24日、東京オリンピックの選考会を兼ねた第105回日本陸上競技選手権大会初日が大阪・ヤンマースタジアム長居で行われた。注目を集めた男子100mは日本記録保持者の山縣亮太(セイコー)のほか、9秒台の自己ベストを持つ桐生祥秀(日本生命)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)、小池祐貴(住友電工)が順当に決勝に進出。リオデジャネイロオリンピック男子4×100mリレー銀メダリストのケンブリッジ飛鳥(Nike)は準決勝で敗れた。男子高跳びは戸邉直人(JAL)が2m30を記録し、2年ぶり4度目の優勝を果たした。

 

 46人がエントリーした男子100mは過去最速レベルのスプリンターたちが顔を揃えた。

 

 今月日本記録を塗り替えた山縣が9秒95、前日本記録保持者のサニブラウンは9秒97、桐生と小池が9秒98と自己ベスト9秒台が4人。参加標準記録(10秒05)突破者は、10秒01の多田修平(住友電工)を加えた5人。この5人は3位以内に入れば、東京オリンピックの切符を手にできる。さらには自己ベスト10秒03のケンブリッジもおり、日本歴代トップ10の記録を持つ者は6人も出場した。

 

 午後3時半過ぎにスタートした予選は7組に分かれ、有力選手は各組に散った。山縣、多田、小池、ケンブリッジ、サニブラウン、桐生が1着で、順当に準決勝にコマを進めた。山縣は安定した走りで10秒27と危なげなかった。アキレス腱痛を抱える桐生は予選トップの10秒12をマークしたが、レース後に顔をしかめ、不安をのぞかせた。

 

 予選から約4時間後、準決勝は行われた。3組に分かれ、決勝への8枠を争う。各組上位2人が自動通過。残りの2枠がタイムで拾われる。第1組は山縣とサニブラウンが同組。10秒16の山縣、10秒22の栁田大輝(東京農大二高)に次いで、サニブラウンが入った。「30mで足がつった」というサニブラウンは10秒30で後続の結果を待つことになった。

 

 第2組は今年自己ベストをマークした多田が好調をアピール。得意のスタートで飛び出すと、10秒17でデーデー・ブルーノ(東海大)らに先着した。第3組は桐生、小池、ケンブリッジが同組。この組は10秒28の桐生、10秒30の小池がワンツー。3着には東田旺洋(栃木県スポーツ協会)が10秒35で入り、ケンブリッジは10秒44で5着に終わった。

 

 山縣、栁田、多田、ブルーノ、桐生、小池に加え、サニブラウンと東田がタイムで決勝にコマを進めた。2018年以来3度目の優勝を狙う山縣は予選からタイムを上げ、安定した走りを披露した。「今日持った良いイメージと課題を、最後1本まとめ上げられればいい」。勝負強さにも定評がある29歳。今大会の本命は揺るぎない。

 

 山縣と同じ3度目の優勝を目指す前年王者の桐生は「歩いていても痛い」と依然としてアキレス腱痛の不安を拭えない。「明日は1本。今日よりは思い切っていける」と連覇を諦めない。17、19年に200mとの二冠を達成しているサニブラウンも今年2大会目とあってか、まだ本調子ではないように映る。対抗馬は多田と小池か。

 

 16年の選手権覇者ケンブリッジはここで姿を消した。「予選、準決勝といいところがなく終わってしまった」と肩を落とした。実力者が決勝を逃した一方で栁田という新生も現れた。準決勝で叩き出した10秒22は日本高校歴代2位タイ。サニブラウンが城西大城西高時代にマークした記録に並んだ。「決勝で準決勝以上の走りを」。17歳の若武者は意気込んだ。

 

(文/杉浦泰介)