4回戦
◇9月10日 NACK5スタジアム 2,788人
 大宮アルディージャ 2−1 愛媛FC
[大宮] 富山貴光(63分)、橋本晃司(68分)
[愛媛] 河原和寿(5分)
 川崎フロンターレに続くJ1撃破へ、一時は大きく膨らんだ夢が潰えた。試合開始5分での先制弾。前半はリードして折り返した。だが、90分を終えてみれば、17位と低迷しているとはいえ、J1の大宮と、J2で18位に沈む愛媛の差が現れた。

 同じオレンジをチームカラーとする両者は初顔合わせ。愛媛は川崎戦で決勝ゴールをあげたFW表原玄太がU-19代表、MF原川力がU-21代表に選ばれて不在の戦いとなった。大宮は大熊清監督が解任され、渋谷洋樹コーチが指揮官に昇格して初の公式戦だった。

「監督が代わって情報がなく白紙の状態だったので、先入観を持たずに自分たちのサッカーをしようと選手たちには話をしていた」
 石丸清隆監督が語ったように、立ち上がりの愛媛は「自分たちのサッカー」ができていた。相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪ったら、縦へ素早く入れて攻め上がる。

 そのスタイルがいきなりゴールという形で実を結んだ。5分、左サイドからDFキム・ミンジェのフィードにDFハン・ヒフンが右サイドで競り合い、ヘッドで合わせる。「走れば、(自分のところへ)落としてくれると思った」とFW河原和寿がゴール前中央で相手のDFラインの裏へ抜け出すと、ボールはその足元へ。トラップして放ったシュートはゴールマウスへ吸い込まれた。

 電光石火の先制弾。愛媛は最高のかたちでリードを奪う。勢いづいた愛媛は大宮ゴールに幾度となく迫る。18分にはDF西岡大輝の縦パスがMF堀米勇輝にわたり、さらに左サイドを駆け上がったキムへ。キムのクロスは河原に通らず、判定もオフサイドだったが、J1クラブのお株を奪う攻勢をみせる。

 しかし、皮肉なことに時間の経過につれ、1点リードが、愛媛の選手たちにとっては重荷となっていく。リーグ戦では直近の2試合で先制しながら勝ちきれなかった。苦しいチーム状況が、無意識のうちに選手たちの姿勢を守りに走らせる。

「指示をしていないのに、引いた守備を選択してしまった。なぜ引いたのか理解しがたい」と指揮官も首をひねったように、徐々にラインが下がり始め、右サイドを幾度となく突破された。40分には、その右サイドからMF田中のシュートがポストをたたくなど肝を冷やすシーンが続く。それでも前半は無失点で切り抜け、後半に突入した。

 ハーフタイムで引き気味のDFラインを修正した愛媛は、後半の立ち上がり、ラインを押し上げ、FWリカルド・ロボを楔にしてポストプレーでチャンスを演出する。「大宮相手にやれなくもない」と石丸監督も手応えを感じていた。

 ところが、試合の流れはひとつのミスで一変する。中盤で安易にボールを失い、FW富山貴光にペナルティエリア内へ侵入を許す。GK児玉剛は身を挺して止めにかかるが、相手を倒し、判定はPK。これを富山に右足でゴールに沈められ、試合は1−1の振り出しに戻った。

「1本のPKで状況が変わった」
 渋谷監督が振り返ったように、J1クラブは勝負どころを逃さない。その5分後、たたみかけるように大宮が勝ち越し点を奪った。右サイドからのクロスに富山がヒールで合わせ、ゴール前のMF橋本晃司が左足でゴールネットを揺らす。1−2。愛媛は短時間で劣勢に立たされた。

 まずは追いつきたい愛媛はFW西田剛を投入。ロボや河原にボールを集めて局面の打開を図る。だが、「崩せるチャンスはあったが、そこからの質が足りない」と石丸監督が指摘した通り、愛媛は肝心な部分での精度を欠く。バイタルエリアには入りながら、そこからゴール前で決定的なシーンをつくれない。42分には河原がゴール前ではたいて、右サイドのロボにボールを渡すが、そのシュートはゴールマウスをとらえきれなかった。

 J1相手ではあったが、川崎戦とは異なり、防戦一方の展開でもなかった。それだけにリーグ戦から3試合連続で先制弾を勝利につなげられなかった事実がチームに重くのしかかる。指揮官は「1点獲った後に、もう1点獲るメンタリティがなかったのが残念」と課題をあげ、先制弾の河原も「2点目を獲る部分で、大宮のほうが試合巧者だった」と唇をかんだ。鋭い突破で大宮陣内を何度も切り裂いた堀米も「もうちょっとできた、できなきゃいけない」と悔しがった。

 浦和レッズ、横浜FCとJ1勢(当時)を下してベスト8に進出した2007年の再現とはいかず、これで今季の愛媛に残されたのは、リーグ戦の12試合のみだ。J1昇格プレーオフ進出圏内の6位以内に入るには厳しい状況だが、川崎、大宮とJ1クラブとマッチアップした経験をムダにはできない。

「この負けを、ただの負けで終わらせてはいけない」
 前を向いた河原の言葉をチーム全体で共有し、ピッチで結果として表現できるか。真価の問われる秋がやってくる。

<両チームメンバー>
愛媛FC
GK  1 児玉剛
DF 28 ハン・ヒフン → 6 三原向平(80分)
   3 代健司
  23 林堂眞
    4 西岡大輝 
   17 キム・ミンジェ 
MF  5 渡邉一仁
   16 江口直生 → FW 18 西田剛(74分)
   14 堀米勇輝 
FW 11 リカルド・ロボ
   20 河原和寿 → MF 22 近藤貫太(88分)

大宮アルディージャ
GK 31 清水慶記
DF 27 今井智基
    3 福田俊介 → 29 藤井悠太(84分)
  18 横山知伸
   24 高瀬優孝 
MF  4 橋本晃司
    5 カルリーニョス → 13 趙源煕(88分)
   22 和田拓也
   41 家長昭博
FW 28 富山貴光 → MF 39 泉澤仁(76分)
   32 長谷川悠