(写真:決勝進出が決まり、喜ぶ永原<手前>と松本)

 30日、第73回全日本総合バドミントン選手権大会各種目準決勝が東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館で行われた。BWF世界ランキングベスト5に3組が入る女子ダブルスは、リオデジャネイロオリンピック金メダルの髙橋礼華&松友美佐紀組(日本ユニシス)が世界選手権2連覇中の永原和可那&松本麻佑組(北都銀行)にストレートで敗れた。昨年優勝の福島由紀&廣田彩花組(アメリカンべイプ岐阜)は志田千陽&松山奈未組(再春館製薬所)をフルゲームの末、破った。決勝は世界選手権決勝と同一カードとなった。

 

 そのほか男子シングルスは大会連覇の懸かる桃田賢斗(NTT東日本)が決勝進出。2年連続で西本拳太(トナミ運輸)と対戦する。女子シングルスは2連覇中の山口茜(再春館製薬所)が大堀彩(トナミ運輸)に敗れた。大堀は初優勝を目指し、2度の優勝を誇る奥原希望(太陽ホールディングス)と戦う。

 

 金メダリスト対決は世界選手権2連覇中の永原&松本ペアに軍配が上がった。永原&松本は初の決勝進出。敗れた“タカマツ”ペアは5大会連続の決勝、3年ぶり6度目の優勝はならなかった。

 

 第1ゲームは170cmを超える永原&松本ペアの強打に押され、11-21で落とした。第2ゲームは連続得点でリードする展開。先にゲームポイントを奪ったものの、逆転を許した。20-22でストレート負け。髙橋は「相手が前にきているのに対し、いるところに(シャトルを)落としてしまったのが敗因」と肩を落とした。

 

 今大会が最後の全日本総合になるかもしれない。

「最初に優勝した時は自分たちがナショナルに入ったばかりで年齢も実力も一番下だった。“先輩たちに勝って優勝したい”という気持ちでずっとやってきました。それが追われる立場になり、オリンピックで金メダルを獲って、気持ちが段々上がらなかった……。自分の中ではオリンピックよりも総合で初めて優勝した時の方が人生の中で忘れられない試合。この大会で自分たちは成長させてもらったと思います」

 髙橋は涙ながらに語った。

 

 1歳下の後輩・松友と聖ウルスラ学院英智高校時代からペアを組んできた。リオデジャネイロオリンピックでの金メダルをはじめ、2人で手にしてきたメダルの数は少なくない。

「いろいろな経験を総合でさせてもらった。高校生の頃から2人で出ている。10年以上、2人で来ました。そんなペアは他にはいないと思う。全日本総合の大会でベスト4以上にこんなに入ったペアもいない」

 松友も感慨深げに振り返った。

 

 連覇を狙う東京オリンピック出場にも黄信号が灯っている。オリンピックレースはBWF世界ランキングを基にしたランキングで上位8位以内に入れば、出場権を獲得できる。しかし、それは1カ国最大2組まで。現状は“タカマツ”ペアの上には永原&松本ペア、福島&廣田ペアがいる。“タカマツ”ペアは今年、獲得ポイントの大きいワールドツアーファイナルズ出場を逃しており、さらにその差を広げられる可能性もあるからだ。

 

「出られる出られないは別として最後までケガなく戦っていきたい。最終的に(ランキング)4位以内にいて、出られなかったらしょうがない。オリンピックで金メダルを獲ることができましたし、そこは胸を張って、“いいバドミントン人生だった”と思えるように(オリンピックレースの)4月末まで頑張っていきたい」(髙橋)

 先輩の後に松友は続けた。「最後は2人で後悔しないように」。向かっていく時の彼女たちは強い。リオデジャネイロオリンピックをはじめ、過去に何度もあったケースだ。

 

 大会2連覇中の福島&廣田ペアは、先週の韓国マスターズを制して勢いに乗る志田&松山ペアと対戦した。福島と廣田にすれば移籍前の元後輩。福島は「勢いがある中で、しっかり強いペアにも勝っている。自分たちも向かっていく気持ちで戦った」と話した。「何度もやっているので相手の得意とするスピード勝負に付き合わないように心掛けました」と廣田。一方、志田は「スピードを出すプレーをさせてくれなかった」と悔しがった。

 

 第1ゲームは21-17で福島&廣田ペア。第2ゲームは躍動感溢れるプレーで志田&松山ペアが21-16で取り返した。「相手の動きが見えてきて、自分たちから仕掛けてしてしまった。シンプルにできていなかった分、簡単にミスをしていた。そこをファイナルゲームでしっかりやろう、と戦いました」(廣田)。ファイナルゲームまでもつれた試合は21-14で先輩ペアが制した。志田は「全体的なベースが高い。攻めていても攻めさせられている気持ちになった」と振り返った。

 

 決勝はオリンピックレースでもライバルとなる永原&松本ペアと対決する。「世界選手権で負けているので、相手の強打をどうしていくかを考えながら試合ができればいいなと思います」と福島。特別意識はないと言うが、世界選手権決勝で2年連続負けている相手だ。今大会はオリンピックレースのポイントには加算されないものの、リベンジの機会を窺っているはずだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)