（写真：連覇を目指すビックカメラ高崎の上野＜左＞と岩渕監督）

　今週末に後半開幕節を迎える日本女子ソフトボールリーグは４日、オンラインで記者会見を開催した。今季は新型コロナウイルス感染拡大により、前半戦が中止。レギュラーシズンは総当たり11試合のみの実施となった。会見には前年優勝のビックカメラ高崎BEE QUEENの岩渕有美監督、上野由岐子らが出席し、今季の抱負を語った。

 

　約５カ月遅れの開幕だ。今季のリーグは３月開幕予定で、オリンピックイヤーに華を添えるはずだった。しかし新型コロナの影響を受け、東京オリンピックの１年延期と日本リーグ前半戦の中止を余儀なくされた。９月５日から10月22日までの10節（各チーム総当たり11試合）で順位を決める。例年は上位４チームだった決勝トーナメント進出の椅子は、１チーム拡大され５位までとなった。

 

　連覇を目指すビックカメラ高崎のエース上野は「“やっと試合ができる”という喜びが大きいです」と胸の内を明かす。

「いち選手として待ちに待った開幕です。試合をしてパフォーマンスをたくさんの人に見てもらうことが自分たちの仕事のひとつ。そういった環境をつくってもらい『うれしい』の一言です」

　太陽誘電ソルフィーユと日本代表で投打の“二刀流”として活躍が期待される藤田倭は「やっとソフトボールができることに感謝をしています」と言い、こう続けた。

「明日、最高のプレーを見せられるように準備をしてきた」

 

（写真：「新しく加えた変化球がどのくらい通用するのか試したい」と語った上野）

　近年、日本リーグはビックカメラ高崎とトヨタ自動車レッドテリアーズが王座を分け合ってきた。今季も初戦からその２強がぶつかり合う。昨年の開幕節では、ビックカメラ高崎がトヨタ自動車に延長８回タイブレーカーの末、２－１で競り勝った。

「ずっと紙一重の戦いをしてきている。期間が空いた状態での初戦になるので、しっかり勢いをつけたい。11試合の中の１試合として戦っていきたい」（岩渕監督）

「先制点がどちらに入るかで、試合の流れも展開も変わってくる。そこが大きなポイントになるんじゃないかと思っています」（上野）

 

　前身も含めれば12度のリーグ優勝を誇るが、ビックカメラに移管してからは連覇がない。岩渕監督は「目指すところは頂点ですが、連覇よりは、11試合しかないので一戦一戦をしっかり戦っていく。何かミスが起きても切り替えることが大事になってくる」と語った。

　２度のリーグ連覇を経験している上野はこう抱負を述べた。

「11試合しかないからこそ全部勝つつもり。自分たちにプレッシャーをしっかりかけながら戦っていければいい。その中でいかに結果を残していくか。いち選手としてのスキルが試される」

 

　昨季は上野をシーズン序盤にケガで欠く苦しい展開も、終わってみればリーグ１位で決勝トーナメントに進出し、王座を奪還した。若手の勝俣美咲は７勝をあげ、新人賞を獲得するなど上野不在の時期、チームを支えた。新キャプテンに日本代表の内藤実穂が就任。昨季の主力打者は残留し、総合力は変わらず高い。キャプテンの重責から解き放たれたキャッチャーの我妻悠香には、バットでの活躍にも期待がかかる。今季も優勝候補の筆頭にいる。

 

　トヨタ自動車は昨季リーグ戦で総得点、チーム打率、チーム防御率でトップの成績を残しながら４位と苦しんだ。決勝トーナメントでは３位決定戦でビックカメラ高崎に敗れ、連覇を逃した。今季の打線はアメリカ代表のアリー・アギュラー、元日本代表の坂元令奈が抜けたが、日本代表の山崎早紀、元日本代表の長﨑望未、昨季首位打者＆新人賞の石川恭子らを擁し、依然としてタレントは豊富である。

 

（写真：高卒１年目の昨季は１勝。飛躍が期待される後藤）

　一方で、投手陣には不安材料も。コロナ禍の影響でエースのモニカ・アボットが開幕に間に合わないからだ。日本代表にも名を連ねる若手サウスポーの後藤希友が「５人のピッチャーで勢いをつけられるように頑張っていきたいです」と口にするように、エース不在の時期をどう乗り切るかが今季のカギを握りそうだ。

 

　ドカベンスタジアムの愛称で知られる大和スタジアムを舞台に戦いの火ぶたは切られる。昨季準優勝のHonda Revertaのように旋風を巻き起こすチームは現れるのか。異例のシーズンがいよいよ開幕する。

 

（文／杉浦泰介、写真／公益財団法人日本ソフトボール協会）

 

【第53回日本女子ソフトボールリーグ後半開幕節】

・９月５日（土）

第１試合　10：30～　シオノギ製薬ポポンギャルズvs.デンソーブライトペガサス

第２試合　13：00～　太陽誘電ソルフィーユvs.豊田自動織機シャイニングベガ

第３試合　15：30～　Honda Reverta vs.日立サンディーバ

・９月６日（日）

第１試合10：30～　SGホールディングスギャラクシースターズvs.戸田中央総合病院メディックス

第２試合13：00～　トヨタ自動車レッドテリアーズvs.ビックカメラ高崎BEE QUEEN

第３試合15：30～　伊予銀行VERTZ vs.日本精工Brave Bearies

 

※場所はいずれも神奈川・大和スタジアム。トヨタ自動車レッドテリアーズvs.ビックカメラ高崎BEE QUEENをBS11では６日（日）19時から、日テレジータスは８日（火）22時から放送予定。