2日、第99回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が東京・大手町から神奈川・芦ノ湖までの往路5区間(107.5km)で行われ、駒澤大学が5時間23分11秒で19年ぶり4度目の優勝を果たした。今シーズン、出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)、全日本大学駅伝対校選手権大会(全日本大学駅伝)を制している駒大は史上5校目の3冠に王手をかけた。2位に中央大学が30秒差で、3位には昨年往路&総合優勝の青山学院大学が2分3秒差で入った。

 

 往路の順位は以下の通り。

 

(1)駒澤大(2)中央大(3)青山学院大(4)國學院大(5)早稲田大(6)順天堂大(7)東京国際大(8)法政大(9)城西大(10)創価大(11)東洋大(12)明治大(13)東海大(14)帝京大(15)国士舘大(16)山梨学院大(17)大東文化大(18)日本体育大(※)関東学生連合(19)専修大(20)立教大

※OP参加のため順位なし

 

 最後まで激しい優勝争いが続いた往路は、安定感が光った駒大が制した。1990年度の大東文化大学、2000年度の順天堂大学、10年度の早稲田大学、16年度の青山学院大が成し遂げた3冠に大きく近付いた。

 

 読売新聞東京本社前から鶴見中継所までの21.3kmを走る1区は、今年も各校による牽制し合いでスローペースに。2kmで1人抜け出した関東学生連合チームの新田颯(育英大学4年)が独走状態に入り、2位集団は残り20チームで形成された。1人旅を続ける新田に鶴見中継所の手前で追いついたのは明大の富田峻平(4年)だ。「ラストは最後の箱根駅伝。明治の主力なんだ、エースだと思い、走った」と意地のスパート。昨年はシード落ちした古豪がトップで鶴見中継所を通過した。2番目の襷リレーは駒大。佃健介(4年)がエース田澤廉(4年)にトップと9秒差で繋いだ。オープン参加のため、順位はつかないが関東学連の新田は3番目に襷を渡す健闘を見せた。

 

 往路最長の23.1kmを走る“花の2区”は3km過ぎに首位交代。明大、駒大、法政大学に次ぐ4位で鶴見中継所をスタートした中央大学の吉居大和(3年)が明大の小澤大輝(4年)をかわした。2人はほぼ並走していたものの、8km付近に吉居大和が抜け出した。昨年は1区で15年ぶりに区間記録を塗り替え、10年ぶりのシード権獲得に貢献した男が快走を見せる。今シーズンも出雲駅伝(1区)、全日本大学駅伝(6区)で区間賞を獲得した好調ぶりを遺憾なく発揮した。

 

 一時は3位に落ちた田澤だが安定したペースを刻んでいた。12km過ぎで吉居大和を抜き去り、トップに浮上。田澤を追いかけるエースはフレッシュグリーンの襷をかける青山学院大の近藤幸太郎(4年)だ。鶴見中継所は7位だったが、関東学連を含む5人を抜いた。15.3kmからの権太坂は駒大、青山学院大、中大の順で通過。その後を留学生エースを擁する山梨学院大、創価大が続いた。

 

 20kmを過ぎたあたりで先頭争いは再び激化。苦悶の表情を浮かべる田澤に対し、吉居大和と近藤が接近する。“戸塚の壁”と呼ばれる終盤の坂。ラスト1kmで駒大の大八木弘明監督が「もう1回!」と何度も檄が飛ぶ。「前、前、前、前だ!」の声に背中を押されるように田澤が力を振り絞るが、吉居大和に抜かれた。一方の吉居大和は「一緒に頑張ってきた中野が待ってくれるという気持ちで走った」と戸塚中継所で3区の中野翔太(3年)に先頭で襷を託した。3秒差で駒大、4秒差で青山学院大が襷リレー。学生長距離界を牽引するエースとのつばぜり合いを制した吉居大和が1時間6分22秒で区間賞に輝いた。

 

 3区(21.4km)は中野が1時間1分51秒で走り、中大が2区連続区間賞。2位の駒大に10秒差を付けた。襷を渡すのは吉居大和の弟・駿恭(1年)。平塚中継所には中大に続き、駒大、青山学院大が襷を渡した。4位に6位から國學院大学が、5位には14位から早稲田大学が浮上。当日のエントリー変更で4区に起用された東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(4年)は12位で襷を受け取り、前を追った。

 

 首位交代は7km手前、区間記録ペースでひた走る駒大の鈴木芽吹(3年)が吉居駿恭をとらえた。しばし2人の並走が続き、そこに青山学院大の太田蒼生(2年)が14km過ぎに加わり、三つ巴の様相を呈した。15km過ぎで太田と鈴木が吉居駿恭を突き放す。5区のランナーが待つ小田原中継所へ。一度は鈴木が先頭に立つが、20km手前で太田がスパートをかける。抜きつ抜かれつで、ほぼ同着で襷リレー。3位の中大に続いたのは東京国際大。ヴィセントが8人を抜き、1時間ちょうどで20年の吉田祐也(当時・青山学院大4年)の区間記録を塗り替えた。これでヴィンセントは3区間(2~4区)の区間記録保持者となった。

 

 5区(20.8km)は標高約40mから最高874mまでを上る山上りのスペシャリスト区間だ。駒大の山川拓馬(1年)は本格的な上りが始まる前に青山学院大の脇田幸太朗(4年)を置き去りにする。3位でスタートした中大・阿部陽樹(2年)は2年連続の5区。軽快なピッチで走る阿部は脇田をかわし、山川を追いかける。山川は小田原中継所で39秒あった差を一時は25秒近く詰められたが、先頭でフィニッシュテープを切った。山川は「箱根の5区の厳しさを学んだ」と言うが、区間記録塗り替えた城西大学・山本唯翔(3年)、順大・四釜峻佑(4年)、そして阿部に次ぐ区間4位である。大八木監督が「期待通りの走りをしてくれた」と称える走りだった。

 

 04年以来の往路制覇だ。区間賞は1人もいなかったが5区間全てで区間4位以内という安定感が光った。「選手たちがしっかり走ってくれた」と大八木監督。2区区間3位のエース田澤は「仲間たちが優勝に導いてくれた」とチームメイトに感謝した。大八木監督は「この流れを明日に向けたい」と復路への想いを口にする。花尾恭輔(3年)、山野力(4年)ら実力者を復路に残し、補欠にはルーキー佐藤圭太も控える。青山学院大以来、6年ぶりの3冠達成へ視界は良好だ。

 

(文/杉浦泰介)