帝京大学駅伝競走部は1999年に創部された。部の歴史は浅いが正月の風物詩と言われる箱根駅伝の常連校である。同駅伝での最高順位は第76回大会と第89回大会で記録した総合4位。2005年11月に就任した中野孝行監督の指導の下、着実に力をつけている。同大学には徳島県出身の岩佐壱誠という注目選手がいる。

 

 

 

 

 

 

 岩佐は1年生から3年連続で箱根駅伝を走っており、今年度からはキャプテンに就任した。1年生時は7区(第93回大会総合11位)。2年生時は1区(9位)。3年生では再び7区(5位)を走っている。

 

 彼は2年生の冬に東京マラソンにもチャレンジした。初マラソンは2時間14分の好タイムでのフィニッシュ。1月の上旬に箱根駅伝を走り、2月下旬に開催された東京マラソンも走り切った。マラソンに向けた実質の準備時間は「50日程度」(中野監督)だった。それでも見事、アジャストして初マラソンで好結果を残したのだ。

 

 岩佐の長距離ランナーとしての特徴は抜群の安定感である。淡々と、冷静に、力強く地面を蹴る。好不調の波がなく、指揮官にすれば計算のたつランナーだ。岩佐本人に特徴を訊いた。

 

「粘り強さです。安定してタイムを出すことができるのが長所だと思います」

 

 型にはめない指導で定評がある中野監督に岩佐の長所を訊いた。「心理的にも身体的にも長い距離に対して免疫がある」と語り、まずは心理面の解説をする。

 

「2018年、2年生の終わりに東京マラソンに挑戦させました。20歳という若さでマラソン挑戦はどうなのか……と思っていました。学生は練習でも30キロくらいを走る練習がメインです。42キロに対する恐怖感や先入観があり、マラソンに踏み込めないこともあります。

 

 ですが、彼の場合は大学に入って丸2年経ってないのにふたつ返事で“やりたい”と。これは中々、言えることではないんです。岩佐は42キロに対する恐怖感がさほどなかったみたいです」

 

 可能性の天井が見えない

 

 続いて、身体面の解説。

「マラソンのトレーニングは通常、2カ月か3カ月を要すると言われています。本学は箱根駅伝を1月に控えているので、マラソンの準備期間が短いんです。ただ、箱根駅伝までは駅伝に照準を合わせたトレーニングを行い、マラソンの練習は駅伝が終わってからと決めました。満足な準備はできなかったのが事実です。

 

 50日程度の準備期間で何ができるかと考えて5日間だけ合宿を試みました。30キロ走をし、1日空けて40キロ走。また1日空けて35キロを走らせた。最初は長い距離に慣れつつ、35キロ走のラスト5キロでペースを上げる。ここで想定よりも速いペースで走ったんです。

 

 それでも本番は2時間17分から20分くらいでのゴールかなと思って私もゆっくりゴール地点に向かっていたのですが、2時間14分でゴールしました。これはもっとしっかりとしたトレーニングを積めばもっといい結果が出せるなと感じました」

 

 一方で岩佐の課題も訊いた。すると「いやぁ、申し訳ないんですが……」と前置きし、興味深い答えが返ってきた。

「正直、岩佐の短所がまだ見えてこない(笑)。本当に未知数です。それが楽しみでもありますし、可能性に天井(限界)が見えてないのが現状です」

 

 岩佐は高校入学とともに本格的に陸上競技を始めた。競技歴はわずか6年である。これだけの短い時間で箱根を走るランナーに成長した彼の道のりを振り返ろう。

 

(第2回につづく)

 

岩佐壱誠(いわさ・いっせい)プロフィール>

1998年2月7日、徳島県那賀町生まれ。徳島科学技術高校進学後、本格的に陸上(長距離)を始める。すぐに頭角を現し、出場した都道府県駅伝、全国高校駅伝では全て1区を担当。16年に帝京大学に入学。1年時より3大駅伝(出雲、全日本、箱根)を走る。箱根では1年時7区。2年時1区。3年時7区。4年時よりキャプテンに就任。2018東京マラソンでは2時間14分でゴール。身長167センチ。体重55キロ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

 

 

 

 


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