新型コロナウイルスの感染拡大の影響でSTANDが主催する体験会やイベントも中止や延期になっています。いつもイベントにご協力いただいている各地の総合型地域スポーツクラブも現在活動休止中です。「クラブは今どうしているのだろう」と現況を聞いてみました。


 総合型地域スポーツクラブとは全国に3500余りあり、スポーツ庁はこう定義づけています。 
<総合型地域スポーツクラブは、人々が、身近な地域でスポ-ツに親しむことのできる新しいタイプのスポーツクラブで、子供から高齢者まで(多世代)、様々なスポーツを愛好する人々が(多種目)、初心者からトップレベルまで、それぞれの志向・レベルに合わせて参加できる(多志向)、という特徴を持ち、地域住民により自主的・主体的に運営されるスポーツクラブです。>(スポーツ庁WEBサイトより)

 

 まずは体育館の指定管理もしているクラブの様子です。室内外の施設はすべて閉鎖になり、活動は一切できない状況です。スタッフは交代制の2人勤務で、施設や周囲の点検、キャンセルや問い合わせなどの電話対応をしています。スタッフの方はこうおっしゃいました。

 

「シーンとしていて、まるで違う風景です。ここにいたたくさんの人たちはどうしているんだろう。どこかで運動できているんだろうか。改めてスポーツは人が集まることなんだと思いました。シーンとした施設にぽつんといると、いつも来てくれる人たちの顔が浮かびます」

 

 もうひとつのスポーツクラブではこんな話が出ました。

 

 2020大会の後、盛り上がった地域スポーツの火を消してはいけないと思いながら……、今年は開催年の機運が高まっていて、イベントや事前キャンプの選手団への協力など、クラブとしても必死に応えようとしていました。でも、今振り返ると周囲に振り回されていた部分もあり、焦りもあったと言います。

 

 21年以降の構想も曖昧で気になっていましたが、目の前のことで精いっぱい。広域で組織しているクラブの横の連携を使って、将来に向けてやりたかったこともありました。「焦らずに大会後のことをしっかり計画する時間ができたと思うことにします」と現在の活動休止の状況を前向きに捉えるようにしていると話してくれました。

 

 その他、いくつかの総合型地域スポーツクラブに話を伺いましたが、子供から高齢者、障害のある人など、クラブで一緒にスポーツをしていた地域の様々な人のことが気になるという話がとても多い印象でした。

 

 ここ数年、STANDが各地で開催するイベントやセミナーは、いつも地域のクラブとがっちり組んで進めてきました。クラブとご一緒すると、地域の他の活動団体、商店街、企業、学校、自治体、そして個人など、実に様々な人とつながっていくからです。

 

 クラブの方々は地域のことを良く知っているので、たとえば車いすバスケのイベントを開催するときには「ミニバスのクラブがあるからそこに声をかけたら子どもたちが喜ぶ」など、的確な動きができます。この多くの人や組織とつながっていくことこそが、まさに「総合型」と感じていました。

 

 総合型地域スポーツクラブの総合とは、定義では「多世代、多種目、多志向」と個人に焦点を当てています。私は「総合型」にはもう一つの意味があると考えています。スポーツをキーにして地域の人が総合的に集まり、つながり、活動を行うという「総合型」です。実際に多くのクラブはそれを実践しています。現在の状況が収束した後、「総合」のちからを発揮する総合型地域スポーツクラブが地域で担う役割はさらに大きくなると確信しています。

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

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