令和最初の大学団体日本一を決める「全日本学生柔道優勝大会」(全日本学生優勝大会)は6月22日からの2日間、東京・日本武道館で開催される。男子優勝候補の本命は4連覇を目指す東海大学だ。優勝回数は最多の23回。上水研一朗監督就任後は11年連続決勝進出、10度の優勝と常勝軍団の名をほしいままにしている。その東海大に今年度、活きのいい1年生たちが入学してきた。中でも“令和の三四郎”と注目される90kg級の村尾三四郎に大きな期待が寄せられている。

 

 真の日本一

 

――全日本学生優勝大会が目前に迫っています。

村尾三四郎: 自分が東海大に入学してから初の大きな大会、団体戦です。優勝を目指すチームに貢献できるよう稽古を頑張っています。

 

――大学の団体戦は全日本学生柔道体重別優勝大会もあります。全日本学生優勝大会は体重無差別の7人制大会ということもあり、この大会に重きを置く大学や選手が少なくない。

村尾: 団体の一番強い大学を決める大会です。他の階級の選手と戦い、勝つ。それが真の日本一だと思います。

 

――強豪・東海大という看板を背負って戦うプレッシャーはありますか?

村尾: そうですね。メンバー入りは12人、1試合に出られるのは7人までですから、当然、出られない選手もたくさんいます。しかし皆の分まで頑張るというのは、これまで経験してきた団体戦と同じだと思っています。自分は小学生の頃から常に日本一を目指すチームにいました。だから特別にプレッシャーだと感じることはありません。今までと一緒という感じですね。

 

――全日本学生優勝大会は勝ちで1点、引き分け0点です。7人のオーダーは無差別級で配置されますから、階級の違う選手と対戦することもあります。上水監督からはどのような役割を託されていますか?

村尾: 任された試合は全部勝ち点を取らなきゃいけない。それは東京オリンピック、世界を目指すためには必要な力だと思います。自分より重い階級の選手と当たった場合、“負けていい”ということは絶対にない。誰が相手でも勝ち点を取れる選手が強い。そういう選手になれるよう、今大会で結果を残したい。

 

――東海大に進学した理由は?

村尾: 一番強くなれる環境があると感じたからです。進学先を決める際、東京オリンピックで優勝するにはどうしたらいいかを考え、東海大学を選択しました。

 

 隙のない柔道

 

――上水監督は冷静沈着です。指導中も同じですか?

村尾: 自分が目指しているのは隙のない柔道です。強みを伸ばしつつ、弱点を消していきたい。それが隙のない柔道に繋がると思っています。上水先生もそういう柔道を求めていると思います。上水先生は結果を出した先輩方をたくさん見られてきたので、的確に指導をしていただいています。

 

――上水監督は「最悪を想定する」という考え方の持ち主です。

村尾: 高校時代(桐蔭学園)の高松正裕先生からは「最悪の想定、最高の想定。そのどちらも準備しておかなければいけない」と言われていました。そこは変わることなく持ち続けたいと思っています。

 

――入学から2カ月学生経ちました。東海大の稽古で面食らったことはありますか?

村尾: 高校と大学ではレベルが違いますから、稽古で相手を投げられる回数が減りました。それでも自分は壁を感じたことはありませんね。

 

――東海大は全日本男子代表の井上康生監督の母校でもあります。

村尾: 6月に井上先生の授業を受け、ワクワクが止まらなくなりました。井上先生からオリンピックのいろいろな話をうかがい、“自分も出たい”“勝ちたい”という思いがさらに強くなりました。東京オリンピック出場を逃すことは自分の中で許せないこととなったんです。

 

――昨年、高校3年でシニアの国際大会デビューを果たしました。グランドスラム大阪大会は出場予定だった日本人選手の負傷により、チャンスが回ってきました。

村尾: あの時は“ここを逃したら東京オリンピックはないな”と気合が入っていました。しかし試合では気負わず、いつも通りの柔道ができたと思います。

 

――結果は銅メダル。自信がついたと?

村尾: 優勝できなかった悔しさはありましたが、次に繋げることができたので良かった。

 

 あくまでも東京五輪

 

――今年2月のグランドスラムデュッセルドルフ大会は銀メダルを手にしました。

村尾: 大会直後は2位という結果をポジティブにとらえていたものの、今振り返ると優勝できなかったのはもったいなかったなと感じています。

 

――4月の全日本体重別選手権は世界選手権の選考を兼ねていました。村尾選手は3位。個人での代表入りを逃しましたが、団体戦のメンバーには選出されました。

村尾: 世界選手権は東京オリンピックの会場である日本武道館で行われます。世界大会の緊張感を味わいながら、その畳を踏めるというのは絶対にプラスの経験になると思います。

 

――現在18歳。東京の次のパリの代表候補選手と見る向きもあります。

村尾: 周囲には高校1年の時から「東京オリンピックに出たい」と言ってきました。世界選手権代表争いに絡むような実力がない頃からです。「パリの代表候補」と、おっしゃる方もいますが、自分はあくまで東京オリンピックを目指しています。そこは今も変わりません。

 

――柔道家としてのこだわりは?

村尾: 自分は綺麗に投げて一本を取ることが柔道の魅力だと思っています。だから観ている人たちに“すごい”と言って感動してもらえるような試合がしたい。

 

――得意技は内股と大外刈り。他には?

村尾: その2つに限らず、いろいろな技ができることだと思います。大学に入ってから技のバリエーションをさらに増やしているところです。

 

――“令和の三四郎”と呼ばれることについては?

村尾: 自分はプラスに考えています。注目されることは好きですし、名前で注目していただけるならそれでいいと思っています。

 

 BS11では「全日本学生柔道優勝大会」の模様を6月23日(日)19時から放送します。また大会にさきがけ22日(土)には東京オリンピック代表候補たちの学生時代のターニングポイントや名勝負を特集した「ニッポン柔道 新時代 ~学生柔道にみる強さの源泉~」を20時、4連覇に挑む“絶対王者”東海大学男子柔道部に密着した「ザ・チーム 勝ち負けの向こう側」21時から放送します。いずれもお見逃しなく!


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