W杯48チーム制拡大に思うこと
サッカーワールドカップは2026年のアメリカ、カナダ、メキシコによる3カ国共催の大会から48チーム制に拡大する。現行「32」からの大幅増になる。2017年1月にFIFA(国際サッカー連盟)から発表されていたが、先日AFC(アジアサッカー連盟)からアジアの出場枠「8.5」(これまでより4枠増)の正式決定と予選方式がアナウンスされた。
48チーム制は賛否両論ある。いや、サッカーファンからすれば否定派のほうが断然多いだろうか。
拡大の内訳を見ていくと南米は「2増」欧州は「3増」にとどまり、4.5増のアフリカとアジアが大きな恩恵を受ける形となった。かねてよりFIFAのジャンニ・インファンティノ会長はサッカー先進国が集まる欧州、南米重視のバランス是正と世界全体のレベルアップの必要性を訴えてきたため、予想されたことでもあった。市場拡大によってFIFAは52億9000万ポンド(約8590億円)の収益増を見込んでいるとか。収益が上がれば分配金なども増え、世界全体のレベルアップにもつながるという狙いだ。
ただハードルを下げたことでこれまで出場できなかったチームが入ってくるため、大会の質は下がる。グループリーグから強豪同士の対戦といった見たいカードも減ってくるに違いない。そうなるとワールドカップに対する興味、ひいてはサッカーへの関心そのものが低下する懸念も拭えない。
大会方式を見ると、その懸念を打ち消したいという思いも透けて見えてくる。
48チームが3チーム×16グループに分かれてグループリーグが行なわれ、1、2位通過の32チームで決勝トーナメントが開催される。その意味ではトーナメントに入ってからが「真のワールドカップ」となる。実力のないチームはグループリーグでふるい落とされるというわけだ。ただ3チームによるグループリーグになると試合のないチームが出てくるため、日程上の公平性を保てなくなる。グループ内においてFIFAランクの最も高いチームが「1、3試合目」、最も低いチームが「1、2試合目」などと、納得感を得るルール設定が必要となるだろう。
決勝まで勝ち進んだチームの試合数はこれまでどおり「7」。48チームに拡大しながらも、現行に寄せた形にはなっている。
筆者としては消極的賛成のスタンス。全体の質が下がってしまうのは否めないので現行維持派ではあった。ただ、1982年のスペイン大会から24チーム制に拡大して16年後の1998年フランス大会から32チーム制へ移行した歴史もある。アジアを含め、サッカーが全世界的に浸透していくなかでのさらなる拡大は時代の要請と受け止めたい。
4枠増に伴ってアジア予選も方式が変更される。
ランキング上位チームが加わる2次予選は、36チームが9グループに分かれてホーム&アウェイ方式で戦い、上位2チームが最終予選に進む。18チームによる最終予選は6チームずつ3グループに分かれ、これもホーム&アウェイ方式で上位2チーム(全体で計6チーム)が自動的にワールドカップ出場チケットを手にいれる。
残りは2.5枠。最終予選の各組3、4位によるプレーオフを開催し、6チームが2グループに分かれ、総当たり戦によって両グループ1位が出場権を得る。そして2位チーム同士の勝者が大陸間プレーオフに回ることになる。
日本代表にとっても随分と楽になるのは言わずもがな。これまでのようなヒリヒリ感も盛り上がり自体も当然薄まってくる。
マイナスの側面はあるものの、プラスもある。一敗のダメージがあまりに大きいためワールドカップ本大会に向けた戦術的、人的テストがなかなかできないというジレンマがあった。代表メンバーのほとんどが欧州でプレーするようになった現状、選手の負担を考えても毎回ベストメンバーを組む必要もなくなってくる。アジア予選を軽視するということではなく、ワールドカップに主眼を置いたチームづくりにウエイトを置くことができる。
時代の変化やニーズに対応していくのも実力のうち。日本代表及びJFA(日本サッカー協会)にはその対応力が求められている。