ウィズコロナの状況下、パラスポーツ体験会の再開は未だ見通しがたちません。密を避けた新しいかたちで開催できないものか、と模索と実験を繰り返す日々です。そんな中、ある日のリモートミーティングで「e-sportsの体験会はどうでしょう?」と話をしたら、「それ、ゲームでしょ」とバッサリ。「いえ、それだけではなくて……」と、しっかり説得できるほどの力が私にはまだありません。


 そこで、ゲームの思い出。まずはインベーダーゲームです。高校生の頃、地元の数件の喫茶店に設置されていましたが、お小遣いも少なく、数回プレイしたのみでした。どうすればいいかよくわからないうちに終わったものです。友人が話題にしていた「名古屋撃ち」などの言葉は、意味も分からずに憧れていました。

 

 大学生になると研究室にファミコンが設置されていました。いつもスーパーマリオブラザーズの「タッタッタタラララララ」の音が研究室に流れていました。テレビに本体をつないで、そこにカセットを差し込む。たまに画面が乱れると、カセットを抜き取り、パンパンパンと叩いて、差込口を思いきり「フーッ、フーッ」と吹いて再度差し込む。不思議とそれで毎回、きちんと動きました。

 

 研究室でみんながコントローラーを取り合うようにしてよくやっていましたが、私はやはり2、3回プレイしただけ。

 

 その後、グッと時代は進んでWiiと出会いました。「これは身体を動かすゲームだから、私好きかも!」と購入。取り扱い説明書には「Wiiリモコンを持つときには必ずストラップを手首に通して」と書いてありました。「身体を激しく動かすからなんだな」と期待が膨らみました。マリオが立体になったようなゲーム、それからテニスやゴルフなどいろいろありました。でも、なぜかあまりプレイする頻度が上がりません。友人たちが遊びに来て、かなり盛り上がったりしましたが、私が盛り上がらない。しばらくして実家に帰省した折に、Wiiのことを話すと当時小学生だった甥にねだられ、あっさり手放しました。

 

 さて、ここ数年、e-sportsは様々な企業が参画する新しい市場となりました。また障害のある人もない人も、どこにいても同じルールで参加できるユニバーサルなスポーツという重要な側面もあります。新型コロナウイルスの影響で集まることが困難な今のような状況でも、オンラインで対戦できたり、リモートでのイベントもできます。これからの体験会にはぜひ取り入れたいと思うようになりました。

 

 というわけで、いつまでも「苦手。きらい。ムリ!」と言っているわけにもいかない、と思っていた矢先、ePARA実行委員会代表の加藤大貴さんにインタビューの機会をいただきました。(~出番、居場所、役割を創るeスポーツ~https://www.challengers.tv/seijun/2020/06/6216.html

(写真:「SEGAぷよぷよeスポーツ」公式サイトより)

 

 e-sportsが障害のある人の雇用につながり、社会と関わるきっかけとなるなんて、思いもよりませんでした。これは本当に素晴らしいことです。e-sportsの世界には何かがあるに違いない。覗いてみるしかない。「e-sportsのこと、よくわからないんですよね~」とぐずぐずしていた一歩を、いまこそ踏み出そう! もちろん、やってみるのが一番。話が長くなりましたが、そういうわけでついに私は「ぷよぷよ」を購入したのです。つづく。

 

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

◎バックナンバーはこちらから