(写真:11年の授賞式に参加して以来、「取りたかった」という勲章を手にした鈴木)

 16日、日本陸上競技連盟(JAAF)は「JAAF ATHLETICS AWARD 2019」を都内ホテルで開催した。年間最優秀選手賞にあたる「アスリート・オブ・ザ・イヤー」に世界陸上競技選手権ドーハ大会の男子50km競歩で金メダルを獲得した鈴木雄介(富士通)が輝いた。優秀選手賞には世界陸上のメダリストが続いた。男子競歩20km金メダルの山西利和(愛知製鋼)と4×100mリレー銅メダルメンバー。IAAFインドアツアーで日本人初の総合優勝に輝いた走り高跳びの戸邉直人(JAL)も優秀選手賞に選ばれた。特別賞には4月に逝去した長距離界の名伯楽・小出義雄氏が選出された。

 

 東京運動記者クラブ選出の新人賞は男子走り幅跳びで日本記録を27年ぶりに塗り替えた城山正太郎(ゼンリン)、世界陸上の女子5000m決勝で日本歴代2位のタイムをマークした田中希実(豊田自動織機TC)が受賞。JAAF選出は男子50km競歩で日本記録を更新した川野将虎(東洋大学)、世界陸上女子20Km競歩7位入賞の藤井菜々子(エディオン)が受賞した。

 

(写真:会場の通路には表彰された選手たちの写真が飾られた)

 今年の“日本陸上の顔”は鈴木に決まった。男子競歩20km世界記録保持者は、4月の日本選手権で50km日本記録(当時)をマークし、ドーハ行きの切符を手にした。9月の世界陸上では気温30度、湿度70%を超える過酷なサバイバルレースを制した。

 

「アスリート・オブ・ザ・イヤー」は初の受賞だ。鈴木はその喜びをスピーチした。

「2011年に初めて授賞式に出席し、当時は室伏広治さんが受賞されました。その後も私がもらえるチャンスは何回かありましたが、その度に先輩方に阻まれ、悔しい思いをしてきました。今は1人でも多くの後輩が私の姿を見て、そう思ってくれればいい。しかし、この場を明け渡す気はありません。私は皆さんの壁となる。私を蹴落とすぐらいの気持ちで競技をしてほしい」

 

(写真:時折、笑顔を見せながら受賞の喜びを語る鈴木)

 鈴木は2015年に世界記録を塗り替えた後、ケガに苦しんだ。2年半以上公式戦から離れ、「真っ暗闇で行くあてもなくさ迷った」という。灯りを照らしてくれたのはコーチ、スタッフ、関係者のサポートだった。「自分以上に私の復帰を信じてくれた」。周囲に背中を押され、諦めずに努力を続けたことが復活の道を切り拓いた。

 

 世界陸上優勝により東京オリンピックに内定した。コースは東京から札幌に変更となったが鈴木は「決まった会場で力を出しきるだけ」と金メダルへの道筋はブレない。「日本代表3人で金銀銅を狙い、表彰台を独占し、日本競歩の強さを見せつけたい」と力強く語った。

 

(文・写真/杉浦泰介)