(写真:大会2連覇を果たした桃田。優勝インタビューでは感極まる場面も)

 28日、バドミントンのBWFワールドツアー「ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2019」各種目決勝が東京・武蔵野の森総合スポーツブラザで行われた。男子シングルスは桃田賢斗(NTT東日本)がヨナタン・クリスティ(インドネシア)をストレートで下し、大会2連覇を達成した。女子シングルスは奥原希望(太陽ホールディングス)との日本人対決を制した山口茜(再春館製薬所)が6年ぶり2度目の優勝。女子ダブルスは永原和可那&松本麻佑組(北都銀行)がキム・ソヨン&コン・ヒヨン組(韓国)にストレート負けを喫し、初優勝はならなかった。男子ダブルスはマルクス・フェルナルディ・ギデオン&ケビン・サンジャヤ・スカムルヨ組(インドネシア)が、混合ダブルスはワン・イルユ&ファン・ドンピン組(中国)が制した。

 

 狙って取った初の連覇

 

 東京五輪のプレイベントとなった今大会は6日間で過去最多の計3万人以上の観客を集めた。最終日には5種目中3種目で日本勢が登場。男子シングルスの桃田は現在世界ランキング1位、第1シードとして大会連覇という期待に応えた。

 

(写真:桃田<上>は持ち前の正確なショットで主導権を握り、若いクリスティを振り切った)

 同種目のジャパンオープン連覇は2012年から3連覇したリー・チョンウェイ(マレーシア)以来だ。アーディー・B・ウィラナタ(インドネシア)、ピーター・ゲード(デンマーク)、リン・ダン(中国)というレジェンドたちに続いてみせた。

 

 決勝の対戦相手クリスティは世界ランキング7位。昨年のアジア競技大会金メダリストだ。桃田は「昨日まですごくいいパフォーマンスを見せていた。一方で自分は疲労が溜まっていて不安だった」と試合前の気持ちを振り返る。

 

 桃田は第1ゲームから優位に試合運んだ。「イメージではどんどん攻めてくると思っていた」。繊細なラケットワークで着々と得点を重ねた。2-5から5連続、8-8から4連続ポイントと要所要所で相手を突き放す。第1ゲーム終盤には2度の3連続ポイントを挙げるなど21-16で先取した。

 

 第2ゲームは得意のヘアピンショット(ネット際ギリギリに落とすショット)に加え、強烈なスマッシュをコートに叩き込む。「相手が攻撃を仕掛けてくる姿勢が見えたので、ガツンと一発食らわせた」。9-8の場面でクロスへスマッシュを決める。ここから一気に畳み掛けた桃田が21-13で危なげなくストレート勝ちを収めた。

 

「モモタは頭の良い選手」とクリスティは脱帽。対策を練ってきたというが、桃田は動じなかった。「1ゲーム前半で相手が打ってきても取れる感覚があった。要所ではヘアピンを使い、ネット前に切り込むことができた」。桃田は“らしさ”を遺憾なく発揮した。

 

(写真:勝利が決まった瞬間、噛み締めるようにガッツポーズ)

 先週のインドネシアオープンでは2回戦戦敗退。「大きな大会で力が入ってしまい、空回りした。先週で自信がなくなっていた。これで自信を取り戻すことができた」とジャパンオープン制覇を喜んだ。ワールドツアーの大会連覇は自身初。「昨年は勢いのまま優勝できた。今年は第1シードで相手も挑んでくる。その勢いにのまれず、はね返すことができた」と語った。

 

 東京五輪と同会場である武蔵の森総合スポーツプラザ。この会場で負け知らずで、1年後を迎えることとなった。「このままではオリンピックに勝てない。もっとレベルアップしなければいけない」。周囲の期待は大きいが、冷静に足元を見つめている。

 

 五輪会場で見せたライバル対決

 

(写真:レベルの高いラリーに会場を沸かせた山口<上>と奥原)

 前日の試合後に奥原が「互いに手の内は知っている。我慢比べになる」と語っていた日本女子シングルスのエース対決は、山口に軍配が上がった。世界ランキングは山口が2位で、奥原が3位。世界のトップを競う2人の戦いに会場も大いに沸いた。

 

 序盤は奥原がリードする展開だったが、中盤以降に得点を続けた山口が第1ゲームを制す。ラリー戦になることは互いに想定内。「出だしからラリーばかり。そこで気持ちを切らさず、我慢してスピードを上げられたのが良かった」と山口は言う。

 

 8-9から7連続ポイントで引き離したのが大きかった。序盤は「無理にスピードを上げていった」という山口だが、「チャンスを見てスピードを上げることができた」と攻めどころを間違えなかった。

 

 第2ゲームも最初にリードを奪ったのは奥原。しかし山口は最後まで主導権は握らせなかった。「ミスの仕方が悪かった」と、奥原はショットが安定せずアウトになる場面も目立った。最後は15-15から山口が6連続ポイントで試合を決めた。

 

(写真:笑顔で表彰台に上がった2人。1年後も同じ舞台で実現するのか)

 山口は6年ぶりのジャパンオープン制覇だ。当時は高校1年生。現在は22歳になった。「精神的な部分で変わった。(初優勝時は)何も分からず思い切りやっていた。今はプレッシャーなどいろいろなことを感じるようになりました」。勢いだけではなく実力で掴んだ勝利との自負があるのだろう。

 

 先週のインドネシアオープンに続き、ワールドツアー連続優勝となった。山口は「初めての経験なので達成感があります」と胸を張る。「1戦1戦、1大会1大会頑張っていきたい」と、クールな22歳は浮かれることなく先を見つめる。

 

 東京五輪の会場で日本人対決の決勝となったことについて、山口は「“今日が1年後だったらいいのに”と思いました。1年あればまだまだ成長できる。高いレベルで再現できればベスト」と口にした。

 

 山口vs.奥原。ジュニア時代から凌ぎを削ってきたライバルは、東京五輪でもメダル争いを展開しそうだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)