2020年の東京パラリンピックから正式競技となるパラバドミントン。選手の多くが世界ランキング上位に名を連ねる日本代表の活躍に期待が集まる。国内の競技統括団体である日本障がい者バドミントン連盟は2015年に設立された。競技の振興と普及に取り組む平野一美理事長にパラスポーツの現状、そして今後の展望を訊いた。

 

二宮清純: 今回はパラバドミントン専用体育館のヒューリック西葛西体育館でお話を伺っております。不動産賃貸業のヒューリックは介護福祉士養成支援制度を立ち上げるなど社会貢献に尽力しています。こちらはユニバーサルデザインになっており、素晴らしい施設ですね。

平野一美: ありがとうございます。この施設はヒューリック社とオフィシャルゴールドパートナー契約を結び、無料貸与していただいています。元々、私たちは選手たちの練習環境を何としてでもつくらなければいけないと考えており、24時間365日使用できる体育館を探していました。スポンサーだったヒューリック社のご好意により、2年前から使わせていただいています。パラバドミントン専用コートに改修し、そのランニングコストもすべてお願いしています。

 

伊藤数子: コートが8面もあるバドミントン専用の練習場は、他でもあまり聞いたことがありません。

平野: そうですね。実業団リーグでも専用の体育館を持っていないチームがほとんどです。パラスポーツ団体の中でも充実した専用練習場だと思います。ただ海外では当たり前です。だから私としては、“やっと海外と同じになった”という感覚の方が強い。

 

二宮: とはいえ、これだけ充実した施設があるのは、他競技の団体からすればうらやましいでしょうね。

平野: ここができてから選手強化を計画的に実施できるようになりました。私たちにとっては本当にありがたい存在です。強化選手であれば、事前申請すれば、この体育館を自由に使えます。パラバドミントン専用のNTC(ナショナルトレーニングセンター)と考えていただければ分かりやすい。以前は年間3回ほどだった強化合宿が、この体育館が使用できるようになってから年間14回も行えるようになりました。

 

 10年の長期契約

 

二宮: ちなみにヒューリックとの契約期間は?

平野: 昨年10年契約を結びました。最初は単年契約を結び、更新していたんです。2020年の東京パラリンピックまでという企業も少なくない中、思い切って「10年でどうですか?」と提案してみました。ヒューリック社には、それを快く受け入れていただきました。

 

伊藤: それは素晴らしい。ヒューリック社との元々のご縁は?

平野: 2015年に当連盟を設立し、福岡に構える自宅を事務所にしていました。東京での仕事が増えきたタイミングでオープンした日本財団パラリンピックサポートセンターの共同オフィスに入居しました。その時にヒューリック社から「パラスポーツ団体の支援をしたい」という要請があり、私たちも手を挙げたんです。その後、ヒアリング等があり、いくつかの候補の中から私たちを選んでいただきました。

 

二宮: そもそも平野さんがパラバドミントンと関わるようになったきっかけは?

平野: 元々、私は福岡県バドミントン協会の理事を務めており、当時は指導者を指導するようなポジションでした。障がい者スポーツ指導員の資格を取得したことで、パラバドミントンの団体から指導の依頼がくるようになりました。その流れで福岡にパラバドミントンのチームを持つようになったんです。 2012年には車椅子バドミントンのコーチとしてアジア選手権にも帯同しました。暫くして国内競技統括団体が解散することになり、新たな組織を立ち上げる必要が出てきた。私は代表選手や日本パラリンピック委員会との繋がりもありましたので、急遽、新団体を立ち上げることになったんです。それが2015年4月に設立した日本障がい者バドミントン連盟です。

 

伊藤: 連盟設立から4年半以上が経ちました。

平野: ほとんど何もない状況からスタートしましたが、この4年半で宝くじに当たったくらい大きく変わりました。まず練習場を持つことなんて、望んではいましたが現実になるとは思ってもみませんでした。選手たちが置かれていた状況も一変しました。パラリンピックに出るために競技を始め、続けてきたわけではない選手もいます。選手も私も気が付いたら、最高のステージを与えられていたというのが正直なところです。

 

(後編につづく)

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平野一美(ひらの・かずみ)プロフィール>

一般社団法人日本障がい者バドミントン連盟理事長。NPO法人日本バドミントン指導者連盟理事。1961年2月10日、熊本県出身。高校からバドミントンを始める。長崎日本大学附属高等学校、久留米大学卒業。2009年より障がい者バドミントンの指導に携わる。2015年4月、日本障がい者バドミントン連盟設立、理事長就任。公益財団法人日本スポーツ協会上級コーチ、公益財団法人日本障がい者スポーツコーチの資格を持つ。


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