猫ひろし(タレント、マラソン選手)「東京五輪で“テング”になる!?」
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二宮清純: アスリートが語るテングジャーキー、今回のゲストはリオデジャネイロ五輪男子マラソン、カンボジア代表の猫ひろしさんです。よろしくお願いします。
猫ひろし: よろしくお願いします。
二宮: 株式会社鈴商のイチオシ商品「テングビーフステーキジャーキー」を食べながら、カンボジアでの食生活やマラソンのトレーニングについてうかがいます。
猫: カンボジアにもビーフジャーキーはありますが、水牛の肉を使っているんです。
二宮: 水牛の肉? どんな特徴が?
猫: 日本のビーフジャーキーより肉厚で硬いかなぁ、という印象です。
二宮: へぇ、そうなんですか。では、さっそく「レギュラー」タイプからどうぞ。
猫: いただきます。噛み応えがあってうまい! 子供の頃から「テングビーフステーキジャーキー」を知っていますが、今も昔も美味しいですねぇ。
二宮: 100%赤身ももステーキ肉を使っているからでしょうねぇ、牛肉の旨味も凝縮されているし。ちなみに、小さい頃からよく食べていた?
猫: 父のつまみをもらっていたんです。父は普段、酒のつまみにピーナッツを食べていましたが、給料日やボーナスが入った時だけはビーフジャーキーを食べていた。それを僕が“つまみ食い”していたんです。子供の頃はビーフジャーキーが牛肉からできているとは知らなかったなぁ。
二宮: なんの肉だと思っていたんですか?
猫: パッケージのインパクトが強烈すぎて、本気でテング(天狗)の肉だと思い込んでいました(笑)。それにしてもこんなにフレーバーの種類があるなんて、知りませんでしたよ。
二宮: では、他のフレーバーもどうぞ。
猫: カンボジアは黒コショウが有名だから「ホット」タイプが気になります。おぉ、このピリ辛味はコショウが効いていて、お酒が飲みたくなりますね。
二宮: 普段はお酒は?
猫: 翌日のトレーニングに響くので今は控えています。レースの出場が決まると「そこに向けて頑張ろう」と思うので、さらにお酒を飲まなくなってしまいますが「ホット」タイプを食べた瞬間、少しだけ飲みたくなっちゃいました(笑)。
二宮: アハハハ。カンボジアの食生活には慣れましたか?
猫: 向こうも主食は米なんです。カンボジアに帰化した2011年当初、匂いが気になりましたがすぐに慣れました。しかも、近年、グンと美味しくなった気がします。
二宮: 現地には日本食レストランも増えたみたいですね。
猫: えぇ。最近は大手牛丼チェーン店もできて、助かっています。米が主食といいましたが、フランスの植民地だったこともあり、カンボジアはパンも美味しい。だから、食の面で、そう苦労はありません。
二宮: 一方で気をつけていることは?
猫: やはり、水ですね。生水は飲まないし、氷も口にしないように細心の注意を払っています。それに加えて肉や魚はもちろん、野菜も生では食べないようにしています。
二宮: アスリートにとって大切なたんぱく質は何で摂取していますか。
猫: カンボジアの川魚は美味しいし、地鶏も美味しいです。一羽丸々、味付けして焼いたものが600円から700円くらいで売っているんです。
二宮: 日本に比べたら相当物価が安いんですね。
猫: 体づくりへの投資は安上りで助かっています。だけど、カンボジアで行われるレースに向けて調整している時は日本食レストランに行きます。慣れている食べ物の方がストレスなく調整できますからね。
ノルマは1日30キロ
二宮: 1年のうち、カンボジアにはどれくらいいるんですか?
猫: トータルすると3ケ月くらいでしょうか。と言うのも、今年に入って日本の永住権を取得できたので、カンボジア国籍の私は、随分と生活しやすくなりました。
二宮: 走るのは朝ですか?
猫: いえいえ。分割して走ることもありますよ。今日はこのインタビュー前に12キロ走ってきました。残りの18キロをこの取材後に走れば1日のノルマ達成です。
二宮: 今年で42歳。体力の衰えは感じませんか?
猫: 若い頃より疲労が抜けにくくなりました。マラソンを始めた30歳の頃は仕事終わりの深夜0時から40キロ、走っていました。でも、さすがにできなくなりましたね。今は睡眠、トレーニング、食事のバランスを大事にしています。
二宮: 睡眠時間はどれくらい?
猫: 最低でも6時間は寝るようにしています。6時間でも体がキツい時があるので7時間から8時間くらいが本当は理想ですね。それでも疲れが溜まっていると感じたら、高酸素カプセルに入ります。ぐっすり眠れるし、疲れがとれます。
二宮: 年齢を重ねると体のケアも重要になってきますからね。トレーニングメニューの構成担当は日本のコーチですか?
猫: はい。カンボジアでトレーニングをする時も日本で作成したメニューをこなしています。カンボジアの選手には「ネコと同じメニューをオレにもやらせてくれ」と言われることもありますね。
二宮: トレーニングに関しては日本の方がはるかに進んでいるでしょうね。
猫: そうなんです。「こうした方がもっと効率的だよ」と僕がトレーニングメニューを作ってあげることもありますよ。
ヒヤヒヤの高地トレーニング
二宮: カンボジアでの高地トレーニングは?
猫: カンボジアには1000メートル程度の山しかなくて、できないんです。それでも、僕が帰化したばかりの時に1度、山でトレーニングを行いました。他の選手たちが帰りの車中で「あー、良かった、良かった」と言っていた。気になって「どうしたの?」と質問したらトレーニング後に驚愕の事実を聞かされました。
二宮: 気になりますね。
猫: 「あの山は夜になると野生のトラが出るから遭遇しなくて良かった」って(笑)。
二宮: アハハハ。そんな危ない環境でトレーニングをしていたとは!
猫: 「走る前に教えてよ!」とツッコミました(笑)。スタッフには「こんな山、危ないでしょう」と伝えたんです。だけど「人間がトラを怖がるように、トラも人間を怖がっているはずだから大丈夫だ」と……。
二宮: 無事だったから良かったものの襲われていたら大変です。
猫: 見出しは「猫、トラに噛まれる」でしょうか(笑)。
二宮: アハハハ。猫さんはリオデジャネイロ五輪のマラソンをカンボジア代表選手として走りました。
猫: レース当日は大雨。湿度も高く、とてもしんどかった。2時間45分55秒とタイムは良くなかったのですがゴールした時の歓声は忘れられません。
二宮: 猫さんはヨルダンの選手とデッドヒートを繰り広げていましたね。
猫: ゴール付近で「カンボジアのクニアキ・タキザキ選手とヨルダンのメスカル・アブ・ドライス選手が熾烈な下位争いを演じています!」とMCが実況したらしい(笑)。ラスト350メートルの直線での「ウォォォォ!」という大歓声は嬉しかったですね。
二宮: オリンピックに出たことで、カンボジアでの知名度は高くなったでしょう。
猫: それがカンボジアでは全く。日本で練習をしていると「猫だ!」と声をかけてもらえるんですが……。リオデジャネイロ五輪後、カンボジアのサウナ店員がミネラルウォーターを一本、無料にしてくれたくらいかな。カンボジアではサッカーやキックボクシングは人気ですが、マラソンはまだまだなんです。
二宮: カンボジアのサッカーといえば現在、元日本代表の本田圭佑さんがカンボジア代表の実質的監督を務めていますね。
猫: 新聞で本田圭佑さんがよく取り上げられています。僕に関しては猫の「ね」の字もありません。
目標は東京五輪出場!
二宮: カンボジアの五輪代表選手なのに(笑)。さて、東京五輪まで1年を切りました。
猫: 全く考えられなかったのですが、もう1年を切ったのでやはり出場したい。今はカンボジア人ですが、元々は日本人ですからね。
二宮: カンボジア代表の選考は?
猫: すでに始まっています。8月にカンボジアで開催されたレースで優勝したんです。この実績に加えて、シーゲームズと呼ばれる東南アジア競技大会でメダルを獲得すれば出場権はほぼ確実に手にできると思います。
二宮: 東京のコースを走る猫さんを見たい方も多いでしょう。そろそろお時間ですが、せっかくなら「50%減塩」タイプ、「激辛」タイプもいかがでしょうか?
猫: いただきます。「50%減塩」タイプは牛肉の旨味がダイレクトに伝わってきて、美味しいですね。「激辛」タイプはそんなに辛いですか? ちょうどいい辛さだと思います。
二宮: 人によってはすぐに水を欲しがりますけど。猫さんは辛い物が得意なんでしょうか?
猫: カンボジア料理はタイ料理ほど辛くないですし、特別、辛さに強いわけでもないんですが。ん……、あっ! 辛っ! 時間差でこんなに辛味が来るんですね。びっくりした(笑)。でも、これはやみつきになりそう!
二宮: アハハハ、水でもどうぞ。
猫: ありがとうございます。このテングジャーキーは、脂質が少なくてたんぱく質は豊富ですし、トレーニングで汗を大量にかくので塩分補給にもってこいの食品ですね! 東京五輪で無事にゴールした暁には「猫、“テング”になる」なんてのもいいですね(笑)。調子に乗れるくらいの良いタイムでフィニッシュできるよう、頑張ります!
<猫ひろし(ねこひろし)プロフィール>
1977年8月8日、千葉県出身。目白大学4年時にハチミツ二郎(東京ダイナマイト)主宰のお笑い集団に入る。2001年3月にデビュー。03年4月、WAHAHA本舗に入る。初マラソンは08年の東京マラソン、3時間48分で完走。11年にカンボジアに帰化。16年、リオデジャネイロ五輪男子マラソンの代表選手に選出される。記録は2時間45分55秒の139位、五輪初出場で初完走を果たした。自己ベストは15年の東京マラソンで記録した2時間27分48秒。身長147センチ。
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(構成/大木雄貴、写真/杉浦泰介)