19日、Jリーグは2014年7月度の各アワードを発表した。J1ベストゴールにはガンバ大阪のMF倉田秋が第15節ヴァンフォーレ甲府戦で決めたゴールが選出された。月間MVPはJ1が浦和レッズのGK西川周作(2度目)、J2はファジアーノ岡山のMF上田康太(初)が受賞した。月間ベストゴールはファン・サポーターによる一般投票と、スポーツ・サッカーメディア関係者からの推薦によりノミネートものより選考委員会が最優秀ゴールを決定。月間MVPは各月のリーグ戦(J1、J2)において最も活躍した選手を、サッカー専門メディアとリーグ選考委員会が選考する。
 浦和は第10節から第16節まで、7試合連続無失点というJ1記録を打ち立てた。その最大の立役者が西川である。選考委員会は西川の選出理由について、次のように総評を発表した。

「7月の成績では、枠内にシュートされた15本のうち、セーブ数が2位タイとなる14本、セーブ率は93.3%と高い数字を誇る。特に第15節の新潟戦、第16節の徳島戦において、相手との1対1をセーブするなど、ピンチを確実に防ぐ集中力を維持する姿勢が評価される。第17節の鹿島戦で1失点し、チームの連続無失点記録が途切れたが、その後、崩れることなくチームを支えた」

 総評にもあるように、西川はビッグセーブでピンチを救う機会が多い。選考委員会のメンバーである宮本恒靖Jリーグ特任理事は西川の特徴を「ポジショニングがいい」と語り、こう続けた。
「(ポジショニングがいい理由は)ゲームが読めるからだと思う。そういう力が大きい」

 また、選考委員会は「パスを受ける回数がGK内で各月トップの数字を誇り、パス回しに参加しながらチームのバランスを整えるコーチング能力にも長けている」と評した。宮本特任理事も「攻撃の第一歩になるという意識が非常に高い」と西川のプレースタイルには好印象を抱いているようだ。

 下記はJ1第1節から第17節までにおけるパスを受けた回数が多いGKのランキングだ。

1位 西川周作(浦和) 306回
2位 林卓人(広島)  235回
3位 林彰洋(鳥栖)  172回
4位 関憲太郎(仙台) 154回
5位 菅野孝憲(柏)  152回

 いかに西川がパスを受ける回数が多いかはこのデータを見れば明らかだ。そして、これは西川の足元の技術が以下に高いかも表している。宮本特任理事は現役時代に勤めたDFという立場からの観点で、西川のようなGKの存在意義を次のように説明した。
「ボールを回していて、自分がDFとしてプレッシャーを受けた時、GKに足元が得意な選手がいると、相手を引きつける距離も変わってくる。(なるべく近くまで引きつけることができれば)自分が味方の位置を確認したり、パスコースを選択する時の時間が稼げるので、より選択肢が広がる。そういった意味で西川選手のようなGKがいてくれることは、DFにとって非常に心強い。パスをするというところの安心感だけではなく、そこに彼がいるということでギリギリまで判断を変えられるので助かる」

 宮本特任理事はブラジルW杯に大会技術委員として参加した。各委員が「今大会はGKのレベルが高い」と語る中で、特に評価が高かったのはドイツのGKマヌエル・ノイアー。果敢にPAを飛び出してピンチを防ぐ姿に、12人いる技術委員のほとんどが「素晴らしい」と評価したという。「これからいいGKがもっと育っていくために、子供たちにGKというポジションに注目してもらいたい」と宮本特任理事は語っていた。

「(JリーグでプレーするGKは)プレーエリアがそこまで広くはない。飛んできたボールに対する反応に関しては、全体的にレベルが上がってきていると感じる。しかし、試合を読んでポジションを変えているかということに関していうと、もう少し、もっといい影響をゲームに与えられると思う」

 宮本特任理事はこのように日本のGKの課題を挙げた。シュートを止めるだけがGKの仕事ではない。子供たちにはビッグセーブなどの派手さばかりではなく、GKというポジションの重要性にも注目してもらいたいところだ。