(外出する機会が減り、スポーツでつながる友人と近況を話し合った。<写真はイメージ>)

 新型コロナウイルスで外出も人と話す機会も激減したこの夏、スポーツでつながる友人と近況を話しました。ひとりはゴルフのレッスンに通っている友人。10名くらいのグループレッスンで、練習場で一列に並んで打っているところにレッスンプロの先生が回ってきてアドバイスをする。そのレッスンでこんな光景を目にしたそうです。

 

 座って休憩していると、隣の打席から女性が話しかけてきました。「私、他の曜日のレッスンにしようかな」「午後のコースは暑いかな」「日曜日は用事があってダメなの」と、とりとめのない話ばかり。しばらく観察していると、その女性は休憩している人を見つけては話しかけに行くんだそうです。

 

 私が「その人は練習しているの?」と聞くと、「練習は本当に少しだけ。先生が回ってきそうなときだけ」と友人。お喋りと、少しだけの練習ですが、毎週レッスンに通っているんだそうです。その女性はウエアはばっちりキマッテいる、と友人は付け加えました。

 

 カープ女子の私ですが、今年はスタジアムに行けません。5000人という狭き門を突破した広島在住の友人に、「スタジアムの様子を細かく見てきて」と依頼しました。

 

 大声での声援や鳴り物が規制されていて客席からの音がないので、これまで聞こえなかった音が聞こえるそうです。ピッチャーの雄叫び、ミットに収まるボールの音、バットの折れた音。ときにはデッドボールが当たる音も。

 

 一方、観客席の様子はどうなのでしょう。友人の席の回りにはなかなか個性的な観客がいたそうです。

 

<男性の1人客。席につくと乾き物のおつまみでビールをグビグビ。そしてスマホをずっと見ている。そのうちに席を立ち、うどんを持って戻ってくる。食べ終わると通路を挟んで隣の男性と談笑。どうやら知り合いの様子。ビールのおかわりをしながら、ずっと2人で話しをしている。向かい合って喋っているから試合は見ていない。知り合いの男性が席を立ったら、また視線はスマホへ。そして再び立ち上がったらしばら

 

(写真:コロナ禍で試合を行うマツダスタジアムの客席の様子)

く戻ってこない。と、思っていたら、ショップのお買い物袋を持って戻ってきた。その後は隣の男性が持ってきている紙パックの焼酎をごちそうになって、ずっと談笑。だんだん盛り上がっていく。とても、楽しそうだ。>

 

 友人の報告はまだ続きます。
<次は年配のご夫婦。2人ともスマホのゲームに熱中していて、グラウンドを見ていない。次に妻は孫の写真をスマホで見ている。そしてLINEで誰かとチャット中。それが終わると、バッグからカラアゲと水筒を出して、夫にカラアゲを勧める。次にポテトチップスが出てきて、2人で食べる。その間に夫はビールを購入。妻は今度はカバンの中身の整理を始め、夫はずっとスマホでゲーム。妻のカバンからはワンタン揚げが登場し、2人で美味しそうにたいらげる。すると今度はタオルを出し、さらにスプレーを出して、マスクにプシュー。ウェットティッシュでウデや首などを拭き、ようやくカンフーバットという応援グッズを取り出して、周りに合わせて極めて小さく叩く。そんな小さいと応援にならないのに……。その応援グッズも攻撃の最中にもかかわらず、3分ほどで片付ける。大事なところなのにやめちゃうんだ。腰をひねってストレッチをして、そのうちどこかへ。そしてショップの袋を手にして戻ってきた。お買い物の時間は長い。>

 

 この試合、カープが勝ちました。その後の友人の報告です。
<通路を挟んで談笑していた2人の男性は8回くらいでご機嫌な笑顔で帰っていった。ご夫婦は試合後に大きく拍手をして帰り支度。「よかったね~」と喜び合って、スマホでLINE。写真を添付していたから、多分誰かに勝利の報告を送っていたのであろう。>

 

 さて、2人の友人が観察してくれた方々。最初の女性はほとんどゴルフの練習をしていないし、スタジアムの男性やご夫婦も、ほとんどカープの試合を見ていません。でもその場所にやってきて、笑顔で楽しく過ごしています。

 

 練習場では練習すべき。スタジアムでは試合を見るべき。と考えるのは固定概念に縛られている証拠ですね。ちょっと恥ずかしくなりました。いろんな人が自分の好きなように楽しむのがスポーツの良いところだと教えてもらいました。しかも、いろいろなものがオンラインにシフトしているこのご時世、ゴルフ練習場やスタジアムという"現場"の魅力は、やはり大きいことも。友人から聞いた話だけでスポーツを考える在宅ワークのコロナの夏。さて、次回こそはいよいよeスポーツ「ぷよぷよ」続編です。

 

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

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