現地時間3日、水泳の世界選手権11日目がロシア・カザンで行われ、競泳女子200メートル個人メドレー決勝で渡部香生子(JSS立石)が2分8秒45の日本新記録をマークし、2位に入った。渡部は世界選手権自身初のメダルを獲得した。優勝はカティンカ・ホッスー(ハンガリー)で、2分6秒12の世界記録を更新した。女子100メートルバタフライ決勝は、サラ・ショーストレム(スウェーデン)が55秒64で制し、自身が準決勝で叩き出した世界記録を更に上回った。女子1500メートル自由形予選では、ケイティ・レデッキー(米国)が15分27秒71の世界新記録をマークした。
 2年前の世界選手権で流した悔し涙が、この日嬉し涙に変わった。トビウオジャパンのメダル第1号は女子の新エース渡部がもたらした。

 女子200メートル個人メドレーで今シーズン世界ランキング3位の渡部は、前日の準決勝で日本新をマークし、全体3位で決勝進出していた。この日の決勝は女子100メートル平泳ぎの予選、準決勝を泳ぎ、3レース目。タフな戦いが強いられる。渡部はスタート台に立つ前、そして立ってからも大きく息を吐く。初めての世界選手権決勝の舞台。プレッシャーを吹き飛ばそうと努めているように映った。

 スタートの号砲が鳴り、勢い良く飛び出したのは、今シーズン世界ランク1位のホッスー。前回のバルセロナ大会でこの種目を含め、個人メドレー2冠の強者だ。シボーン・マリー・オコーナー(米国)とともにアリアナ・クーカーズ(米国)が2009年のローマ大会で出した世界記録を上回るペースで泳いだ。一方、渡部は第1泳法のバタフライで28秒73で5番手、第2泳法の背泳ぎでは33秒57で8番手。自身の持つ日本記録を上回るペースだったが、折り返し地点での1分2秒30は、首位と3秒以上差の最下位となった。ホッスーは依然、世界記録ペースのまま、独泳状態に入っていた。

 残り100メートルとなっての第3泳法は渡部得意の平泳ぎ。ここで驚異的な追い上げを開始する。36秒04は全体トップ。一気に5番手に浮上すると、ラストの自由形でも30秒11で前を追う。1人、2人とかわしていき、ついに表彰台圏内に入った。世界記録をマークし、優勝したホッスーには追いつけなかったものの、ゴール手前で2番手のオコーナーをとらえると、2分8秒45でフィニッシュ。準決勝で更新した日本記録をさらに1秒16も縮めてみせた。「まさか2番とは、タイムにもびっくりしています」と自身で驚くほどの快泳だった。

 渡部は中学生で出場した12年のロンドン五輪、2年前の世界選手権ではファイナルへの進出すら叶わなかった。世界の壁に跳ね返され、苦汁をなめてきた。そこから竹村吉昭コーチの指導の下、肉体的にも精神的にも逞しさを徐々に身に付けていく。昨年は3日間で計17レースとハードなスケジュールを経験。日本選手権では3冠を達成し、アジア競技大会では5個のメダルを手にした。今年の日本選手権では昨年を上回る4冠。女子13年ぶりの快挙を成し遂げた。

 世界選手権で初のメダルは、今大会日本人第1号。「この波に乗って、明日も頑張りたい」。渡部は女子100メートル平泳ぎでも、決勝進出を決めており、2種目目のメダルを目指す。

 主な決勝結果は次の通り。

<女子100メートルバタフライ決勝>
1位 サラ・ショーストレム(スウェーデン) 55秒64 ※世界新
2位 ヤネッテ・オッテセン(デンマーク) 57秒05
3位 ルー・イン(中国) 57秒48
※星奈津美(ミズノ)は準決勝敗退

<女子200メートル個人メドレー決勝>
1位 カティンカ・ホッスー(ハンガリー) 2分6秒12 ※世界新
2位 渡部香生子(JSS立石) 2分8秒45 ※日本新
3位 シボーン・マリー・オコーナー(米国) 2分8秒77

(文/杉浦泰介)