2日、第98回東京箱根間往復大学駅伝競走が東京・大手町から神奈川・芦ノ湖までの往路5区間(107.5km)で行われ、青山学院大が5時間22分6秒で制した。2位に帝京大が2分37秒差で、3位には昨年総合優勝の駒澤大学が3分28秒差で入った。

 

 往路の順位は以下の通り。

 

(1)青山学院大(2)帝京大(3)駒澤大(4)國學院大(5)順天堂大(6)中央大(7)東京国際大(8)創価大(9)東洋大(10)東海大(11)早稲田大(12)神奈川大(13)法政大(14)国士舘大(※)関東学生連合(15)山梨学院大(16)日本体育大(17)明治大(18)中央学院大(19)専修大(20)駿河台大

 

※OP参加のため順位なし

 

 エントリー16名全員が1万m自己ベスト28分台という青学大が、総合力の高さを見せつけた。区間賞はひとりもいないが、1区から5位、7位、2位、3位、3位と安定した走り。中でも3区の太田蒼生、5区の若林宏樹といったルーキーの活躍が光った。

 

 昨年は選手たちが牽制し合った結果、1km3分33秒と超スローペースでスタートした1区。今年は2分50秒と速いペースで展開した。集団を引っ張ったのが中央大学の吉居大和(2年)だ。3kmから4kmと4kmから5kmはいずれも2分50秒を切るペースで、早々に縦長の集団から抜け出す。5.6kmを過ぎたあたりから独走状態に。吉居はそのまま影を踏ませぬ走りで駆け抜けた。2007年に佐藤悠基(当時・東海大学2年)がマークした区間記録を27秒更新する1時間0分39秒で鶴見中継所に到達した。

 

 駒大は39秒差で2位、青学大は45秒差で5位と優勝候補も射程圏で襷を繋げた。一方、昨年総合3位の東洋大学が12位、往路を制した創価大学が15位、1万m27分台の自己ベストを持つ井川龍人(3年)起用の早稲田大学は16位と、往路優勝も狙えると目されていた有力校は出遅れた。酒井俊幸監督、榎木和貴監督、相楽豊監督にとっては大きな誤算となった。

 

“花の2区”には各校が順当にエースを投入した。ここでトップに立ったのは駒大。39秒差で襷を受けた田澤廉(3年)が7kmを過ぎたあたりで中大の手島駿(4年)を抜き去った。昨年12月に1万mで日本歴代2位の記録をマークした“日本学生最速”の男が、その実力を遺憾なく発揮した。「自分が1秒でも早く後続の選手に襷を渡すつもりだった」と田澤。東京国際大学のイェゴン・ヴィンセント(3年)が昨年マークした区間記録(1時間5分49秒)には届かなったものの、1時間6分13秒の好タイムで襷を繋いだ。

 

 そのほか各校のエースたちもひと仕事。青学大の近藤幸太郎(3年)は5位から2位、国士舘大学のライモイ・ヴィンセント(4年)は10位から3位、東国大のY・ヴィンセントは7位から4位、創価大のフィリップ・ムルワ(3年)は15位から6位、山梨学院大学のポール・オニエゴ(4年)が14位から7位、東洋大の松山和希(4年)が12位から8位に順位を上げた。

 

 3区でも順位は大きく変動した。戸塚中継所から平塚中継所までの21.4kmで、トップに立ったのは青学大だ。駒大と1分3秒差の2位で襷を受けた1年生の太田が力走。一時は4位から順位を上げた東国大の日本人エース丹所健(3年)に抜かれたが、並走するかたちで前を追った。13km手前で先頭の駒大・安原太陽(2年)をとらえ、18km過ぎに丹所とのマッチレースに。最後は丹所との競り合いに勝ち、飯田貴之(4年)にトップで襷を渡した。

 

 4区では青学大主将の飯田がトップを守った。昨年11月の全日本大学駅伝対校選手権大会(全日本大学駅伝)ではアンカーを務め、駒大の花尾恭輔(2年)との競り合いに負けた。その悔しさを晴らすような快走。平塚中継所で12秒だった2位・東京国際大との差を、小田原中継所で1分37秒に広げた。前回往路優勝の創価大が11位から5位にジャンプアップ。2年連続4区を任された嶋津雄大(4年)が1時間1分8秒で区間賞を獲得した。

 

 2年ぶり5度目の往路優勝へ、1年生の若林に託された。山上りのスペシャリスト区間の5区を若林は落ち着いた走りで駆け抜けた。先頭を走る優位性を生かし、前半を無理なく進み、後半の向かい風にも耐えた。2年連続5区区間賞となった細谷翔馬(4年)で2位に浮上した帝京大との差は2分27秒。貯金をさらに増やし、往路のフィニッシュテープを切った。

 

 連覇を狙う駒大は3分28秒差で3位。復路にも力のあるランナーを揃えるが、それは層の厚い青学大も同じ。青学大有利は間違いないが、勝負は下駄を履くまでわからない。帝京大、駒大が逆転するためのキーポイントは山下りの6区でどれだけ差を詰められるかだろう。逆に青学大が6区で差を広げるようならば、優勝争いはほぼ決する。

 

(文/杉浦泰介)