(写真:今年1年を漢字一文字で表すと「挑」。リング内外で挑戦をしてきた)

 時間(とき)の流れが速いと感じる。年齢を重ねてきたせいだろうか(笑)。

 フロイド・メイウェザーvs.那須川天心を観てから、もう後少しで1年が経とうとしている。アッという間だ。そして今年も年末には格闘技のビッグイベントが開かれる。

 

 12月29日『BELLATOR JAPAN』

 12月31日『RIZIN20』

 

 いずれも場所は、さいたまスーパーアリーナ。2年ぶりの2Days。

 

 12・29BELLATORのメインカードは、エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)vs.クイントン“ランペイジ”ジャクソン(米国)。そして大晦日の注目ファイトは、RIZINバンタム級王座決定戦、朝倉海(トライフォース赤坂)vs.マネル・ケイプ(アンゴラ)だ。

 

 ヒョードルvs.ジャクソンのPRIDEレジェンド対決にも思い入れはあるが、スリルを味わうなら、朝倉vs.ケイプであろう。

 

 もともとは、朝倉は大晦日の舞台で、タイトルを賭けて堀口恭司(アメリカン・トップチーム)と再戦を行うはずだった。しかし、堀口の怪我により、これが流れる。

 

 その後、堀口はRIZINバンタム級王座を返上。これにより、タイトルを賭けて朝倉とケイプが闘うこととなったのだ。

 

 両者は1年7カ月前、昨年の5月の『RIZIN10』で一度、対峙している。この時はフルラウンドを闘い、朝倉が勝利した。とはいえ拮抗した内容で2-1のスプリットデシジョン、限りなくドローに近かった。今回も激しい削り合い、クロスファイトになることが予想される。

 

 スリル満点のファイトに期待

 

(写真:RIZIN参戦6連勝中。ここ2戦はKOが続いている朝倉海)

 昨日(12月12日)、東京・トライフォース赤坂において朝倉の公開練習が行われた。

 2分間のシャドーの後、朝倉は報道陣の質問に答える形で、こう話した。

「順調に仕上げてきています。(前回の時に比べて)お互いに強くなっていると思いますが、僕の方がより強くなっている。ケイプ選手のボクシング技術には警戒しなければいけない部分もありますし、フィジカルも強い。

 でも、一度闘っていることもあり、すでに分析は終わっています。簡単に倒せる相手だとは思っていませんが、勝つ自信はあります」

 

 今年の春から朝倉は、プロボクシング元WBA世界スーパーフェザー級王者、内山高志の指導を仰いでいる。ボクシング技術を向上させたことで、総合格闘技を闘う上でも幅の広がりをみせている。それが、堀口を倒すというアップセット劇にもつながったのだ。

 

 朝倉とケイプ。両者の戦闘能力を比較すれば、総合力において、朝倉が上と私も見ている。

 ただ、怖いのは、ケイプが型通りのファイターではないことである。彼は、闘いにおいてプランを練るのではなく感情で動く。開始のゴングが打ち鳴らされた直後の奇襲、そして体幹の強さを利しての、思わぬ方向からの打撃には要注意だ。

 スリル満点のファイトが期待できる。

 

 公開練習後の会見で朝倉は、こうも言った。

「僕の試合で今年を締めくくりたい。それに相応しい闘いをする自信はあるので、ぜひメインを任せて欲しいと思います」

 それがいい。メインカードに抜擢すべきだ。

 今年、RIZINのリングで、もっとも飛躍を遂げたのは朝倉である。名古屋での堀口戦が地上波で中継されなかったことは、いまでも残念に思う。

 

 令和最初の大晦日。

 朝倉海の真価を、しかと見届けようではないか。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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