5連敗と言えば、年間144試合を戦うプロ野球のチームにとってもかなりの痛手である。ならば、34試合しかないJリーグのチームが味わう5連敗の痛みは、どれほどのものか。まして、それが開幕からの5連敗だとしたら――。今季久しぶりにJ1に復帰してきたアビスパ福岡が、いきなり強烈な試練に直面している。
 ただ、内容は悪くない。
 5連敗を喫した先週末の横浜F・マリノス戦も、やりたいことをやっていた時間はアビスパの方が長かった。守り方、攻めへの転じ方にははっきりと監督の意図が表れていた。2点のリードを奪って前半を終えることができたのは、マリノスの出来が悪くかったというより、アビスパのサッカーが相手をコントロールしていたからだった。
 ところが、後半開始早々に1点を返されると、勝てていないチームの悲しさか、アビスパの歯車が狂い始める。さらに、浮足立ったところを見透かしたかのようにマリノスはパワープレーに転じ、よく組織されていたアビスパの守りを強引にこじ開けていく。結果は3−2。アビスパは初勝利どころか、初勝ち点さえ獲得できずに横浜を去ることになった。

 こうなると難しいのがフロントの判断である。
 結果は最悪だが、内容を見れば光るところも少なくない。チーム予算の規模を考えれば、5連敗という結果はともかく、現時点での最下位という成績は青天の霹靂、というほどでもない。ただ、サッカーが結果によって内容がむしばまれてしまうことの多い競技である以上、何も手を打たずに放置するのも怖い。ファンに対しても申し訳がたたない……。
 今週末、彼らはホームにガンバ大阪を迎える。初勝利をあげるには相当な難敵だが、連敗が伸びるようだと、関係者の苦悩はさらに深いものとなろう。結果、内容ともに見るべきところがなければ監督の交代が手っとり早いチーム立て直しのための特効薬なのだが、結果だけが伴わない場合の更迭は、さらなる泥沼への転落を意味することがある。もちろん、内容を維持したまま、結果だけが改善される例もないわけではないが……。

 長谷部が所属するブンデスリーガのボルフスブルクは、シーズン途中で前監督のマガトを復帰させたが、順位は依然として危険水域のまま。一方で、序盤から最下位を独走してきたボルシアMGは、監督交代を機に上昇気流に乗り、ついにボルフスブルクを捉えるところにまで来た。監督交代の吉兆は、サッカー先進国のドイツであっても占うのが難しい。歴史の浅い日本においては、なおさらである。

<この原稿は11年5月12日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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