「4年に一度じゃない。一生に一度だ」

 

 

 それがラグビーW杯日本大会のキャッチコピーだ。

 

 ラグビーW杯は1987年にオーストラリアとニュージーランドの2カ国がホストカントリーとなって開催されて以来、今回の日本大会で9回目だが、常識的に考えて、次の日本開催は数十年後だろう。いや、もう次はないかもしれない。

 

 2020年7月に始まる東京五輪に比べると、メディア露出の少ないラグビーW杯だが、開催期間は前者が約2週間であるのに対し、こちらは約1カ月半のロングラン興行。北は札幌、南は熊本まで全国12のスタジアムが舞台となる。

 

 12会場の中で最も収容人数が少ないのが釜石市の鵜住居復興スタジアムである。1万2020人と小規模だ。

 

 ここでフィジー対ウルグアイ戦、ナミビア対カナダ戦が行われる。もっとやってあげればいいのに、とも思うが、これは仕方がない。

 

 というのもテレビの放映権収入やスポンサー収入は国際統括団体である「ワールドラグビー」におさえられており、組織委員会に入ってくる主な収入は入場料だけなのだ。

 

 必然的に日本戦や人気チームのカード、決勝トーナメント以降の試合は大きなハコでやらなければ赤字になってしまう。幸いチケットの売れ行きはよく、黒字の見通しは立ったという話だが、組織委の収入の半分は宝くじやサッカーくじなど公的なお金に依るものだ。

 

 加えて組織委員会は「ワールドラグビー」から9600万ポンド(約134億円)の“上納金”の納付が義務付けられている。これも重荷だ。

 

 しかし、そうした“不平等条約”をのまなければアジアで初めてのラグビーW杯開催にこぎつけることはできなかったのだから、痛し痒しだ。

 

 釜石に話を戻せば、ここが成功しなければ大会の成功はない、と見ている。「鉄と魚とラグビーのまち」は東日本大震災により壊滅的な打撃を受けた。

 

「ラグビーを震災からの復興のシンボルに!」

 

 かつて日本選手権で7連覇を達成した新日鐵釜石は釜石シーウェイブスと名を変え、現在も活動を続けている。

 

 W杯後、トップリーグは地域密着に衣替えし、3部制を敷く見通し。釜石を本拠地とするチームが再び日本のラグビーシーンの中心に躍り出ることこそが、大会最大のレガシーとなるのではないか。

 

「北の鉄人」の復活を待ち望んでいるラグビーファンは少なくない。

 

<この原稿は『漫画ゴラク』2019年6月14日号に掲載されたものです>

 


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