(写真:快進撃が続くジャパン。ファンも新たな“奇蹟”を望む Photo by Clive Rose-World Rugby via Getty Images)

 熱戦が続くラグビーW杯日本大会。9月20日に開幕し、10月13日でプール戦を終えた。ベスト8は日本(ジャパン)、アイルランド、ニュージーランド、南アフリカ、イングランド、フランス、ウェールズ、オーストラリア。準々決勝は19日と20日に大分と東京で行われる。

 

 優勝候補同士の好カードが目白押しだ。19日はプールC1位のイングランドとプールD2位のオーストラリア、プールB1位のニュージーランドとプールA2位のアイルランドが対戦する。

 

 注目は2連覇中のオールブラックスことニュージーランドだ。プール戦3勝1分けでトップ通過を果たした。1分けも台風19号の影響で試合が中止となったからだ。11年、15年大会は無敗で駆け上がった王国に隙は見当たらない。初戦はスプリングボクスこと南アフリカに快勝すると、カナダには63-0で完封勝ち。ナミビアには序盤は苦しんだものの、終わってみれば11トライを奪い、71-9で圧勝した。

 

 SOリッチー・モウンガ、FBボーデン・バレットの“W司令塔”が攻撃陣をリードする。正確なパスを供給するSHアーロン・スミスとの創造性豊かなアタックは必見である。プール戦では22トライを15人で奪った。オールブラックスという愛称は“オールバックス”の誤植から生まれたと言われるように、どこからでもトライを奪える分厚い攻撃で観衆を魅了する。

 

(写真:どこからでもトライを奪えるオールブラックスの強み Photo by David Ramos-World Rugby via Getty Images)

 攻撃面ばかりに目を奪われがちだが堅い守備も王国を支えている。プール戦3試合で相手に与えたトライはわずかに1。難攻不落の黒い城壁が侵入を許さない。LOブロディー・レタリック、No.8キーラン・リードらが世界最高峰の砦がブレイクダウンの攻防で力を発揮する。総合力の高さもオールブラックスが王国たる所以である。

 

 対するアイルランドは2018年のベストチーム。SOジョナサン・セクストン、SHコナー・マレーのハーフ団はオールブラックスにも勝るとも劣らない。強固なFW陣を軸に堅実なラグビーを展開する。2017年にオールブラックスに初白星を挙げると、翌年はホームで勝利。直近の3試合は2勝1敗と勝ち越している。W杯の最高成績はベスト8。オールブラックスを破り、歴史を塗り替えられるか。

 

 20日開催はプールD1位のウェールズvs.プールC2位のフランス、プールA1位のジャパンvs.プールB2位のスプリングボクス。日本のファンのみならず、ジャパンの快進撃がどこまで続くか注目度は高い。

 

 2015年W杯イングランド大会、今年9月6日のテストマッチに続く3度目の対戦。対戦成績こそ五分だが、実績には雲泥の差がある。ジャパンが全9大会に出場し、今回が初の決勝トーナメント進出であるのに対し、スプリングボクスは出場7大会全てでベスト8以上に入っている。優勝回数はオールブラックスに次ぐ2回だ。

 

“ブライトンの奇蹟”と呼ばれた前回大会に続き、ジャイアントキリングを起こしたいジャパン。この試合のキーポイントは3つ。セットプレー、キック、WTBである。

 

(写真:強力なFW陣を擁する南アフリカ。フィジカル勝負を仕掛けてくる)

 まずはセットプレー。スプリングボクスはスクラム、ラインアウトの強さが世界屈指と言われている。今回の試合ではリザーブに8人中6人がFW登録。フィジカルバトルを仕掛けてくることが予想される。ジャパンも長谷川慎コーチの指導の下、安定したスクラムをつくりあげてきた。今大会の躍進を支えている。アイルランド、スコットランドという強豪相手にも十分通用したスクラムで打ち負かすことがあれば、勢いに乗れる。

 

 2m以上の長身選手を擁するスプリングボクスはラインアウトも武器だ。プール戦でのマイボールラインアウト成功率は100%。ジャパンは少しでもプレッシャーをかけ、攻撃へのリズムを崩したいところだ。相手のストロングポイントを封じられれば、ジャパンの勝機が見えてくる。

 

 キックはスプリングボクスにはSOハンドレ・ポラードという名手がいるため、ジャパンは自陣でのペナルティーにも気を付けたい。ポラードは距離をものともしないキック力、角度がなくても決められる正確性を持ち合わせている。PGはもちろんのこと、インプレー中でも隙を見せればDGを狙われる。

 

 ジャパンSO田村優のキックに期待したい。彼のコンバージョンキックの正確性が勝敗のカギを握ると言っても過言ではない。加えてアタックにおいて相手のスペースを突くキックパスで相手守備陣を混乱に陥れたい。

 

(写真:9月のテストマッチで南アフリカからトライを奪った松島。ラインブレイクに期待が集まる)

 WTBには攻守に渡る活躍が求められる。スターティングメンバーに名を連ねたのはジャパンが福岡堅樹と松島幸太朗、スプリングボクスがマカゾレ・マピンピとチェスリン・コルビだ。ここまで福岡は4トライ、松島が5トライとトライ王を狙える位置に付けている。プール戦同様にフィニッシャーとして期待がかかる。

 

 一方、スプリングボクスの両翼も破壊力抜群だ。マピンピは3トライ、コルビは2トライと数ではジャパンに劣るが、9月のテストマッチでも2人の突破力がジャパンの脅威になっていた。2人合わせて5トライ。何度もゲインラインを切られた。タッチラインでの攻防も見逃せない。

 

(文/杉浦泰介)