8日、東京オリンピックの代表選考を兼ねた名古屋ウィメンズマラソン2020がナゴヤドームを発着点に行われた。一山麻緒(ワコール)が大会新の2時間20分29秒で優勝。1月の大阪国際女子マラソンで松田瑞生(ダイハツ)が記録した2時間21分47秒を上回り、MGCファイナルチャレンジ最速タイムをマークした。これにより一山が東京オリンピック代表に内定した。

 

 雨にも負けず、誰にも負けず、フィニッシュテープを切った。初マラソンから約1年、同じ雨のロードを駆け抜けた一山が東京オリンピックの代表権を射止めてみせた。

 

 昨年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で前田穂南(ダイハツ)と鈴木亜由子(日本郵政グループ)が東京オリンピック内定を決めた。残る1枠を巡る争いがMGCファイナルチャレンジ。MGC3位の小原怜(天満屋)が暫定トップに立ち、2時間22分22秒の設定タイムを破り、最速のタイムを叩き出した者が出場権を手にすることができる。

 

 対象レースは19年12月のさいたま国際マラソンを皮切りに、20年1月の大阪国際女子マラソン、そして今回の名古屋ウィメンズマラソン。大阪で松田が日本歴代6位の2時間21分47秒を記録し、暫定トップに立っていた。名古屋にはこの記録を上回る日本歴代4位の2時間21分36秒の自己ベストを持つ安藤友香(ワコール)、トラックを含め4大会連続オリンピック出場の福士加代子(ワコール)がエントリーした。

 

 2時間21分47秒が指標となるレース。MGCは6位に終わったものの、序盤から積極的な走りを見せた一山の評価は高かった。安藤、福士、岩出玲亜(アンダーアーマー)らと共に有力候補に挙げられていた。

 

 雨の降りしきる名古屋。決してコンディションは良くなかったが、入りの5kmは16分41秒と2時間20分台のペースでスタートした。先頭集団から徐々に海外勢を含め有力選手が脱落していく。岩出、福士も離されていく中、一山と安藤、そして初マラソンの佐藤早也伽(積水化学)が奮闘する。

 

 ペースメーカーの離れる30kmを過ぎてからレースは動いた。ここで仕掛けたのが、一山だ。30kmから35kmまでのラップは16分14秒とペースアップし、後続を引き離した。一山の力強い走りは最後まで衰えることなく2時間20分29秒で大会記録を更新。目標の2時間21分47秒を破るタイムは、日本歴代4位、そして国内でマークした日本人最高記録となった。

 

 雨の中の決戦を制し、東京オリンピック代表を手繰り寄せた。「こういう日だからこそ、決めたらカッコいいなと思っていました」と一山。「世界と戦うにはまだまだ記録で劣っている。オリンピックに向けてもう一段階質の高い練習をし、日本代表としてカッコいい走りができたらいいです」。22歳のニューヒロインは笑顔を輝かせた。

 

(文/杉浦泰介)