さて「eスポーツを知る」を標榜して、かれこれ4カ月、あつ森(あつまれどうぶつの森)を続けています。


 そんな中、引き続き抱いている疑問があります。「あつ森はスポーツか(eスポーツか)」についてです。分解すると「eスポーツはスポーツか」、「あつ森はeスポーツか」そして「あつ森はスポーツか」という疑問です。難しそうです。そもそもスポーツとは、と掘り下げていくと諸説あり、話が難しくなることは必至です。そこで、まずは「スポーツってなんですか?」といろんな人に聞いてみようと思い立ちました。それにあつ森を当てはめて考えてみてはどうだろうか、というわけです。

 

 では、早速、いろんな人の「スポーツとは」を紹介しましょう。

 

●「スポーツとは身体を動かすこと。そして、練習してうまくなる楽しさや人と交流する楽しさが大切。健康にもいい。あつ森に当てはめてみると、『人と交流できる』『魚釣りがうまくなるのが楽しい』はスポーツに当てはまるのではないかと思う」(40代・会社員)

 

●「諸説あるようですが、スポーツの語源の本来の意味から『気分を転じさせる』『気を晴らす』といった精神的な『移動』や転換に変化し、その後『義務からの気分転換・元気の回復』が一義的な意味になったという説が有力です。で、勝手な解釈でスポーツ≒気分転換とすれば、あつ森もeスポーツです」(50代・介護職員)

 

●「スポーツは、基本身体を動かすこと。指先だけだからeスポーツはスポーツとは言えない」(30代・会社員)

 

●「最初はできないことがあって、鍛錬を積むことでできるようになる。うまくなる。それがスポーツ。だからeスポーツはスポーツ」(20代・学生)

 

●「囲碁将棋はスポーツ。しかしゲームはプログラムである。プログラムは人がつくったもの。したがって、いくら頑張っても人がつくったその中での展開にしかならない。翻って、スポーツ、囲碁将棋は人の手によって無限に対戦がつくり出されていく。大きな違いがある。だからゲームはスポーツとは言えない」(60代・会社役員)

 

●「ウォーキングはスポーツ? 散歩は? その境目はなに? と同じなのではないか。境目をつくる必要がそもそもない」(40代・会社員)

 

●「スポーツだと思ってやっている人にとってはスポーツで、そうでない人にとってはそうではないんですよ、多分。草野球をスポーツとしてやっている人もいれば、遊びとしてやっている人もいるわけですから」(50代・会社員)

 

●「寝たきりの人が目だけでオンラインでボッチャをやったら、それはスポーツか、という話に近いと思うのですが、スポーツという言葉を、それぞれの人がどう解釈しているのかによるのではないでしょうか。どの解釈が正しい、という答えもないでしょうし……」(40代・会社役員)

 

●「運転免許が取れなくて車に乗れない人がeスポーツのドライビングゲームなら乗ることができる。eスポーツはいろんな可能性が広がっている。障害のある人など誰でもできることが素晴らしい」(20代・アルバイト)

 

●「スポーツは身体の汗、eスポーツは脳の汗をかく。そしてどちらも心の汗をかく。スポーツである」(70代・会社役員)

 

●「桃太郎伝説はeラーニングでもある。都道府県はあれで覚えた(お~~~)」(40代・会社役員)

 

 やはり我以外皆我師。何事も人に聞いてみるものです。多くの視点からの意見をいただき、目からうろこが落ちる思いです。

 

 昨年、コロナ自粛が始まったころ、それまで行われていたスポーツとは、「集まって、密になって、大きな声を出してやること」だったと急に気づきました。スポーツというのはコロナ禍になんとも弱いものだと……。

 

(写真:えちごや@筆者のスポーツ部屋。©Nintendo)

 しかし一方で、この1年、いろいろな場面でスポーツを広義にとらえる傾向があると感じています。私がeスポーツへ関心を持ったことも然りです。自粛の期間が、スポーツの定義や、スポーツに対して持つイメージや解釈をさらに広げてくれるのではないかと感じています。もっともっと多様な人が、多様な感覚で"スポーツ"に関心を寄せていくのに、自粛の今は好機かもしれません。さて、あなたにとって「スポーツ」とは、どんなものですか? さらに考えを進めるための妙案、私は"自宅"にスポーツ部屋を設置しました(写真)。

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

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