夢の決勝再び、である。今週末、マンチェスターU―バルセロナの欧州CL決勝が行われる。2年前の対決ではエトオ、メッシのゴールでバルセロナが快勝したが、さて、今回はどうなるか。
 注目すべきは、マンチェスターUの戦い方である。自分たちのスタイルを前面に押し出した2年前は完敗した。ならば、今季はバルセロナの良さを消す方向で戦うのか。ファーガソン監督が“バルサ封じ”の助言をレアル・マドリードのモウリーニョ監督に求めたという噂も気になるところだ。
 ただ、マンチェスターUがどんなスタイルを採るにせよ、そして栄冠がどちらに輝くにせよ、ボール支配率がバルセロナに大きく傾くことは間違いない。会場はロンドンのウェンブリー・スタジアム。マンチェスターUにとって半ばホームといってもいい会場であるにもかかわらず、ブックメーカーの担当者たちもバルセロナやや有利のオッズをつけている。

 とはいえ、ここ2〜3カ月、バルセロナのバイオリズムが下降気味なのも事実である。W杯から続いてきた連戦は、バルサの選手たちから明らかに切れを奪っている。リーガでの優勝決定以降、主力には十分な休養が与えられたようだが、体力が回復した代償として、試合カンが鈍ってしまう可能性もある。1次リーグでバルセロナ相手に素晴らしいサッカーをしたコペンハーゲンが、オフシーズン明けの決勝トーナメント1回戦で見る影もなく惨敗したように、である。

 ちなみに、そのコペンハーゲンを率いたソルバッケン前監督は、大方の見方と異なり、マンUがやや有利ではないかと見ている。
「バルサのボール支配率が65〜70%になるだろうが、楽にはやらせてもらえまい。強力なユナイテッドの中盤がバルサを抑えるのは可能だと思う」
 バルセロナと対戦するほどんどの監督が、内容を度外視して勝負だけを拾いにいこうとするのに対し、ソルバッケンは内容でバルサを凌駕しようとした極めて希少な監督だった。個人的には、今季の欧州最優秀監督、である。それだけに、その言葉には無視できない重みを感じてしまう。

 シーズン終了後、彼はノルウェー代表の監督になることが内定していたが、ここにきて一転、ケルンの監督に就任することが決まった。クロップ監督との出会いが、香川の運命を大きく変えたように、バルセロナ以上にポゼッションにこだわり、バルセロナ以上に浅い最終ラインを作り上げた監督との出会いが、槙野の運命を変えるかもしれない。夢の決勝と同じぐらい、こちらも楽しみである。

<この原稿は11年5月26日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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