への移籍を決断しました。この1年で勝負するにあたって、今までと変えた部分はありますか。
寺田: オフに地元の栃木で高校の先輩である千葉ロッテの岡田(幸文)さんをはじめ、福岡ソフトバンクの細川(亨)さん、北海道日本ハムの赤田(将吾)さんらと自主トレをする機会がありました。その際、一緒に体幹トレーニングができたのは大きかったです。僕は決して体幹が強いほうではなかったので、かなり鍛えられましたね。体の軸がしっかりしてピッチングをしていてブレなくなりました。

――それだけに前期、結果が出ないと精神的にもきつい面があったはずです。
寺田: 結構しんどい時もありましたね。僕が投げる試合は、なかなかチームに勝ちがつかない……。でも「今は我慢する時期なんだ」と自分に言い聞かせていました。

――アイランドリーグとは2012年の独立リーググランドチャンピオンシップで香川相手に2試合に先発し、いずれも無失点に抑えて新潟を日本一に導いています。とはいえ、シーズン通して投げるのは初めて。BCリーグとの違いに慣れない点もあったのでしょうか。
寺田: それは関係ありませんね。球場の雰囲気や練習時間に違いはありますが、野球のレベルに関しては差はない。結果が出ていないので、あまり説得力はないかもしれませんが(苦笑)。

――伊藤秀範投手コーチからは、「変化球の精度を高めること」がNPB行きの条件に挙げられています。この点はどのように克服しようとしていますか。
寺田: 変化球はずっと課題と言われています。甘いコースに行って打たれる確率が高い。特に追い込んでから、コースと高さを間違えないように投げることが大切です。ドラフトまでに、どこまでレベルを上げていけるかが勝負になると感じています。
(写真:伊藤コーチはスライダー以外に「もうひとつ武器になるボールを身につけてほしい」と指摘する)

――具体的には、どの球種を磨こうと?
寺田: この2、3年、フォークボールをモノにしたいと取り組んできました。香川に来て、チームメイトの田村雅樹に聞いたら、少し浅めに握って指を縫い目にかけ、コントロールしやすいかたちで投げていたんです。僕も試してみたら、しっくりきて真っすぐと同じ感覚で放れました。実戦で使えるレベルになってきたので、前期の後半あたりから試合でも使うようにしています。

――プロ野球選手は小さい頃からの夢だったと思いますが、実際に意識し始めたのは?
寺田: 心の底からプロに行きたいと思ったのは作新学院大の4年頃です。大学時代はあまり野球をちゃんと取り組んでいなくて、いざ最終学年になってみると続けられる環境が見つからなかった。野球をやりたいと改めて強く思った時に、プロの選手になるとの目標が具体的に出てきました。

――独立リーグはNPBと数多く実戦経験が積める点も他のアマチュアにはない強みです。実際に対戦してみての印象は?
寺田: う〜ん、印象がどうというより、いつもNPBとの対戦では、僕が彼らより優れていることを証明しようと意識していますね。ちょっと生意気かもしれないけど、この人たちのユニホームを脱がさない限り、僕がその場に立つことはできない。特に支配下登録の2ケタの背番号の選手には「絶対に打たれてたまるか」との気持ちで投げています。

――ドラフト会議までは残り3カ月。本当に人生を左右する時間になることでしょう。改めてスカウトにどんな点をアピールしたいですか。
寺田: 一番は真っすぐの質ですね。追い込んでもコーナーに決められる精度と、ピンチの場面でのボールの強さ。この部分は僕の長所だと思いますし、今後もさらに伸ばしていきたいです。その上で、変化球がレベルアップしたところを見せたいですね。

――今季は香川から中日に入団した又吉克樹投手が1年目からリリーフで5勝をあげています。NPBに行って彼に続く存在になれば、独立リーグ全体の価値が上がるはずです。
寺田: 又吉君は昨オフ、香川に契約を結びに行った際に練習をしていて、一緒にキャッチボールもしました。ボールのキレが素晴らしくて、軽く投げているのに、グンと伸びて向かってくる。さすがだなと感じましたね。僕も、このレベルを目指して頑張らなくてはいけないと刺激を受けました。

――NPBでも活躍するピッチャーになる上での理想像は?
寺田: 実際のピッチングを見たことはないのですが、高校の大先輩である八木沢荘六さんのようなタイプのピッチャーになりたいですね。BCリーグでも群馬でコーチをされていた時には、相手チームながらお世話になりました。八木沢さんも決してストレートのスピードは速くなかったと聞いています。でも、変化球をうまく組み合わせたピッチングで完全試合も達成されました。僕もNPBではストレート一本で押せる人間ではないと思っています。八木沢さんのようなスタイルを身につけることがプロで生き残るための方法だと信じています。
(写真:新潟時代の13年7月には群馬相手にノーヒットノーランを達成した)

(Vol.2では高知・河田直人選手のインタビューを掲載します) 

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(聞き手:石田洋之)

7月25日(金)

 増田、勝ち越し打含む3打点(徳島3勝、JAバンク徳島、164人)
高知ファイティングドッグス 3 = 110100000
徳島インディゴソックス   9 = 13030002×
勝利投手 アヤラ(8勝1敗)
敗戦投手 グルジョン(2勝9敗)

<順位表> 勝  負  分  勝率   差
1.徳島   6  2  1  .750
2.愛媛   5  2  1  .714  0.5
3.香川   2  3  1  .400  2.0
4.高知   1  7  1  .125  2.5