目標としていた1次リーグ突破はならなかった。初戦の米国戦がすべてであった。ズバリ、一言でいえば「消極的」だったことが最大の敗因だったと思う。
 日本は体力を温存するかのようにスローペースだった米国のリズムに合わせ、「じゃあ、同じように後半で勝負しようか」という雰囲気が漂っていた。体力の消耗を避けるために壮行試合でのアルゼンチン戦のごとく、前からボールを追うことなく、失点のリスクを嫌った。香川真司(C大阪)や本田圭佑(VVVフェンロ)があんなに下がりすぎては、怖くもなんともない。無失点で乗り切ることが、前半のミッションだったのだろう。

 この戦法は理解できる。しかし、勝ち点1でいいならともかく、勝ち点3をもぎ取るならばどこかで「積極的」にスイッチしなければならなかった。そのスイッチを先に、米国に押されてしまったのである。裏を返せば、この切り替えの面でも「消極的」だったのである。前半のスローペースのため、米国がスタミナを極度にロスすることもなかった。

 選手の目が覚めなければ、交代策で目を覚ませる方法もあった。反町康治監督の采配も、どこか消極的だった。失点から17分経ってから、李忠成(柏)を投入した。もともと、後半20分すぎに投入するという予定に合わせたのではないかと思うぐらい、遅すぎた投入に感じた。決定力不足という言葉でかきけされたくない。この1試合だけに、懸ける意気込みを見せてほしかった。調子の上がらないこの米国に勝てなければ、決勝トーナメントなど望めるはずもなかった。

 2戦目の相手となったナイジェリアは、明らかに格上だった。1戦目とは違って、前から積極的にプレスをかけてボールを奪いにいった。身体能力の高い相手に、この守備でいくのであれば、米国戦でもできたはずだと思えてならない。徐々に疲労の色がみえ、反応が遅れ始めたところに先制点を奪われ、さらに1点を追加された。2―1は極めて順当な結果だったのではないだろうか。それでも積極的な守備によってナイジェリアの足が終盤に止まり、豊田陽平(山形)の得点は生まれ、同点ゴールのチャンスも何度か訪れている。初戦に引き分け以上であったならば、ここでなんらかの奇跡が起こっていたように思えてならないのである。2−2でホイッスルを聞いていたかもしれないとも。

 残念ながら13日のオランダ戦は、消化試合となった。いまだ勝ち点2のオランダは決勝トーナメントに向けて本気モードで来るだろう。もう、相手がどうのこうのというより、最後ぐらい完全燃焼してきてほしい。北島康介ではないが「超気持ちいい〜」と自分たちが思えるような試合をしてほしいものだ。

 イビチャ・オシムならきっとこう言うはずだ。「もっと走れ」と。体力の温存など気にせず、リスク承知の積極的な守備で、相手をくたくたにさせてみろと。充実した気力と、走り負けしない体力こそが、反町ジャパンの売りではなかったか。

 タレントがいない分、全員で守備をして、全員で攻撃をするコレクティブな戦いが、光っていたチームだった。守備のときに攻撃を考え、攻撃のときに守備を考え――。オランダという最高の相手に、最後は積極的に戦ってほしい。ホイッスルの後、全員がピッチに寝そべっているような「超気持ちいい〜」を、期待している。
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