新型コロナウイルスの“第4波”が襲ってきている今、東京オリンピックが予定どおり開催できるかどうかはいまだ不透明のままである。とはいえ本番に向けてしっかり準備をしておかなくてはならない。

 

 オーバーエイジ(OA)は一体、誰に。

 東京五輪に出場するU-24日本代表のOA候補として一部で吉田麻也(サンプドリア)、大迫勇也(ブレーメン)が「確実」と報じられた。2人の名前は以前からメディアでも挙がっており、そう驚くことでもない。

 

 A代表のキャプテンとエースが参加できれば、言うことはない。ただ所属クラブに派遣義務が発生しないため、そこがクリアにならなければ呼びたくても呼べない。日本サッカー協会はこれまでOA候補について具体的な名前を出しておらず、人選と交渉を慎重に進めているものと推察できる。

 

 気になるのは吉田、大迫の招集に成功したとして「3枠目」を使うかどうか。森保一監督は金メダルを目標に掲げていることからも、基本的には使うとみている。今の充実ぶりを考えると、個人的にはA代表の柱になりつつある遠藤航(シュツットガルト)を推したい。

 

 U-24代表のボランチは激戦区であり、重要ポイントでもある。

 先日、南米予選を1位突破したU-24アルゼンチン代表との2連戦は、初戦にキャプテンの中山雄太(ズヴォレ)、渡辺皓太(横浜F・マリノス)、2戦目に板倉滉(フローニンゲン)、田中碧(川崎フロンターレ)を先発させた。ケガで途中離脱した田中駿汰(北海道コンサドーレ札幌)もいる。

 

 評価を上げたのは板倉&田中碧のフロンターレ育成組織出身コンビである。スムーズな関係性で3-0の快勝劇に貢献した。中盤のバトルで優位に立ったことが大きな勝因だった。

 

 この世代のボランチ勢の成長は著しい。さりとて彼らが冨安健洋(ボローニャ)のようにA代表でレギュラーの座をつかめているわけではないという現実もある。センターラインの軸として強力な一枚は欲しいところ。シュツットガルトやA代表での存在感ぶりを見ても、遠藤が加わってくればかなり厚みが出てくる。

 

 遠藤はとにかくプレーに小休止がない。“しつこく、しぶとく”の一手先にあるチャンスメークのつなぎまでが連続技になっている。ピンチの芽をつぶし、逆に自分たちのチャンスの芽を生み出すタフガイである。

 

 そしてセットプレーにすこぶる強い。2月27日のシャルケ戦ではコーナーキックをファーサイドで構えて2ゴールを挙げている(2アシストも記録)。先の韓国戦でも、コーナーキックをヘディングで合わせてトドメの3点目をマークしている。久保建英(ヘタフェ)という精度の高いキッカーもいる。ここに一枚、ファーに強い遠藤が入ってくれば心強い。

 

 遠藤を推す理由はほかにもある。

 ひとつはU-24メンバーに年齢が近いこと。もし吉田、大迫がOAに選ばれれば、吉田は32歳、大迫も5月で31歳と年がかなり離れてしまう。できればもう1人は、その間の世代を入れたい。遠藤も2月で28歳となり、若手とは言えないが、いいつなぎ役になってくれるのではないだろうか。リオデジャネイロ五輪ではキャプテンを務めており、吉田とともに五輪の戦いをよく知っている選手が束ねる立場で2人いるというのも大きい。

 

 そしてもうひとつは、ユーティリティーであること。五輪は18人しか登録できないため、複数ポジションをこなせるのが理想。U-24代表は3バック、4バックいずれも使っており、遠藤はボランチ、サイドバック、ストッパーと高いレベルでこなせるのも魅力的である。

 

 また、東京五輪の先にカタールワールドカップがあることを考えても、遠藤と一緒にプレーすることはプラスになる。遠藤とコンビを組んで結果を示していけばA代表でも踏襲される可能性も出てくるからだ。

 

 6月には親善試合2試合を予定しており、OA枠がここから参加することも十分に考えられる。森保一監督が最終的にチョイスするのは誰か。その答えはもう間もなくだ。


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