清家陸は一般推薦で八幡浜高校に入学した。清家の父・真二も同校陸上部で青春時代を過ごした。親子揃って倉田茂監督のもとで鍛えられたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 清家は中学時代、県大会でも長距離で上位に入る実力の持ち主だった。自信はあった。しかし、入学して心が折られてしまう。入学早々、1000mのトライアルをすることになった。そこで無名の選手にも負けてしまったのだ。清家は「自分は県でも上位に入っていたこともあり、プライドがあったので、悔しかった。今でも覚えています」と、表情を曇らせながら振り返った。

 

 八幡浜高校の陸上部のレベルは高く、入学当初は練習についていけない日々が続いた。

「全国のインターハイで入賞する先輩が多くいました。常に全国を目指し、全国大会に出場することが当たり前の世界に飛び込んでしまった。衝撃を受けました。僕も全国に行きたいと思ってはいましたが、先輩方の意識の高さを目の当たりし、“自分はやっていけるのか……”と不安になりました」

 

 練習でもおいていかれ、先輩たちの背中を目で追うことしかできない。しかし、清家はここでふてくされなかった。陸上部の朝練習は7時から開始される。6時過ぎには学校へ行き、近くの千丈川沿いを走った。3㎞から5㎞の自主練習を始めたのだ。

 

 徐々にだが自主練習が実を結ぶ。梅雨が明け、夏を迎える頃には先輩においていかれることはなくなった。そして、秋に行われる四国高校駅伝で唯一、1年生ながらメンバー入りを果たした。

 

「ずっと負けっぱなしだったので、嬉しかったです。最初は同期にも負けていたくらいですから」と清家。この年の全国高校駅伝は、記念大会のため、各地区代表にも出場権が与えられる。四国高校駅伝で、各県予選優勝校を除く最上位1校は、四国地区代表枠として、全国高校駅伝へ出場することができたのだ。八幡浜高校は、全体3位でフィニッシュ。四国地区代表枠を勝ち取り、全国へ駒を進めた。清家は6区(5㎞)を任され、15分10秒、区間順位2位と貢献した。

 

 親子二人三脚

 

 迎えた12月の全国大会。八幡浜高校と清家にとってほろ苦いものとなった。59校中58位。清家は4区(8.0875㎞)を24分58秒で走り、区間順位は46位だった。悔しい敗戦を喫した清家は、この経験から学びを得る。

 

「全国レベルの選手は駆け引きがすごくうまかった。このままでは、対応できないと思いました。スピードはない、体格的にもフィジカル勝負は難しい。でも、頭を使って走れば勝てる、と感じました」。今のスタイルに通ずる駆け引きの重要性に気付いたのだ。

 

 そこからは親子二人三脚だった。ランナーだった父親の経験に基づくアドバイスが背中を押した。父親は清家のレースを動画で撮影し、息子に見せた。

 

 父・真二はこう語った。

「レースを見ながら、“ここがスパートのタイミングだった”など、ペースをあげるタイミングの話をよくしました。スピードがないから、ラスト100mでは勝てない。しっかりとペースを刻んで走ることができるので、どこで相手を振り切るかが勝負になる。そういう戦術面の話をすることが増えました」

 

 清家は「中学時代に駆け引きの話をされても、わからなかったと思います。走って速ければという感じでした」と話す。ペースの上げ下げで結果を出すことに楽しさを見出し始めた。

 

 1年生で駅伝を走った清家は、次の目標を夏のインターハイに定めた。5000mで全国大会出場を目指す。そのために駆け引きを覚える必要があった。さらにベースアップをはかるため、早朝の自主練習は続けた。2016年、6月に行われた四国インターハイ。清家は15分1秒36の4位でゴールした。個人種目では初の全国大会を決めた。

 

「2年生の時のレベルなら14分50秒から15分くらいでゴールできればと思っていました。あとは、もうレース展開、という感じでした。全国を決めて、倉田監督がすごく喜んでくれたのがとても印象に残っていますね。レース後に2人で抱き合い、監督も僕も泣きながら喜びました」

 

 頭を使った走りを覚えた清家は、ここからさらに洗練されたランナーへと成長していくのだった。

 

(最終回につづく)

 

<清家陸(せいけ・りく)プロフィール>

2000年3月15日、愛媛県西予市生まれ。小学6年時、自身で早朝にマラソンの練習をしたことがきっかけで長距離に興味を持つ。中学から陸上部に所属する。2015年、愛媛県立八幡浜高校に入学。徐々に頭角を現し、中心選手となる。2018年、法政大学陸上部に入学。2019年度の3大駅伝(全日本、出雲、箱根)を走った。身長163センチ、体重49キロ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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